3度少年院に入るも…“つまようじ事件”後にできた福祉とのつながり 「“自分の居場所”ができたことが更生を後押ししてくれた」
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 「ここに丸いケーキがあります。このケーキを3人で公平に分けて食べる場合、どうやって切ったらいいでしょう

 コミカライズもされ、累計100万部を超えるベストセラーになった『ケーキの切れない非行少年たち』の一幕。少年院にはケーキを3等分に切ることができない人間が多く存在。彼らは認知力の弱さから罪の重さを理解できず、反省すらできていないと指摘している。そのため、少年院を出たあと社会に居場所がなく、再犯を繰り返すケースが少なくないという。

【映像】“つまようじ事件”で当時YouTubeに投稿された動画

 「少年院には3回入った」と話す、元非行少年のアオキさん(27)。彼が初めて罪を犯したのは15歳の時。「『新宿駅の近くで、3人組で通り魔を起こす』ということを2ちゃんねるに書き込んだ。威力業務妨害罪で逮捕された」。

 少年院で1年3カ月矯正教育を受け、社会に戻ったのもつかの間、17歳の時には再び殺人予告を行い2度目の少年院に。それだけでは終わらず、19歳の冬、世間を騒がす事件を起こしてしまう。

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 つまようじ少年事件――。店の商品につまようじで穴をあける動画を投稿したアオキさんは全国指名手配に。動画では「逃走します。警察は無能です。私を捕まえられるかどうかわかりませんけど」と警察を煽るコメントもしていたが逮捕され、3度目の少年院に入ることになった。

 現在は「多くの人に迷惑をかけずとも、あるいは自分の時間を少年院に入ったりとかで無駄にしなくても、普通に社会で生きていけたのではないか。後悔というか、馬鹿だなあと正直自分で思う」と話すアオキさん。

 なぜ彼は犯罪を繰り返し、つまようじ事件を起こすに至ったのか。6日の『ABEMA Prime』は本人に話を聞いた。

■「“自分の居場所”ができたことが更生を後押ししてくれた」

 出演に際して、「依頼を受けた時に、自分の過去のことを茶化されたりおもしろおかしく扱われるなら断ろうと思っていたが、“社会をよりよくするため”という意図が感じられた。自分の経験を話すことによって社会で暮らす人々が生きやすくなればいいと思った」と明かすアオキさん。

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 3度の逮捕について、「自分が未熟で幼稚だったということもあるが、社会に居場所がなく、常に疎外されていると感じていた。誰からも必要とされていないという思いが強い中で、自暴自棄になって犯罪に手を染めてしまった」と説明。

 1度目と2度目の逮捕の殺害予告は「実際にやるつもりはなくて、ただただ目立ちたかった」、つまようじ事件は「迷惑になることをむしろ楽しんでいた節があるというか。動画投稿をすればお金を稼げると思っていたけど、普通に投稿しているだけだと再生数が回らない。悪目立ちでもいいから、ちょっと不謹慎なことでもいいかなということでやってしまった」という。

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 「失うものがなかった」とも話すアオキさんだが、事件から7年10カ月が経った今はなぜ考えが変わったのか。「変われたのは自分の力だけではないと思っている。特に大きかったのは、今までは少年院から出ても福祉につながることができなかったが、つまようじ事件を起こしてからはつながることができた。いわゆる“自分の居場所”みたいなものが、物理的にも精神的にもできたことが更生を後押ししてくれる理由になったのかなと思う」。

■「境界知能=非行に走る、といった関係は全くないと思う」

 『ケーキの切れない非行少年たち』では、“少年院にはIQ(知能指数)が平均よりも低い「境界知能」が多い傾向がある”としているが、鑑別所長・医療少年院長など長く矯正教育に携わる、特別支援教育ネット代表の小栗正幸氏は「境界知能=非行に走る、といった関係は全くないと思っている」と話す。

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 「『居場所』というのが1つのキーワードになっている。まず自己有用性というか自尊心というところで、僕らは自分の居場所を持つわけだ。小さい頃から『かわいいね』と言われて大きくなっていく。ところが、『産むんじゃなかった』とくる場合もあって、そうすると非常に弱いものになる。それは本人の責任ではなく、厳しい言い方をすれば身近にいた大人や地域で作られる問題だ。ここに境界知能があるとか、知的なハンディキャップがあるとか、発達障害があるという話は全くないと思う」

 アオキさんは最初の逮捕後、鑑別所での検査でIQは境界知能とされる「77」、広汎性発達障害(自閉スペクトラム症)だということを少年院の教官から知らされ、障害者手帳を取得することになった。

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 「小さい頃から、学校で友達に嫌なことを言ってしまって嫌われたり、“もうお前とは関わりたくない”とけっこう1人でいることが多かった。大人になっても疎外感はあった」とする一方で、「相手に配慮を求めることも大切だと思うが、まずは自分が変わってからというのが前提だと思う。それから境界知能や発達障害で苦手なことは事前に伝えた上で、なにか配慮をしてもらったりすることが大切なのではないか」と話す。

 そのために、少年院は機能しているのか。居場所を作っていくことはできるのか。小栗氏は周囲に「理解者」が増えることが必要だと訴えた。

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 「子どもたちは少年院で更生するのではなく、地域社会で更生する。少年院でいくら更生しても、地域の無理解の中に入っていくとまた同じことが起こってしまう。だから、“地域で更生する”ということが大前提にある。やはり物事には順番があって、支援が必要な方にどういうアプローチをすべきかというと、通訳のような役割をする人。例えば、“アオキさんが言いたいことはこういうことだ”と友達が通訳する。特にコミュニケーションにハンディがあるとのことだが、そういう方はすごく多いので、学校の先生も含めて周囲に理解者が必要だと思う。

 また、下手に情緒的な接触を深めたり、信頼関係がどうとか言い出すと、“裏切った”ということが出てくる。ドライにテンポよくやった方が絶対にいい」

(『ABEMA Prime』より)

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