緑に浸食される廃墟――SFアニメの舞台のような世界観を描いたのは、AI(=人工知能)だ。制作に使われたのは「Midjourney」という画像生成AIで、驚くほどクオリティの高い絵が誰でも簡単に作れてしまうと話題になっている。
Twitterに作品を投稿した852話さんは「神絵が1分で生成される 参った」とコメント。インターネット上にある大量の絵や画像をディープラーニングしたAIは、浮世絵風のものから人物の絵など、画風や対象を自由自在に表現できる。自分で生成を指示して、できあがった絵をSNSに投稿する人が相次いでいる。
絵を描けない人からすると“とんでもない神ツール”だが、AIによる作品作りをプロはどう見ているのだろうか。自らもMidjourneyで絵を作ってみたというヨーロッパ在住の現代アーティスト・萩野真輝さんに話を聞いた。
「一般公開をされていることが何よりもすごい。そのデータがかなりの高画質であり、ウェブラーニングをしているので基本的に一般受けする絵が出てくるのはすごく便利」
誰もが簡単に触れられることについては評価するものの、アートとしての価値については「その手軽さが壁になってくる」と萩野さんは懸念を示す。
「誰でも簡単に作れるものは価値を持たない。そして、クオリティがそこまで高くない。今の段階ではかなり細部が雑になっていたり歪んでいたりしている」
今はまだ発展途上だが、今後さらに進化すれば「いくつかのAIを組み合わせて高いクオリティの作品を作ることもできるのでは」と話す。それでは、“AIが生成した絵”の権利は誰のものになるのだろうか。絵の著作権に関して考察した柿沼太一弁護士は「著作権が発生する場合としない場合があることを知る必要がある」と指摘する。
「人間が全く関与していないAIが自動的に生成したものについては著作権が発生しない。一方で、日本の場合は人間が創作的に寄与をしたり意図があったりする場合には、創作的に寄与した人に著作権が発生する。その(生成)指示が相当詳細なものであったり、同じプロンプト(キーワード)を入れても生成指示するたびに違うものが出てくるのでそれをいい絵が出てくるまで繰り返したりする。あるいは、できたものを全部並べて『良い画はこれ』と選ぶといった“人間が創作的な活動・寄与をしている場合”は著作権が発生する。一方で、著作権が発生していない場合には、契約関係がない人、例えば勝手に使った人に対して『やめてくれ』とは言えない」(STORIA法律事務所・柿沼太一弁護士)
さらに、絵を使う際にも注意が必要だという。
「“AIが勝手に作りました”とアップされた絵を使ったら、本来は著作権侵害にならない。ただ、AIが作ったものに権利がないことが前提になると、AIを使っても『使っていない』『自分が作った』と言う人がたくさん出てくる。そうなってくると、一般の人にとっては“どこまでは使って良くて、どこからは使っちゃいけないんだ”ということがよくわからなくなってくる」
見た目では判断がつかないため、著作権が発生しているという前提で行動した方が安全なようだ。では、誰もがアーティストのような絵を作れるようになったときに、アートの世界にどのような影響があるのだろうか?萩野さんは、同じようなテクノロジーによる変革が19世紀に起きていたと語る。
「(19世紀に)世界中でカメラ技術がある程度浸透した。新しいテクノロジーにより、これまで肖像画家で食べていた画家が食べられなくなってきた。そこで新しいことを探さなきゃいけなくなった画家から生まれたのが印象派。このAIアートとイラストレーターたちは、食うか食われるかということだけを見れば、割と酷似している可能性がある。このテクノロジーに食われるかもしれないという局面を迎えたときに、既存のイラストレーターなり画家が『次に何を越えて作らなきゃいけないのか』というところが、新しい価値を探すチャンスなのかなと思う」
(『ABEMAヒルズ』より)
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