日本と同じく物価の上昇に頭を悩ませているのがアメリカだ。金融政策を決める会合が目前に迫る中、日本とアメリカの経済の今後について専門家に聞いた。
食料品や家賃の上昇など記録的なインフレが続くアメリカ。13日に発表されたアメリカの8月の消費者物価指数は、前年の同月と比べて8.3%上昇し、2カ月連続で上げ幅が縮小したものの、市場予想の8.1%を上回った。
市場では、インフレ抑制のため今後もFRBが大幅な利上げを継続するとの見方が広がり、低い金利の円を売り、利回りが見込めるドルを買う動きが加速。一時1ドル=145円に迫った。
共同通信によるとこの日、日銀は市場参加者に相場水準を尋ねる「レートチェック」を実施。為替介入の実施に備えた動きとみられている。
今週、連邦準備制度理事会(=FRB)・日銀共に金融政策を決める会合を開催。アメリカでは大幅な利上げ、日本では円安の一因とされる大規模緩和の継続がそれぞれ焦点となっている。そこでニュース番組『ABEMAヒルズ』は、元日銀政策委員会審議委員で、野村総合研究所エグゼクティブエコノミストの木内登英氏に話を聞いた。
Q.株式市場では「インフレはピークを過ぎた」という予想に反してダウも大幅に下がりましたが、なぜ物価は高止まりなのでしょうか?
木内:3月にピークをつけた形にはなっている。思ったように順調に下がってはいない。ウクライナ問題などの影響を受けた輸入価格の上昇が高止まりしたままだということもある。アメリカの場合はエネルギーだけでなく、家賃や医療サービスなどと幅広い品目で価格が上昇している。これは経済が強い、あるいは労働市場が逼迫していて、賃金の上昇率が高いのが背景にある。
Q.利上げを行なってきているFRBは今後どう動くと見ていますか?
木内:今のところ利上げを停止する見通しはまったく立っていない。少なくとも年末、あるいは年明けまでは継続して利上げを続ける形になる。
Q.2023年に本格化すると予想されるアメリカ経済の減速がより厳しくなる可能性はありますか?
木内:現状でいうと物価高が景気の逆風になっているが、それに比べて急速に金融を引き上げている。実はアメリカだけでなく、日本を除いた多くの国で大幅な利上げに振り切っていて、アメリカに負けないように利上げ競争になっている。物価高が深刻になるため、やけ競走になっている。これは過去に見られなかった現象だ。
Q.最悪のシナリオとして「利上げによって成長減速」かつ 「インフレが揺るがない」というのはありえそうですか?
木内:可能性としてはある。景気は落ちるけど、物価は高止まりして、その結果としてFRBは金融緩和がなかなかできず、もっと景気が悪くなる。
Q.本当に為替介入は実行されるのでしょうか?
木内:可能性が高いとも言えないし、為替介入のハードルは高いと思う。実際に、鈴木財務大臣も為替介入も排除せずと明確に言うようになったのは以前とは違うのだと思う。主要国が為替介入をすると新興国が真似して為替を操作してしまうことになるので、できる限りしないのが原則。ただ、日本としては手の打ちようが無くなったら為替介入の可能性はゼロではない。
(『ABEMAヒルズ』より)
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