先月、カナダの有名なニュースキャスター、リサ・ラフラム氏(58)が11年間続けてきた番組の降板を発表。ラフラム氏は自身のTwitterで、「降板は自分が望んだものではない。不意打ちで解雇通告を受けた」と発表。理由の1つは「白髪になったから」だと、CNNが地元メディアの報道として伝えた。
ラフラム氏は髪を金髪に染めていたが、世界的なコロナ禍の中、髪を染めることをやめたという。そして、白髪混じりの髪でキャスターを務めていたところ、「リサが白髪になるのを許可したのは誰だ」と、所属テレビ局の親会社ベルメディアのマイケル・メリング副社長が発言したというのだ。
これにはカナダのみならず、世界中から大きな非難が。テレビ局側は、視聴者の習慣の変化に基づく経営上の決定であるとし、白髪が理由であることを否定しているが、批判の声は止まらない。
髪に関するTPOについて、7日の『ABEMA Prime』は専門家とともに議論した。
この騒動について、髪形などの心理・文化に精通している、グエンチャイ大学日本オフィス代表で化粧心理学者の平松隆円氏は「カナダの会社で“グレイヘアだから”という理由での解雇はないと思う。おそらくニュースアンカーの契約条件として、例えば“外見を変えない”という条項がある中に髪の色も入っていたのではないか。この件がリークされた後に照明の色がどうのこうのとつついてきて、会社として“しめしめ、これを理由に解雇してしまおう”となったのだと思う」との見方を示す。
フリーアナウンサーの柴田阿弥は「副社長の“何で髪色をグレイにしたんだ”という発言があったとしたら、どういう意図だったのか。騒動になっているので、関係ないのであれば『関係ない』と釈明するべきだと思う」としつつ、「逆に男性アナウンサーは基本的に黒髪で、髪が長い人はいない。同じ番組に女性はピアスなどをつけて出ていて、ニュースを読むという役割は一緒なのに、男性はそれにネクタイもしめるのは不思議に思う」と疑問を呈する。
プロデューサー・慶応義塾大学特任准教授の若新雄純氏は「“こういうものが求められている”と明らかにわかっているのにあえて違う格好をしたら、お客さんに“えっ?”と思われるのは予想できること。そこで相手の疑問に答えられないとその人のわがままになる。TPOにふさわしいスタイルが全くわからなくて責められるのかわいそうだけど、わざと崩して“見た目で決めるな”と主張するのは、社会とうまく付き合えていないのではないか。僕らは印象をいちいち考えるのがめんどくさいからルールを作って合わせきた。だけど、そのルールを崩していくなら、永遠に終わらない印象コミュニケーションと向き合う覚悟がいると思う」との見解。
ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「どういう組織に属しているかによって考え方は変わってくる。例えば、金髪にして伝統的な企業の中に入っていくと“なんだその髪型は”と言われるが、原宿の竹下通りに行くと埋没するわけだ。みんなが個性的になっていく社会においては、逆に個性的であることが目立たなくなるので、“だったら普通の格好でいいじゃん”とノームコアという文化が生まれてきた。もはや社会と戦っているような闘争的なイメージはだんだんなくなっていって、“個人で好きにやっているだけだよね”という文化、流れとして変わってくるんじゃないかと思う」と述べた。
スターバックスは昨年、従業員のドレスコートを改訂し、髪色の制限を撤廃し一部の帽子を着用可能にした。一方で、松山市役所は、染髪禁止で白髪染めは地毛色、ミニスカート禁止などの規定が厳しすぎると話題になっている。
佐々木氏は「究極、相手が不快にならないことが大事だと思っていて、高級レストランのネクタイ・ジャケット着用というドレスコードも不思議だ。広告やウェブの業界だとネクタイをしてる人なんかいなくて、下手すればジャージ。でも、そこそこ小ざっぱりしているわけだ。それだとドレスコードのあるレストランには入れないが、スーツならヨレていても入れる。やぱり前者のほうがいいんじゃないだろうか」と訴える。
平松氏は「そもそも人間はめんどくさがり屋の生き物。初めて会う人がいい人なのか怖い人なのかわからない、どうコミュニケーションをとればいいかわからないという時に、わかりやすく判断するために僕たちは外見の印象を使っている。だから、第一印象が大事だと言われて、そのステレオタイプが明文化されていくとコード化していく。印象管理や印象操作は人間関係の中ではすごく大事だ」と指摘した。(『ABEMA Prime』より)
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