7月29日、神奈川県厚木市で1歳の息子・煌翔(こうが)ちゃんを車内に放置したとして母親が逮捕された事件。一緒に車内にいた2歳の姉も8月2日朝、死亡した。死因は熱中症とみられている。
「子どもがぐったりしている」(公園の駐車場から長澤容疑者の119番通報 ※先月29日午後5時ごろ)
当初、警察に「子どもと一緒に車内にいた」などと説明していたが、その後の調べで嘘と判明。捜査関係者によると、子どもを車に残した長澤容疑者は知人に会っていたと話しているという。
長澤容疑者は7月8日にも県内の100円ショップの駐車場で煌翔ちゃんを車内に放置していたことがあり、警察は児童相談所へ通告していた。
「車内放置は虐待だと理解している。二度としません」(長澤麗奈容疑者)
児童相談所は警察から通告を受けて面会が必要だと判断したにもかかわらず、母親に2週間以上、連絡を取っていなかったと発表。長澤容疑者が予防接種や検診を受けさせていたことから、すぐに着手する必要性を感じなかったという。
このように、車内に子どもを放置した結果、熱中症で死亡させてしまう事故が後を絶たない。そんな痛ましい事故を未然に防ぐため、開発された安全装置が幼児置き去り検知システム「CPD(ChildPresenceDetectionSystem)」だ。
【映像】「ピーピー」と音が…車内に放置された幼児を検知する様子
車内放置による熱中症事故の原因として「保護者の意識が単に低いだけ」と多くの人は考えがちだが、実は誰にでも起こりうる危険性をはらんでいる。アメリカ国内の調査データによると、事故発生要因の半数以上が、子どもの存在を“うっかり”忘れてしまい、無意識のうちに置き去りにしてしまったこととしている。
そこで、このような痛ましい事故を未然に防ぐための仕組みとして、大きな期待を集めているのが、幼児置き去り検知システム「CPD(Child Presence Detection System)」だ。レーダー技術を活用し、車内の様子を感知。幼児を残して車を離れたりした場合、運転者に通知・警告するシステムとなっている。
レーダー技術を利用した高精度のCPD。開発したルクセンブルクの自動車向けセンサーメーカーIEE社は、約10年前から開発に着手し、世界初のレーダーによるCPDを量産した企業だ。
アメリカでは2021年11月、CPDの設置を求める法案「HotCarsAct」が成立し、2023年11月には義務化される見込みだ。また、ヨーロッパでもCPD装備の義務化が呼びかけられている。
IEEセンシングジャパン株式会社・カントリーマネジャーの高橋正輝氏はこう話す。
「振動のある中でどうやって子どもや赤ちゃんを検知しようかと比較したときに、最終的にはレーダーですね。ミリ波レーダーを使って検知するのが1番いいという結論に達しました」(以下、高橋氏)
カメラ式や超音波式のセンサーと比べて、レーダー式は非常に細かい動きでも検知が可能だという。さらに、雑音や遮断物の影響を受けないことも大きな特長だ。
「最も難しいのは新生児の赤ちゃんが寝ている状態。一番動きが小さいので、それをいかに検知するかどうかが、すごく大事なところだと思います。レーダーであれば透過するので、毛布をかぶっている赤ちゃんでもちゃんと検知できます。検知の精度・正確性も他の技術よりも優れています。子どもの置き去り検知という意味では一番適した技術だろうと考えています」
車の天井裏に設置されたセンサーがレーダーを照射し、幼児のわずかな動きも検知するCPD。運転者が車を離れると、クラクションが鳴り響く仕組みになっている。
「まずは車の周りに通行人やお店の人。(周囲に)人がいれば何かしら『異常がありますよ』ということを伝えられます。次のステップとして、携帯電話にメッセージを飛ばしたり音を鳴らしたり、所有者もしくは保護者に対して通知をして、それでもなお対応されない場合は、強制的に(救護)センターに対して車から『異常がありますよ』と信号を送る。順番に警告の度合いを上げていきます」
日本市場への導入を手掛けるのは、三洋貿易株式会社・上級執行役員の平澤光康氏だ。きっかけは2021年7月、福岡県で保育園児が送迎バスに取り残され、熱中症で死亡した事件だったという。
「数年前から渉外活動をしていましたが、去年の7月の事故を受けてさらに思いを強くなり、世の中に訴えかけようとしている状況です。子どもを車に置き去りにすることがどれだけ危険であるか認知してもらいたいのと、仕組みで防ぐ方法があることを認知してもらいたい」(三洋貿易株式会社・平澤氏)
(『ABEMAヒルズ』より)
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