FIFAも選手らへの“誹謗中傷”を問題視 叱咤激励との線引きは? セルジオ越後氏「生の声とSNSの集中攻撃は全然違う」
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 開催まで1カ月を切った「FIFAワールドカップカタール2022」。国の威信を背負い、大舞台で戦う選手たちに暗い影を落とすのが、SNSでの誹謗中傷だ。国際サッカー連盟(FIFA)の報告書で明らかになったのは、半数以上の選手が被害にあっている現状。その多くは人種や宗教に対する差別、人格否定など心ないものだという。そのため今年6月、国際サッカー連盟は国際大会の開催期間中、選手や関係者をSNSの誹謗中傷から守る計画を発表した。

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 一方で、チームの発展を願う叱咤激励との線引きはどこにあるのか。サッカー評論家のセルジオ越後氏は、「意見を言うことは、怒っているのではなくてヒントを与える。プロは責任を取らなくてはいけないから、ダメなら監督は更迭する。みんな辛口、辛口と言うんだけど、カズ(三浦知良)は『セルジオさんだけだ。僕が聞きたいことを言ってくれるのは。みんな俺にペコペコして褒めるから、何が足りないかわからなくなっちゃう』って」と、成長を願うゆえのものだと話す。

 24日の『ABEMA Prime』はセルジオ越後氏と元プロサッカー選手の那須大亮氏とともに議論した。

■那須氏「誹謗中傷への向き合い方がわかる人発信が必要」

 FIFAの発表について、那須氏は「非常にいい対応だと思う」とした上で、「Z世代と言われている人たちはSNSが主流になってきて、うまく活用すればいい方向に生活レベルが上がると思うが、誹謗中傷への向き合い方がわからないと思う。そこをうまくできる人がメディアに出たり、インフルエンサーだったりが、正解の選択肢を与えていかないといけない。より良い選択肢を決断してSNSを活用すれば、非常に大きなパワーになると思う」との見方を示す。

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 実際にスタジアムで言われることと、SNS上の声は異なるという。「直接言われれば、汚い言葉でも『このやろう』と反骨心になるが、SNSのコメントはどうしてもそうはならない。実際に言われるのは心が動くコミュニケーションがあり、次の日にポジティブなものに変換できる。しかし、SNSは言葉を自分で受け取るだけなので、結局1人で解釈しないといけない」。

 また、InstagramやYouTubeでの活動を行う上で、「誹謗中傷や汚いコメントに『これはどういう意味ですか?』と聞くと、だいたい『すみませんでした』『安易に投げかけてしまった』と。『僕ではなかったら傷つけているよ』『応援しているならこの言葉は言ったらダメ』と返す」と明かした。

■セルジオ越後氏「僕はサッカーをダメにしようとする意識は全くない。親心だ」

 誹謗中傷と叱咤激励の線引きについて、セルジオ越後氏は「勝った時には褒め言葉ばかり出るが、ひねくれたSNSを使うというのはそんなに数はいない。そういう言葉を書いていても、選手の前に行ったら『サインください』と言うのがサポーターだ。愛情の1つ」と話す。

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 一方で、辛口な批評は受け止め方によっては傷つく人もいるのではないか。

 「僕が辛口だと言われるのは、日本人同士では言いにくいから。また、日本のプロスポーツはすべて企業スポーツだ。メディアは企業に世話になっているから、スポーツを評論するのはすごく気を使って、日本はまだアマチュアっぽい。海外に行ったら、プロはものすごく求められる。お金と予算を使っている、お世話になっているということで、やはりちゃんとやらなかったら言われて当たり前だ。

 僕は、サッカーをダメにしようとする意識は全くない。日本はまだまだ予選突破するかしないかというところで、世界的に未熟。もっとよくなってほしい。(サッカー選手の)寿命は短くて、30歳を過ぎたら終わる。そこまでに稼ぎなさい、もっと良くしろ、という親心だ。僕に一番辛口だったのが、親、先生、上司で、要するに言われなくなったら心配しろと。みんながもっと愛情を持って言えば、選手らが活発に成長するんじゃないか。教育と一緒だ」

 パックンは「日本は丁寧な国で、誹謗中傷の基準がめちゃくちゃ低い。アメリカでは『バカ』とか『アホ』はかわいらしいレベルで、プロスポーツの場で面と向かってもっとえげつないことを言っている。それは数百ドルのチケット代を払っているスタジアムのお客さんの特権だと考えられている。現場ではプレーを見て熱く応援していて、いいプレーをしたり勝てば同じトーンで褒めてくれるはずだが、SNSになるとなんだかわからない。1人で書いていて、言われるほうも暗い気持ちで読み取るから、心外の度合いが全く違うと思う」とコメント。

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 カンニング竹山は「セルジオさんがプロの選手に叱咤激励するのは、プロがプロに言っている、現役のプロもリスペクトしているからOKだと思う。他の人も『帰れよあいつ!』とか『なんで入んないんだよ!』とその場で言うのはありだと思うが、SNSで選手に向かって発信するのは問題だと思う」と指摘する。

 セルジオ越後氏は「僕はSNS時代じゃないから、こういう問題がなかった。あれは武器になっていて、プロレスラーの女性が自殺に追い込まれたし、学校で中学生や小学生も書きこまれるなど、生活の一部になった。生の声とSNSの集中攻撃は全然違う。ITに関しては先に開発して、法律が後に来るというところで、問題がいっぱい起きている。SNSそのものをどうコントロールできるかというテーマが一番ふさわしいと思う」と述べた。

 那須氏は「海外の方は生きるか死ぬか、やるかやらないかで全てを判別している一方で、日本の人はできるできない、できない理由を常に探しているようなところで、競技レベルのメンタリティが違う。なので、そこを対比するのは元々違うなと思っている。だからこそ、日本独自のあり方や、スポーツの人気の伝え方を作っていかないといけない。評論家、ジャーナリスト、インフルエンサーと言われる方々が、ライト層に向けて“自分の正解”をよりよいかたちで伝えていかないと、日本サッカーは発展していかないと思っている。人気になる意味でも、“イエス、ノー”というのは絶対的に必要だ。中間的な中途半端なことより、未来に向けての発言というのは重要かなと思う」との考えを示した。(『ABEMA Prime』より)
 

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