国を上げてデジタル化社会を実現するため、去年9月1日にデジタル庁が発足してから1年。そんな中、新聞へのある投書が議論になっている。
【映像】虫眼鏡の検索マーク→高齢者「◯(マル)から毛が生えたマーク」
飲食店で、高齢の男性がタブレットでの注文ができず「口で注文したほうが楽だ」と激高、店員と口論になった。その光景を見た投稿者は、高齢者にとって難しいのは理解するものの、「適応する努力はしていますか?」「だから老害と言われるのではないか」と疑問を投げかけた。
この投書がTwitterで紹介されると、一気に拡散。「時代の流れなんだから使えるように努力してほしい」「わからないなら怒らずに素直に聞こうよ」と投稿者に賛同する意見の一方で、「投稿者は高齢者がどういうものなのか理解していない」「誰にでも使えるシステムを作ってからにしろ」といった声があがった。
高齢者のデジタル化には何が必要なのか。誰一人取り残さないデジタル化とはどのようなものなのか。1日の『ABEMA Prime』は専門家を招き議論した。
シニア向けのITサービスを作るために高齢者施設で3カ月の住み込み調査も行ったHubbit,inc代表の臼井貴紀氏。「怒ってしまうのと、タブレットを使う努力をしろというのは別問題だと思う」とした上で、高齢者のデジタル意識について次のように話す。
「高齢者施設で実際にタブレットをお配りしたことがある。使い終わった時に『アプリを閉じてくださいね』と言うと、丁寧に充電を切って待ったりとか、『お部屋に帰って使ってみてください』と言うと、“何が起こるかわからない箱”ということで、元のケースにしまって、さらに丁寧に引き出しにしまう方もいた。三種の神器の“スーパーバージョン”みたいになっていて、我々の常識とは異なるものになっている」
ネット予約や注文は相方のりんたろー。にお願いすると、デジタルへの苦手意識を明かすEXITの兼近大樹は「高齢者側の気持ちがすごくわかる。“当たり前にできるもの”としてみんなが押し付けてくるし、僕なりに努力をしているのにこんな見た目だから『本当は分かるのに怠けているだけ』と思われてしまう。『ちゃんとしろよ』という目でみられるのはつらい。高齢者は、これまでいろんなことを学んで、国を回して頑張ってきた。それなのに、デジタル化の局面では『邪魔』なんて可哀想すぎる。もっと手を差し伸べてもいいんじゃないか」とコメント。
リディラバ代表の安部敏樹氏は、「プログラマーの三大美徳(怠慢、短気、傲慢)」という話を引き合いに、「面倒くさがることは大事だ」との見方を示す。
「要は、面倒くさいんだったら自動化したほうがいいとか、うまくいかないのはシステムが悪いせいだから改善されないといけないといった考え方。短気になって人に攻撃するのはよくないが、“うまくいかない”“嫌だ”というのは、むしろ技術が進歩するためのいいフィードバックだと捉えてあげる。あと、高齢者の大きなモチベーションになるのが『孫』『健康』『防災』で、この3つのコンテンツのためならスマホを学ぶらしい。学習能力が落ちていくのは事実だが、それとは別に高齢者が学びたくなるコンテンツとは何なのか、そのためにシステムはどう改善できるだろうかと考えていくことが、社会を前向きにしていくエンジンになる気がする」
では、“誰一人取り残さないデジタル化”はどのように進めればいいのか。臼井氏は「すでに取り残されている人もいるが、理念は掲げなければいけない。我々は医療、介護の分野でも連携していて、電話でデジタル庁に聞いたことがあるが、詳細はまだ決まっていなかった。デジタル庁もそもそも庁内をデジタル化するところに四苦八苦されているようだ」と指摘する。
安部氏は「一律のスタンダードというよりは、ある程度、個別最適化できるのがテクノロジーの良いところ。取り残さないという観点でも、一律で“ここまで来たらOK”というよりかは、“この人は壁にぶつかっているから丁寧に教えてあげよう”とか、“あの人は高齢者だけれどもリテラシーが高いからもっと楽しめるようにここまでやってあげよう”ということを、個別にやっていくかたちになる気がする」とした。(『ABEMA Prime』より)
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