ドラマ版『ロード・オブ・ザ・リング』に「原作と違う」の声、演者への中傷も…多様性尊重のうえで世界観どう守る?
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 世界中で多くのファンがいる『ロード・オブ・ザ・リング』。そのドラマ版『力の指輪』が今月2日からAmazonプライム・ビデオで配信されているが、キャスティングや世界観が議論の的になっている。

【映像】『ロード・オブ・ザ・リング』新作のキャスティングが議論に

 ロイター通信などによると、物語に登場するエルフやドワーフに有色人種の俳優が起用されているに「原作の世界観を壊している」「中つ国(なかつくに)にふさわしくない」といった批判の声があがったほか、キャストたちへの誹謗中傷も。

 これに対し、ドラマ版の製作がTwitterで声明を発表した。「私たち『リング・オブ・パワー』のキャストは人種差別、脅迫、嫌がらせ、虐待など、私たち有色人種のキャストが日常的に受けている容赦のない行為に対し、絶対的な連帯感を持って立ち向かいます。私たちの世界が白人ばかりではなく、ファンタジー世界も白人だけではなく、中つ国も白人だけの世界ではありません」。

 世界観と多様性、これからのエンタメには何が必要なのか。14日の『ABEMA Prime』で議論した。

ドラマ版『ロード・オブ・ザ・リング』に「原作と違う」の声、演者への中傷も…多様性尊重のうえで世界観どう守る?

 ロサンゼルス在住でハリウッド外国人記者協会に所属、映画ライター・監督でゴールデングローブ賞選考メンバーでもある小西未来氏は、「Amazonが巨額のお金を出して権利を購入し、史上最高の制作費を出した社運をかけたようなプロジェクトだ。オリジナルをものすごくリスペクトしているし、新しい試みもできているので、その賭けは成功しているのではないかと見ている」と同作を評価。

 内容については、「個人的に(違和感は)あまりなかった。むしろ、今の多様性であるとか、包括性といった流れをうまく捉えている。今までのみんなが知るキャラクターの人種を無理やり変えているのではなくて、新キャラクターに黒人の役者を起用している。うまく両立できていると個人的には感心して見ている」という。

ドラマ版『ロード・オブ・ザ・リング』に「原作と違う」の声、演者への中傷も…多様性尊重のうえで世界観どう守る?

 配役や世界観に対して、「短髪の褐色エルフだともうこれは指輪物語じゃないだろう」「髭のない女性ドワーフに違和感」「人種の多様をねじ込むのはわかるが、世界観や設定を置いてきちゃっていいの?」「ポリコレという政治性に好きな原作がジャックされていく感覚」などさまざまな批判の声が上がっている。

 小西氏は「僕は『指輪物語』の原作を読み込んでいるファンではないので、その立場では反論はできない」とした上で、「ハリウッドが積極的に多様性を取り入れようとしている中で、原作のファンであることを前提にして自らの人種差別発言を発信する人がものすごく多い。最近だと、『スター・ウォーズ』で黒人の俳優が起用された時にものすごく個人攻撃を与えた。『リトル・マーメイド』の実写版が今制作中だが、黒人の女優がアリエル役に起用されていることに対して『アリエルは黒人ではない。おかしい。世界観がぶち壊しだ』という批判がある。そもそもファンタジーの世界なので何だっていいと思う。原作と正しいかどうかという議論と同時に、原作のファンを名乗って偏った見方を発信している人がいるという2つの問題があると思う」と指摘した。

 一方、「原作を全部読んでいるし、映画は5回以上観ている。『ロード・オブ・ザ・リング』は大好きなシリーズだ」と言うパックンは、「若い頃から見ているから、白人の配役はスーッと入るし、見ていてスッキリする。J.R.R.トールキンは結構はっきりと美貌的な説明もしているし、“人間の中にはランクがある。上の人間、真ん中の人間、低い人間”とセリフでも言っている。考えてみれば、中つ国の社会的な構造は人種差別的になっていて、スーッと入る人は“変えるな”と思って当然かもしれない」とコメント。

ドラマ版『ロード・オブ・ザ・リング』に「原作と違う」の声、演者への中傷も…多様性尊重のうえで世界観どう守る?

 その一方で「その潜在的な差別も逆に表面化した方がいいと思う」とし、「トールキンのメッセージは、“いろんな人種はあるけど、悪と戦うためにはみんなが協力しあって、友情、愛、愛国心を持って戦わないと勝てないぞ”というもの。人種差別よりはるかに壮大なメッセージを持って原作を書いて、それが今までの作品の中でうまく表されていると思う。人種差別という構成を乗り越えて今風にアレンジした方が、そのメッセージが生き残ると思う」との考えを述べた。

 これまでの『ロード・オブ・ザ・リング』の映画3部作に対しても批判はあり「主要登場人物に有色人種がいない、女性の主人公がおらず役割が限定的で性差別的である、LGBTQ役が登場しない、“善の側”は欧州文化的に描かれ“悪の側”が中東文化的に描かれている」などの指摘がされていた。

ドラマ版『ロード・オブ・ザ・リング』に「原作と違う」の声、演者への中傷も…多様性尊重のうえで世界観どう守る?

 小西氏は「黒人初のバラク・オバマ大統領が誕生したきっかけとして、2001年から始まった『24−TWENTY FOUR−』という大人気ドラマの影響があったという説がある。初めてドラマの中で黒人の大統領が描かれていたからだ。こうした大ヒットドラマで黒人の大統領を描いたことで、バラク・オバマという候補者が出てきた時に、黒人の人もそうではない人もわりとすんなりと受け入れることができたという見方だ。つまり、それだけエンタメは影響力が強い。エンタメがアンバランスな人種構成をずっと描いているとネガティブな影響があるので、“変えていこう”というのがハリウッドの考え方だと思う」との見方を示した。(『ABEMA Prime』より)

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