「今までは“触らぬ神に祟りなし”のような感じで、“学校教育では扱わない”という姿勢が強すぎたんじゃないか」。
9日の『ABEMA Prime』に出演した元文部科学事務次官の前川喜平氏が、安倍元総理の銃撃事件以降、社会の注目を集める世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と「宗教教育」について言及した。
幼稚園、小学校、中学校を中心とした教育行政を所掌する「初等中等教育局長」を務めた経験も持つ前川氏。
「宗教対立が暴力に発展することも多いわけで、宗教相互間の理解というものを進めるということも、教育の中でちゃんと扱うべきだと思うし、それは世界にとっても必要だ。信教の自由というのは、何かを信じる自由もあれば、信じない自由もあるということ。だから自分が無宗教でも構わない。そういうことを大切にしつつ、人間世界にとって宗教は大切な存在なんだ、少なくとも大切に思っている人たちがいるんだと理解すること。
また、こうした宗教教育とカルト対策教育とは分けて考える必要があると思う。中には宗教の皮を被った反社会的な組織、カルト集団もあるわけで、それについてはワクチンのように、実例を使って前もって知っておく、ということが必要だと思う。例えば信者の人生を搾取し、殺人も犯したオウム真理教事件があるし、幹部が詐欺罪で捕り、宗教法人としても解散させられたという明覚寺事件というものもあった。法の華三法行も同様だ。こうした団体は会社組織である場合もあるわけで、消費者教育の一環としてやってもいいと思う。
加えて、僕くらいの年代の日本人であれば、旧統一教会がどんなことをしてきたかはさんざん報じられていたので分かっていると思う。ところが色んな被害が広がっていたにも関わらず、いつの頃からか全く報じられなくなっていたために、若い世代は知らないということになっている。やはりメディアが扱わなければ、あるものもないものだと思われてしまうわけだ」。
■カルトに対しては注意深く監視する仕組みをつくる可能性もあって良い
ユーグレナでCFOを務めた小澤杏子氏(早大社会科学部2年生)は「日常のどこにそういう場面があるのか、大学のどこにそういう団体が潜んでいるのか、全く分からない。周りの大学生たちもあまりそういう話はしないし、なんとなく“よく分からないからあんまり触れないでおこう”みたいな感じになってしまっている」とコメント。
すると実業家のハヤカワ五味氏は「私はオウム真理教による地下鉄サリン事件があった年に生まれているので、物心がついた頃にはオウムの話もカルトの話もあまり聞かなかったし、この政治団体とこの宗教団体が密接らしいみたいなバックグラウンドも聞く機会が無かったので、自分自身で調べるしか無かった。でもそれがないと、どうしてこういう政治になっているんだろうという理解もできない。学校では話しにくいことだと思うが、触れてほしかった」と応じた。
ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「人が帰依するということと反社会的な行為はイコールではない。それこそ原始キリスト教だってカルトだったし、創価学会の初期の時代だってカルトだった。オウム真理教の解散後、一部がひかりの輪などの団体に別れたが、それらは今もカルトなのだろうか。ありとあらゆるものをとにかくカルトだと言って否定してしまえばそれで問題解決、ということにはならないと思う」と指摘した。
前川氏は「やはり権力的な関与は抑制的でなければいけないことは間違いない。しかし悪事を働く団体もあるわけであって、それは追及しなければいけない。ただ、これは宗教法人を所轄する立場の文部科学省ではなく、税金逃れであれば国税庁、刑事事件であれば警察庁、検察がちゃんと取り締まるということが大事になってくる。その意味では、例えば暴力団対策法のように、反社会的な組織であるカルトに対しては網をかけて注意深く監視する仕組みをつくる可能性もあって良い」と話していた。(『ABEMA Prime』より)
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