東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗元会長の胸像建立。朝日新聞によると、発案者はラグビーワールドカップ組織委員会元会長で、キャノンの御手洗会長兼社長。ラグビーワールドカップの誘致や、コロナ禍でのオリンピック開催の基礎を作った功績を称えるということで、森氏の後を継いだ橋本聖子参議院議員など政財界15人の有志が発起人となり、胸像の製作費を集める募金活動を行っているという。募金は一口5000円からで、窓口は一般には公開されていないそうだ。
森氏といえば、2014年に会長に就任。国際オリンピック委員会(IOC)と連帯しながら、開催に向け組織委員会を率いてきた重鎮だ。しかし、女性蔑視ともとれる発言で大炎上。開催を目前にして退任に追い込まれることとなった。
そんな経緯もあってか、Twitterでは「あんだけ失言したのに意味わからん」「生きてるうちに銅像を建てる感覚が理解できない」などと批判の声も。物議を醸しているこの計画から、13日の『ABEMA Prime』は功績の残し方を議論した。
■「問題は渦中の人であるということと、どこに建てるか」
著書『銅像歴史散歩』などで銅像建立の歴史などを取材している銅像ジャーナリストの墨威宏氏は「建てたいと思っている人たちがいて、お金を出し合って銅像を作ること自体に問題はない。本人が『作ってほしい』と言ったわけでもないと思うが、問題は渦中の人であるということと、どこに建てるか。駅前などみんなが通るような公共の場だと、否が応でも見てしまうわけだ。森さんが好きな人も嫌いな人も見ることになるので、そこで問題が起こってくる」との見方を示す。
設置場所は今のところ未定で、再来年に建て替えが予定される新秩父宮ラグビー場のミュージアムではないかという憶測も飛び交っているが、管理・運営するJSCは「(設置の)計画はない」としている。
また、菅前総理の胸像設立の動きもある。共同通信によると、菅前総理の出身地である秋田県湯沢市の住民団体が設立を目指して寄付を募っており、今年の1~3月で421件975万円の寄付が集まったという。
墨氏は「銅像もアニメキャラから二宮金次郎までいろいろあって、歴史的な人物になると、大河ドラマなんかではしょっちゅう銅像の映像が使われている。そういう所は観光的に使われているものだ。一方で、ただ作って森さんにプレゼントする、森さんの家の庭に建てるというのは顕彰にはならない」と指摘。
実業家のハヤカワ五味氏は「置いた地域が“森さんを支持している”という見え方にならないだろうか。私有地でエリアが限られていたらいいが、街全体がそう見えてしまうと“私は違う”と言う人が出てくると思う」、BlackDiamondリーダーのあおちゃんぺは「公共の場に置くと、ボロボロになってきたり汚くなったりする。その時にまた募金をしていくのか、他のお金で維持していくのかで、民意が必要かどうかが決まるのではないか」と疑問を呈する。
墨氏は「公有地に建てると、大体は自治体に寄付される。そうすると、維持費は自治体持ちになる」と答えた。
■会社の会長自身が胸像建立、社員の“一致団結”に?
植木鋼材株式会社の創立者で会長の植木政行氏。自身の銅像を事務所前に建立した経緯について、「高校を卒業してから修行して、60年という歳月を通してきた証として残していきたいと。二宮金次郎の銅像をたくさん作ってきた富山の友達の所へ行って相談したら、『ぜひ作ったらいいのではないか』と言われたので、60周年を目指して銅像を作らせてもらった」と説明。
銅像によって社員が一致団結するようになったそうで、揚子代表取締役は「会長の功績をみんなで実感するというか。会長がここまで作ってきたものを“自分たちが引き継いでやっている”というような、未来に向けて“俺たちが作り上げていくぞ、会長”という一致団結は感じる」と話す。
自身の銅像ができたことによって心境の変化はあったのか。政行氏は「友だちとかが『どんなふうにできたんだ?』と見に来てくれる。私自身も今、毎日会社に出ているが、銅像の前を通って事務所へ入るから、自分に『おはようございます』と言って、頭を下げてから行く」と明かした。
墨氏は「会社の中に社長さんの銅像があるというのは、実はそんなに珍しくない。それは社内で完結する話で、問題は公共の場かどうか。要するに、無関係な第三者が見られるかどうかというのが、やはり銅像の一番大きな問題だと思う」とした。(『ABEMA Prime』より)
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