NTTが10月から都内の本社機能の一部を群馬県高崎市と京都市に試験的に分散させると発表した。国内最大の通信事業者であるNTTが、なぜこのタイミングで取り組みをスタートさせたのか。テレビ朝日・経済部の国吉伸洋記者はこう語る。
【映像】 「いい地盤ランキング」2位に群馬 NTTが本社機能の一部を移管(ランキング表あり)
「一番の理由は『人材確保』です。NTTは、国内から優秀なIT人材が海外に流出していることに対し、強い危機感を持っています。日本は、欧米と相対的に比べ、賃金は倍近く差があります。欧米は賃金が毎年上昇し続けていますが、日本企業との賃金の差が広がっていることもあり、新たな働き方改革の取り組みが期待されています。特にNTTはGAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)といった会社を意識し、人材流出を防ぎたい考えです」
今回、なぜ数ある都道府県から群馬県高崎市、京都市の2拠点を選んだのだろうか。
「現状の東京一極集中の状況ですと、仮に首都直下型地震などが起きた際、多くの機能が止まってしまいます。高崎市と京都市は新幹線が通っており、交通の便が非常に良く、全国的に見ても地震や水害等の災害リスクも低いエリアです。今後、NTTは総務や経営企画の一部の機能を2拠点に順次移していく予定です」
NTTが取り組むのは、本社機能の一部分散だけではない。
「働き方改革の一環として現在、NTTグループ全体でテレワークを推進しています。7月1日から主要企業のほぼ半分にあたる約3万人が原則テレワークになっており、出社時は全て出張扱いです。最新のロボットやデジタルサイネージを使い、遠隔でも対面に限りなく近い打ち合わせができるよう、ITを使った働き方改革を次々と始めています」
国内大手メーカーの富士通でも同様にテレワークや遠隔勤務が始まり、ヤフーやDeNAなどの大手IT企業も、独自の働き方改革を進めている。
一方で、逆にテレワークが進んでない企業や業種もある。
「メーカーの中には国内に工場が多数あり、従業員がたくさんいるような企業や、テレワークが難しい業種ももちろんあります。テレワークイコール、必ずしも良い働き方ではありません。ただ、テレワークができるのに、最も進んでいないと感じるのは霞が関の中央官庁ですね。中央官庁は働き方改革が一切進んでおらず、現在も長時間残業が常態化しています。優秀な若手な官僚の離職が多く、5年連続で国家公務員の総合職を希望している人が減っていて、河野デジタル担当大臣も危惧しています。地方創生を打ち出しながら霞が関の中央官庁は自らの一部地方移転には抵抗し、リスクの低減も進んでいません」