「東京に戻った時が不安だ」子育てをする親たちが「セネガルの方が育てやすい」と話すワケ
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 しつけやベビーカーをめぐるトラブルなど、日本社会の子育てに対する“不寛容さ”がネット上で度々論争になっている。そんな中で注目を集めているのが、元編集者の鈴木洋平さんによるnote『「不便なはず?」のアフリカで、なぜ「子育てがしやすい」と感じるのか?』だ。

【映像】セネガルに学ぶちょっと不便な育児

■“人に頼れる”というのはすごく大きいこと

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 貧困削減に関わる仕事をしている妻の赴任に伴い、昨年アフリカ北西部のセネガルに移住した鈴木さん。2人の子どもを育てる主夫として、「もちろん人によって合う・合わないはあると思うが、子育てをする中で“人に頼れる”というのはすごく大きいことだと思う。その点、セネガルの人たちは自然に手伝ってくれると感じているし、東京に戻った時が不安だ」と話す。

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 「あまりフランス語ができないので日々のコミュニケーションには苦戦している、不便は不便だ(笑)。治安の面で、夜間に出歩くのも難しいと感じている。それでもすれ違ったら挨拶をする文化が根付いているし、人と人との距離感が近い。

 日本の場合、道端で子どもが泣いていても素通りされたりとか、“うるさい”と冷たい目線を送られたりするし、バスの中で子どもの声のボリュームが大いと舌打ちされることがある。でもセネガルではあやしてくれたり、何か力になろうとしてくれたりする。

 ただ、日本の人たちも子どもが憎いからそうしているわけではなく、日々のストレス、心のゆとりのなさがそうさせているようにも思う。その意味では、個人の問題でありつつ社会の問題なのかなという気がしている」。

■みんなで精神的にも物質的にも面倒を見てくれる

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 セネガルで現地男性と結婚するも離婚、現在は2人の息子を育てるシングルマザーの鎌田のどかさんは「生活面で言えば、水が常に出るということもないし、間違った薬を処方されたり、救急車が全然来なかったり。インフラの面では日本とは比にならないくらい不便だ。それでもセネガルで生まれた子どもたちのアイデンティティのためにも、やはりこの国で育てたいと思った」という。

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 「学校がストで閉鎖になってしまうこともあるので、教育システムには不安もある。ただ、セネガル人の根底に“子どもはみんなのもの”という意識があって、みんなで精神的にも物質的にも面倒を見てくれる。

 一応は保育園のような施設もあるが、大家族で住んでいるケースがほとんどなので、小さいお子さんは基本的におじいちゃんおばあちゃんや親戚が面倒を見てくれるし、友人・知人、さらには知らない人でも子どもたちのことを叱ってくれる。地域みんなでしつけをしてくという雰囲気がある」。

■のびのびと子育てができる…スーダンでも?

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 ジャーナリストの堀潤氏は「スーダンへ取材に行ったとき、外務省からは“危険なので渡航はやめてもらえないだろうか”と言われたが、現地の日本大使館に行ってみると、一等書記官の方が“堀さん、本省はああやって言うが、子育てするならスーダンが一番ですよ”と言っていた(笑)。子育ては初めてだし、奥さんも現地の言葉が分からなかったが、それでもお手伝いさんや周りの人たちが手伝ってくれるし、のびのびと子育てができているようだった」と振り返る。

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 一方、フリーアナウンサーの柴田阿弥は「周りに子育てをしている知人がいるが、例えば“ちょっと熱出しちゃったからゴメン”と遊ぶ約束をドタキャンされたことで、私は子どもはすぐに熱を出すということを知った。電車やバスでうるさく言う人たちも、子育ての経験や、あまり子どもに関わってこなかったという理解不足から、嫌なところばかりが目立つのかなと思う」と指摘した。

■子育てをしている人だけを助ければいいわけではない

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 京都大学大学院の落合恵美子教授(社会学)は「日本でもお父さんお母さんのきょうだいが4、5人いるような時代が続いたし、1960年代には親族の助け合いが随分あった。ところが1980年代以降、それがなくなってしまった。人口学的に親族ネットワークが痩せ細っていくというのはどこの国でも起きた事だが、日本が他国と違うのは、それを別のネットワークに置き換えることに失敗したことだ。だから“孤立育児”が増え、世界で一番子育てが難しい国になってしまったと」との見方を示す。

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 「アジア諸国でも祖父母などの親族コミュニティや、お家で雇った人が子育てを手伝ってくれるが、アフリカはその他のところも充実している印象がある。例えば鎌田さんのお話にあるように、他人が子どもを叱ってくれる。日本では電車の座席に靴を履いたまま上った子どもを叱った人に対して、“余計なこと”と思っちゃう人が出てきた。もちろん言い方の問題もあるかもしれないが、言われた側も心を開いて“叱ってくれてありがとう”と思ってもいいんじゃないか。

 また、“不寛容”というのは、誰かの面倒を見るという経験がないところから来るのだろうし、経済的な理由や時間が足りないといった理由から産みたくても産めない人がいることも背景にあるかもしれない。そして子育ての大変さも、子どもの頃にきょうだいや近所の子どもの面倒を見る経験をしていると違ってくると思う。その意味では、“子育てをしやすい環境”を作るためには子育てをしている人だけを助ければいいわけではなく、子どもを持ちたいのに持てない人が出ないようにしていくこともセットなのではないか」。(『ABEMA Prime』より)

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