23日、中国で5年に1度の共産党大会が閉幕した。党トップとなったのは、やはり習近平国家主席。2期10年を原則として世代交代を進めてきた慣例を破り、異例の3期目に入る。
今回の人事では、序列2位の李克強氏や序列3位の栗戦書氏、序列4位の汪洋氏など、4人が最高指導部から外れることになった。新たなメンバーは全て習近平氏に近い人物で固められた。
拍車がかかる習氏の“一強”体制。どんな思惑があり、状況は外交にどのような影響を与えるのか。24日の『ABEMA Prime』は専門家に聞いた。
■4期目からその先も視野?
今回の人事について、米国戦略国際問題研究所(CSIS)上級研究員等を経て現在は笹川平和財団上席研究員の渡部恒雄氏は「イエスマンばかりで“ノー”と言う人がいないのが心配だというのが、まずアメリカの反応。特に李克強さん、共青団の人たちが誰もいない。胡錦涛さんの謎の退室とも関わる話かなとも勘ぐりたくなってしまう」と話す。
元外務省職員で北京や上海などに駐在経験のある静岡県立大学国際関係学部教授の諏訪一幸氏は「人民日報という共産党の新聞は一面、習近平さんだ。その下に6名いて、日本風にいうと“習近平お友達内閣”。異様な結果だと思う。最高指導部の中ですら主従関係となっていて、習近平さんの権力・権威は突出している」とする。
習氏が強調した「中国式現代化」という言葉は何を意味するのか。諏訪氏は「『中国共産党が指導する社会主義現代化である』、まさに中国共産党が指導するというところに強い力点が置かれていると思う。これまでも共産党が指導してきたが、より強いかたちでリーダーシップを発揮して現代化を進める、豊かさを追求するというイメージだ」との見方を示す。
ジャーナリストの堀潤氏は「中国のジャーナリストと民主主義について語った時に、『すでに我々は民主主義を導入している』『皆さんとは違う形だが民主主義だ』と。いわゆる首長を選んだり、代議制でというものではないが、彼らは『民主主義は導入済みで、次の話をしている』という言い方をしている。もう1つ、『毛沢東の時、人民日報は毛沢東の顔だったが、その後は集合写真だった。習近平氏になって今のようなワンショットの写真が使われるようになった』と。習氏は永久首席として、毛沢東以来の巨大な中国を作っていくということは漏れ伝わっている」とした上で、「4期目、5期目、その先も含めて続けるイメージなのか?」と尋ねる。
諏訪氏は「おそらく体が続く限り今のポストを手放さないだろう。また、その間にしっかりと腹心を養成していく。これまでたくさんの政敵を切ってきたので、彼らにいつ足をすくわれるかわからない。そうならないためにいつまでもポストにしがみついている、という状況がこれから続くと思う」と回答。
また、「外から見ると、『独裁だ』『大衆は非常に苦しんでいる』というイメージを持つ人は多いと思うが、実は中国の人たちは習近平さんをけっこう支持している。経済的に明るい未来を提示できるということと、実際に成長してきたからだ。今回、指導者が会って気に入った人を引っ張るというやり方こそ正しいと、今はそういう方向になっている」とも述べた。
アメリカは12日、国家安全保障戦略を発表。中国を「国際秩序を変える意思と能力を兼ね備えた唯一の競争相手」と位置づけ、同盟国との関係を強化し対抗する姿勢を打ち出した。アメリカ側の向き合い方として、渡部氏は「中国に対して、例えば民主化が進むということは期待していない。今までの期待は間違っていたということだ。そして、台湾に対して武力を行使しないように、きちんと力を積み上げて対抗するという路線。それから大事な技術やゲームチェンジャーと言われるような技術が入らないように、共和党も民主党もそちらに動いている」と説明した。
■台湾有事の可能性は
党大会の中で、習氏は「平和的統一の未来を実現しようとしているが、決して武力行使の放棄を約束しない」と強調した。人事では、台湾方面を担当していた司令官を中央軍事委員会のメンバーに起用している。
一方、アメリカは中国による台湾侵攻が起こる得る時期について、「2022年や2023年の可能性を排除できないと思う」(海軍制服組トップのギルデイ作戦部長)、と危機感を示している。
渡部氏は「軍事的合理性から言えば、プーチン大統領・ロシアがウクライナを侵攻するのはあり得ないこと。現に失敗していて、イエスマンに囲まれているトップはそういうことをやってしまう。つまり、中国もこれだけノーと言う人がいなくなると、誤った計算で誤ったことをやりかねない要素があると思う。ただ、ギルデイ作戦部長は、これに乗っかって予算を取りたいという考えもあるのではないか。現実的には、台湾に侵攻するために中国軍が揚陸艦で兵隊を船で送るようなものはなくて、2年くらいではできない。ただ、偽情報を台湾に流したり、サイバーでいろんなものを撒いたり、そういうことはやりかねない」と懸念を示す。
一方、諏訪氏は「ウクライナ侵攻でロシアはだいぶ失敗しているが、それによって中国の台湾に対する政策のハードルが上がったとは思えない。そもそも、中国にとって台湾統一は悲願で、習近平氏は特にその気持ちが強い。何らかの目標に向けて、ロシアの轍を踏まないためにはどうしたらいいかということを研究していると思う。時期で言えば、2024年に台湾の総統選挙があるので、その結果によっては何か動く可能性はあると思う。それから2027年、たびたび言及されるが人民解放軍の創設100周年だ。具体的に何をするかという明確な目標はないが、今回の人事を見ても中央に台湾関係者が入っているので、24年、27年に向けて何らかの台湾統一に向けた動きを取ることは十分考えられる。ただ、台湾政策に対する選択肢は非常に限られている」とした。(『ABEMA Prime』より)
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