2020年、アイドルからアウフグース(熱波師)に転身。今年7月におよそ50組が参加した「Aufguss Championship Japan2022」にペアで出場するなり、見事に優勝。オランダで行われる世界大会への切符をつかんだ美人熱波師が、転身のきっかけやアイドル時代の苦労話、そして現在の充実の日々を語った。
“日本一予約が取れない”熱波師として活動するのは、鮭山未菜美さん(28歳)。サウナ界の救世主としていま、注目を集める人だ。彼女の職業は熱波師。またはプロ・アウフギーサーという。フリーの熱波師として活動する。
フリーの熱波師として、毎週月曜日には「サウナ&カプセルホテル北欧」で師匠の鈴木陸さんとコンビ“「北欧」アウフグース”を組んでタオルを振るっている。お話を聞いた日は20人の客を前に、都内屈指のアツさ110度の灼熱の世界で熱波を送った。チケットは予約開始からわずか1分で完売というから驚きだ。支配人の菅剛史さんは「ある意味サウナを広めてくれる伝道師。いろんな人をサウナ好きにさせる力がある」と鮭山さんの魅力を語る。
男性客らが「ノックアウト寸前。癒されました。女性ならではのしなやかさが癖になる」「元気いっぱいになって帰れる」「一気に扇いでくれる。パワフル」と鮭山さんについて語れば、師匠の鈴木さんは「人に愛されるところ。僕らは本当に業務的に淡々と昔はやっていた。人柄だとか、盛り上げ方だとか」と評価する。
京都府出身の鮭山さんは、中学・高校時代はソフトボール部に所属し、エースで4番と活躍。柔道は初段の腕前だ。“鮭山”という名は芸名で、鮭が大好きだったことに由来する。
「何よりも鮭が好き。フォルム、色、ツヤ、“シャケ”という響きも」
しかし、鮭好きアイドル“シャケドル”として活動するも思うようにいかないことも。自身の身の振り方に思い悩んでいるとき、ドラマの「サ道」(テレビ東京)を見て、熱波師の存在を知ったという。
そんな鮭山さんについて、支配人の菅さんは「当初は見た目とか女の子ということだけで注目を浴びてると思った。しかし度胸があるのか、本番で一発を決める力が強い」とも語る。
熱波師とは、サウナストーンにアロマを混ぜた水をかけ、蒸気をタオルで扇ぐことで発汗を促す仕事。近年では音楽をかけたパフォーマンスなどもあり、人気とともにエンターテインメント性も高まっている。本場ヨーロッパでは競技としても盛んであり、7月に開催された「Aufguss Championship Japan2022」に鈴木さんとコンビ「シャケ&スズキ」を組んで団体戦に出場した鮭山さんは、悲願の優勝を果たしてオランダで開催される世界大会への切符を手にした。
その採点基準はタオルさばきのテクニックだけではなく、独創性、表現力、テーマやショーの構成、温度管理やアロマの使い方は適正かなど20項目にわたる。鮭山さんいわく「フィギュアスケートのよう」だ。
事務所やサウナ施設の従業員が熱波師として活動することが多い日本において、珍しくフリーランスとして活動する鮭山さんは、生き残りをかけた真剣勝負の中で技術と度胸を磨いてきた。芸人でプロ・アウフギーサーの箸休めサトシも「タオルさばきだけだったら、僕より上手い。日本で随一。終わった後のファンサービスとかもしっかりできるので、そこが人気の秘訣でもある。体力的にも精神的にも、一回やるだけですごく消耗する。本当に大変だし、いま本当に現時点でフリーでちゃんとやれてるのは鮭ちゃんだけかもしれない」と一目置いている。
熱波師は基本的に歩合制だ。鮭山さんは月平均20店舗ほど、全国各地のサウナを巡っている。毎回足を運んでくれる客もいるため、飽きないように衣装も演出も毎回工夫を凝らしている。熱波師の道に足を踏み入れて2年。「毎日が楽しくなりました。圧倒的に。直接的に人に笑顔を与えられてるってわかるので、いまは毎回自信をもって全力でできている。目標は世界一」と充実の日々を語った声は、心なしか弾んでいるように聞こえた。
横浜のサウナ「スカイスパYOKOHAMA」で話を聞いた男性ファンは月10数回ほど足を運ぶという。「元気をくれるところ」と彼女の魅力を話せば「かわいいですよ」と話す女性ファンの姿も見られた。
21日にABEMA『ABEMA的ニュースショー』に出演した鮭山さんに対して、以前番組で一緒になったことがあるタレントのでか美ちゃんが「今の方が生き生きしている。鮭が好きなのは本当だろうけど、非常に迷いを感じた」と話すと、手を叩き、大きく頷いた。
「ドラマのサ道で熱波師を知った。シャケドルとして限界を感じていた時だったので、コレだと。鮭は純粋に好きだったけど、バラエティで面白おかしくやったり、オーディションで鮭のモノマネを無茶ぶりされるのがつらかった」
アイドル当時の苦悩を明かした鮭山さんはさらに「一番熱い施設だと140度近いサウナ室でやることも。かなり過酷な環境。1ステージ15分ほどで1日に3~4回。使用するタオルは持ちやすいように縫ったり、状況によって大きさの違うタオルを使い分けることもある」と熱波師の苦労と工夫にも言及。一方では「(長袖の)服を着た方が、(肌を露出するよりも)逆に熱耐性が上がる。お休みの日もサウナに行くほど大好きです」と意外なエピソードも披露した。
「色々辛かったんでしょうけど、アイドル時代があったから今の鮭山さんがある」と千原ジュニアに振られると、一つ大きく頷いて「そうですね」と笑顔を浮かべた。フリーランスを選んだ理由については「一人でも多くサウナの魅力を伝えたい。自由に全国を回りたいけど、施設に所属するとそれが難しくなってしまう。アウフグース、熱波に集中できる環境はフリーだと思った」と説明した。
今年の年末までスケジュールが埋まっており、サウナの魅力を伝えるために全国を飛び回る予定だという鮭山さん。今でこそ順風満帆だが、熱波師を始めて間もなく、新型コロナウイルスの感染拡大が始まり3カ月ほど仕事が全くない時期を経験している。だが苦しい時期を経て、仕事量は回復傾向。収入もアイドル時代より多く、安定した生活を送ることができているそうだ。
「良い人がいたら、その人だけに熱波を送ることも?」と少々意地悪な質問に対しても「多めに送るときもありますね」と上手い切り返しをみせ、笑いを誘った。最後に鮭山さんの人生を変えたドラマ「サ道」のプロデューサーである寺原洋平さんからの「ドラマ・サ道が大切にしているのは、単にサウナ施設の紹介ではなく、どんな気持ちのときにサウナに救われ、称えてもらえるかを色々な人間模様を通じて皆さんに知ってもらうこと。このドラマによって鮭山さんを救うことができ、今度は鮭山さん自身がサウナで悩める我々を迎える立場になったきっかけになれたことが大変光栄です。これからもサウナで、多くの頑張った汗や悔しかった涙を優しく熱波で昇華させてください」といった手紙が代読された。最後まで耳を傾けた鮭山さんは微笑みを浮かべて頷き、手を叩くと「本当にサ道に救われた。ビックリしている」と驚いたように話した。
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