将棋の順位戦A級2回戦は8月10日、菅井竜也八段(30)が藤井聡太竜王(王位、叡王、王将、棋聖、20)に109手で勝利した。今期A級で唯一の振り飛車党。得意の中飛車で絶対王者・藤井竜王から勝利をもぎ取り、ABEMAの視聴者からは「これがA級か…」「さすがA級」と驚きと絶賛のコメントが多数寄せられていた。
【動画】解説棋士が「名局」と絶賛した菅井八段と藤井竜王の一局
振り飛車党のエースが、圧巻の指し回しを見せつけた。菅井八段にとっては約2年ぶりの藤井竜王戦。過去7局で5連敗中、さらにはA級1回戦を落としており、必勝を掲げて本局に臨んだ。先手番で、自身の得意戦法でもある中飛車を採用。後手の藤井竜王が端歩を突く工夫を見せたが「想定していた形にはなった」と序盤を指し進めた。
長く複雑な中盤戦では、菅井八段が抜け出しじわじわとリードを拡大。自身でも「上手く行けそうと思った」。しかし相手は“絶対王者”。簡単に崩れる訳もなく背後にぴたりと迫り、一時は形勢互角にまで押し返された。菅井八段は「少し悪いかなと思ったが、仕方ない」と自陣の堅さを活かし、最後は攻め合いから藤井玉を寄せ切って見せた。菅井八段にとっては今期A級待望の初白星。「形勢判断が難しい将棋だった。終盤は難しかったが、良い結果を残せて良かった」と疲労感の中に安堵の表情も見せていた。
菅井八段はトップ棋士では少数派の生粋の振り飛車党。棋界でも屈指の研究家としても知られ、2017年度(第58期)王位戦七番勝負では羽生善治王位を4勝1敗で破り、自身初、さらに平成生まれ初のタイトルホルダーとして名を刻んだ。昨年度は銀河戦と朝日杯2つの棋戦優勝を果たすなど、再びのタイトル獲得に向けて牙を研いでいる。この日の一局を見守ったファンは、「これがA級か…」「すごい世界だ…」「めちゃくちゃ面白かった!」「菅井先生、すごすぎる」「さすがA級棋士」と圧倒されていた。
ABEMAの中継に出演した佐々木勇気七段(28)、佐々木大地七段(27)は「序盤から菅井八段の工夫が見られた将棋。振り飛車の名局なのでは。何十年先まで並べてもらえる将棋だと思う」と絶賛。さらに「盤面全体を使った筋の良い将棋で読みの入った手も多く、振り飛車の良いところが詰まった将棋だったと思う」と解説していた。
菅井八段は3回戦で同学年の永瀬拓矢王座(29)と対戦。2018年度王位戦七番勝負以来4年ぶりのタイトル戦、初の名人挑戦を目指し、今後も負けられない戦いが続く。
(ABEMA/将棋チャンネルより)