米国株式の急落を受け、日本でも“ある金融商品”を購入した一部の富裕層が、大損をしているという。それは、証券会社が取り扱っている商品の1つである「仕組債」。一般的な債券に“デリバティブ”と呼ばれる金融派生商品が組み込まれたものだ。
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基本的には一口1000万単位と高額である一方、比較的手の届きやすい500万円のものまで。今回、米国株に投資する仕組債にお金をかけていた富裕層があおりをくらい大損したという。
富裕層の資産運用・税務・財務管理を行うアレース・ファミリーオフィスの江幡吉昭代表取締役は「例えば親の相続で何千万円が入ってきたとか、会社を退職して退職金が何千万入ってきた方などには、真っ先に銀行や金融機関から営業の電話が入ります.。いろいろと投資をする中で出会う金融商品のうちの1つが仕組債。
去年、一昨年ぐらいまではアメリカ株は上がっていたので、皆儲かっていました。仕組債も株が上がっているときは儲かるのですが、大きく下がってしまうと途端に“元本割れ”になってしまうのです」と話す。
債権は低リスク低リターンと思われがちだが「仕組債」は例外で、年利は5%~10%、中には20%を超えるものもあるという。一方で、5分の1や10分の1にまで資産が減ってしまうこともあるそうだ。
買い手にとってはリスクがある「仕組債」だが、証券会社にとってはその真逆。手数料がどんどん安くなってきている中で、まとまってとれる数少ない収入源となる。問題点は、そうした売り手側の営業に乗ってしまい“リスクを理解せずに買ってしまうことだ”と江幡氏は指摘する。
「実際のリスクがどんなものか、投資している人がわかっていないのが一番の問題点だと思います。“利益は限定で損失は無限大”、なのでハイリスクミドルリターンなんです。そういう難しい商品の理屈を理解せずに投資している人が大半だったので、それを勧めたのも問題だし、買った人にも問題があると思います」
これまで表面化してこなかった問題が、米国株式の下落で浮き彫りになった。そして、苦情が相次いだことを受けて金融庁もこの状況を問題視。「2022事務年度金融行政方針」で、リスクが高く安定的な資産形成に向かない「仕組債」を個人に販売する金融機関に警鐘を鳴らしている。
一方で、仕組債に組み込まれている「デリバティブ」は、本来リスク管理の役割も果たすものでもあるとする江幡氏。毒にも薬にもなるからこそ、個々の“金融リテラシー”が大事になってくると語った。
「オプションやデリバティブは必ずしも悪いものではなく、 “ヘッジ”と言ってリスクをコントロールするために作られたもの。“売り手の金融機関が大手だから”とか“この人誠実そうだから”など“熱心に説明されたから”みたいな思考停止で他人任せに投資をした結果、こういうことになったと。わからないものに投資しちゃダメです。これをきっかけに、“オプション、デリバティブ全部ダメ”みたいになるのは非常に残念。薬にもなる商品なので、上手く付き合っていくべき。金融リテラシーを高めていけばいいのかなと思っています」
(『ABEMAヒルズ』より)
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