将棋の棋王戦コナミグループ杯挑戦者決定トーナメント4回戦が10月17日に行われ、藤井聡太竜王(王位、叡王、王将、棋聖、20)が豊島将之九段(32)に107手で勝利した。角換わり腰掛け銀の戦型となった本局は、藤井竜王が的確な受けを展開。ABEMAの中継に出演した解説陣を「藤井竜王の受けの強さが光った一局」と唸らせた。
棋王戦挑戦者決定トーナメント4回戦。残り1枠となったベスト4を争う一戦は、今夏の王位戦七番勝負で熱戦を繰り広げた藤井竜王対豊島九段の好カードとなった。振り駒の結果、先手は藤井竜王に。今年度6度目の対戦は、七番勝負の続きとばかりに角換わり腰掛け銀が志向された。
戦場に急ぐように、序盤は早いペースで進行した。藤井竜王が昼食休憩前に指した角打ちに、豊島九段は休憩を挟んで1時間8分を投入。桂打ちから局面を動かしに出た。しかしこの一手は、豊島九段が「無理攻めになってしまった」と後に振り返ることになる。藤井竜王は動じることなく角を攻防に駆使し、リードを押し広げた。
後手の豊島九段は、先手に離されまいと猛攻。藤井竜王は、後手の勝負手の角切りから香車の田楽刺しをも見据えた銀打ち、角打ちと次々に受けの妙手を繰り出した。直後に藤井竜王が離席。豊島九段は思わず頭を掻き、小さい動作ながら太ももをぴしゃりと叩く仕草も見せていた。
一見、角の働きが悪く、解説の千葉幸生七段(43)、上村亘五段(35)は「理屈は分かるけど、もう少し良いところに角が打てそうな気が…」「狭そうな感じがするのに安定している…」。藤井竜王はわずか4分での着手だったが、「間接的に受けるという技でしたか。指された後に解説することはできるのですが…」と思わず苦笑いを浮かべていた。
藤井竜王は手厚くて負けにくい陣形を築き、みるみる間に後手を突き放していく。「中盤は受ける展開になったが、自陣が安定したところでよくなったと思った」と振り返り、終始正確かつ冷静な指し回しを見せた藤井竜王が勝利を手にした。
絶対王者が見せた受け将棋に視聴者も大興奮。「いいもの見せていただきました」「間違えない すごい…」「さす太」「最善太」「読みが早いんじゃー」「かっこいいね」と多くのコメントが寄せられていた。
この結果で、藤井竜王は自身初のベスト4に進出。渡辺明棋王(名人、38)への挑戦者争いは、藤井竜王、羽生善治九段(52)、佐藤天彦九段(34)、伊藤匠五段(20)の4人に絞られた。次戦、準決勝では名人3期の佐藤九段と激突。「次局も集中して精一杯指せればと思います」。年度内六冠獲得に向けて、目が離せない激戦が続く。
(ABEMA/将棋チャンネルより)