“超”重量級の一戦で、想定外の衝撃KO決着。129キロの巨体が胴まわし回転蹴りでフワリと宙を舞った直後、鈍い音が場内に響きわたる強烈な重い右ストレートをまともに被弾。あまりの衝撃に場内は騒然となり、実況は「124.15キロの右ストレート。脳が揺れている!」と絶叫した。
8月11日に福岡国際センターで開催された「K-1 WORLD GP 2022 JAPAN ~K-1フェザー級世界最強決定トーナメント~」。坂本英則(修実館)と丸山公豊(宮田ジム)のスーパーヘビー級対決は、2ラウンド2分30秒、戦慄の右カウンターで丸山が坂本をなぎ倒すようなKO勝ち。昨年、地元九州で失神KO負けを喫した丸山が雪辱を果たすとともに、戦前から「動けるデブ対決」と煽り合った戦いを制した。
坂本129.20キロ、丸山124.15キロの超重量級対決は、試合前の舌戦から「どちらが本物の動けるデブか」がクローズアップされた。その一方、ローカルタイトル2冠、地元九州を拠点の「九州最強の重量級」を自負する丸山には苦い思い出がある。昨年、同じく九州開催のK-1に参戦するも、ヘビー級の常連、実方宏介相手に左ハイで失神、初のKO負けを喫した。さながら、丸山にとっては一年前の屈辱を果たすリベンジの機会だ。
対する坂本は長年「動けるデブ」をアピールしてきた選手。トレードマークの称号を「横取りされるのは癪」とキャラ被りに憤慨気味だ。マックス150キロオーバーの巨漢ながら軽快なステップや回転飛び蹴りなど、多彩な攻撃を持つ坂本も並々ならぬ様子でこの試合に臨んだ。
試合前、坂本がコーナーで軽快にジャンプ、重みで“ドスン”とリングが悲鳴をあげて会場が早速どよめく。視聴者も「ドスンっていったな」「相撲みたいだ」と驚きの声をあげた。1ラウンド、坂本が前蹴り、ローと早い仕掛け、丸山も前に出てワンツーで応じるなど動きは素早い。
両選手の見た目と質感を裏切るキレれ味鋭い展開にABEMA解説の佐藤嘉洋は「両選手とも地球の重力も敵になる。立ってるだけでキツいと思う」とコメント。さらにリング中央でのミドルの攻防の際に分厚くプルプル揺れたお腹周りの肉の壁に「この二人の腹では倒れないですね」と続けた。
2ラウンド中盤、丸山がノシノシと前へ出てプレッシャーをかける。徐々に坂本がコーナーを背にする場面が目立つ。ここで局面打開を図った坂本がリング中央で、フワリと胴まわし回転蹴りを披露。ノーステップでの華麗な舞いに「この巨体ですごい」「ドシンと地震が起きたみたい」など、再びどよめきが起こる。ゲスト解説の熊田曜子も「出た!見たかったやつ」と声を上げつつも「これって体力が消耗するワザですよね…」と冷静なコメントをよせた。と、次の瞬間だった。
やや不用意に前に出た坂本に丸山の右カウンターでのストレートがズドン。鈍い音を響くと、坂本がストンと真っすぐ落ちたのちに、前のめりで手をつく土下座ダウン。「一発で終わる」重量級ならではのダウンシーンに実況は「124.15キロの右ストレート。脳が揺れている!」と声を張り上げた。
想定を上回る迫力のKO劇に佐藤は「流れのなかのパンチですが、丸山は最初から狙っていた。ヘビー級でショートのストレートを打てる選手はなかなかいない」と剛腕そうに見えてコンパクトな打撃もできる器用さを称賛した。
見事に昨年のリベンジを果たし、自らの拳で屈辱を振り払った丸山は、試合後にマイクを握ると男泣き。「どうでした、動けるデブ? しっかりK-1の舞台で勝てたことを心より嬉しく思います」とK-1初勝利を噛みしめた。