5日、アメリカのAmazonは、ロボット掃除機「ルンバ」などで有名なiRobotを買収すると発表した。買収額は負債を含めて約17億ドル、日本円で約2300億円にものぼる。
今回の買収について、Amazonは「iRobotとともに顧客の生活をより快適に、そしてより楽しくする方法で発明していくことに興奮している」と声明。目指しているのは、家電事業の強化だ。AlexaやEchoなどと組み合わせ、もっと快適な暮らしがやってくる可能性も。
一方、ネット上では「ルンバで家庭内の情報取り放題になる」「個人情報が大手企業に把握される時代になってきたかも」と、データの取り扱いを不安視する声があがる。はたして、iRobotの買収でAmazonが見据える未来とは。
データサイエンティストの中山ところてん氏は、「人材」「市場」「テクノロジー」の獲得が主な買収の目的だと説明した上で、AmazonのiRobot買収について「Amazonが今積極的にやろうとしているのが、倉庫の自動化や自動配送ロボットで、そこにiRobotが持っている技術は直接貢献するように思う。また、人が家にいない時に配送しても仕方がないので、“ルンバが動いている時間は人がいない時間”といった不在確認のためにデータを使うとか。2019年にルンバの社長はインタビューで『他社のロボットにデータを提供する』と言っている」とコメント。
一方で、ネット上であがる個人情報への不安の声については、「おそらく2、3つ先の世界の話だろう。その危険性を今この瞬間に煽るのは少しやり過ぎかなと思っている」という。
ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「VRが流行っている中で、本命は実空間と仮想空間を重ね合わせて表現するARだと言われている。ARは実空間を事細かに知る必要があって、ルンバは家庭内の間取りや家具の配置などの詳細なデータが取れるのではないかと。今やGAFAなどのビッグテックが狙っている最後のユートピアとしての住環境、それを支配する最初の一歩に手をかけたのがAmazonというイメージで見ている」との見方を示す。
これに中山氏は「例えば、遠隔にいる人が相手の家の中にあたかもいるように動くには、間取りなどの情報は必須だ。ただ、今のVRグラスやARグラス、スマートフォンの認識能力などを考えると、ルンバが足元10センチから撮った映像データで何ができるかは疑問に思う。ルンバが持っているのは間取りデータに過ぎず、部屋の詳細な情報はそこまで取れていないだろう。ARに使うにしても、家具の推定をして部屋の中を3DCG情報で起こすというような、すごく面倒くさいことをしないといけない。それをするくらいなら、VRゴーグルで空間を認識するほうが簡単だ」との見解を述べた。
一方、テレビ朝日の平石直之アナウンサーは「広角カメラをつけて隅々動き回っているわけだから、かなり詳細なデジタルツイン空間を読み取れると思う。ある程度の精度で立体的にわかれば、椅子が壊れているのをルンバが見つけて、Amazonから“椅子を買わないか”と連絡が来る、くらいはできるのでは?」と疑問を投げかける。
中山氏は「先ほど言ったように、足元10センチから撮られた情報で、机の上に水が置いてあるかどうかまではわからない」とした上で、「別のロボットが家に入ってきた時に、ルンバが持っているデータと補完して使われるのだろう。足元の情報と、もっと高い視点から撮った情報が組み合わされる。今はまだ価値のないデータだが、将来的に組み合わされた時にすごく高い価値が出る可能性があると思う」と答えた。
佐々木氏は「あまり心配しすぎると、今度はそこから得られる利便性を捨てることになる諸刃の剣なので、難しい。住宅におけるロボットの将来の完成形が何なのか、まだ誰もイメージできていない。今は10センチの高さしかないから掃除しかできないけど、ひょっとしたら将来は人型で掃いてほしいとか、いろいろな用途が期待されていると思う。その完成形に向けて、ルンバ的な方向からなのか、あるいは人型からなのか、いくつかのアプローチが同時並行で進んでいる中で、どれが最適解になってくるのかは興味がある」と期待を寄せた。(『ABEMA Prime』より)
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