渋谷の新たなシンボル「MIYASHITA PARK」からほど近いところにある「美竹公園」。突然、白いフェンスで囲われて封鎖されたのは、25日朝のことだった。当時、公園には4人のホームレスが生活をしていたが、事前通告はなかったという。渋谷区は代わりの住居を用意、3人は移動したが、1人は公園に残ったということだ。
突然の“排除”に支援者たちが猛抗議。公園の周辺は騒然となった。その後、一時的に生活者に限って入ることが認められたが、そもそも美竹公園は炊き出しなど支援活動の場でもあった。
背景にあるのは、渋谷駅周辺の再開発だ。美竹公園の周囲でも工事が始まっており、公園の封鎖は工事を円滑に行うためと、利用者の安全を考えた措置だという。Twitterでは「そもそも公園は生活の場所ではない」「文句を言うなら支援者が家を用意すればいい」「渋谷区の対応は理解できるがもっと丁寧な調整はできなかったのか」「排除は当然だという人は公的支援の冷たさを知らないようだ」など、賛否様々な意見が出ている。
渋谷といえば、12年前も「宮下公園」の再開発にあたって、ホームレスの強制排除をめぐり区と支援団体が激しく対立した。今回も区の対応は適切だったのか。今回の混乱と騒動、渋谷区の対応は適切だったのか。27日の『ABEMA Prime』は議論した。
EXITの兼近大樹は「たぶん普通に生きてる人は、ホームレスの人たちがどうなろうとどうでもいいと思っている。目に映っていないからだ。しかし、支援者の目には映っていて、“私たちがなんとかしたい”と思って活動している。僕もホームレスだった頃があるけれど、支援されて、助けられて生きてきているので、その人たちに矛が向くのは本当に許せない。一方で、ホームレスにもいろいろな人がいて、障害を抱えて本当に支援が必要な人もいれば、個人的な理由で”働きたくない、自由にさせてくれ”という人もいる。失礼だが、そういう人の方が大変だったりもする。切り分けはすごく難しいが、いろんな人がいるということを理解するのがまず第一歩だと思う」と話す。
NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星氏は「今回は行政代執行ではないという点と、本当に最後の手段だったのかは問わなければならない。当日に告知をしたとあったが、これは事前にできなかったのか。福祉側の職員と公園を管理している職員はまた別の部署で、他部署に事例が共有されていないことはよくある話だ。行政の発想として、ホームレスをゼロにしていくのは正しいと思うけれども、支援は白黒つけられない。急に環境が変わることに対してものすごくネガティブな方はいて、我々も引っ越しをするとなると大変な作業だ。今回も3人は施設に入れたということを認めて、丁寧にコミュニケーションを続けることが大事だと思う」との見解を示した。
渋谷区は「当日に決めたので事前告知できなかった」としているが、リディラバ代表の安部敏樹氏は「意図的だ」と指摘する。
「行政がそんなに機動性高く動いたのは見たことがない。何かの書類に関して何週間もかかるような組織において、当日決めたというはまずあり得ないだろう。ホームレスや路上生活者の人たちの暮らしと、行政がそこに介入して排除していくというのは長い歴史がある。その中で、役所に対する不信感がすごくあって、区長が変わっても行政としては一貫して捉えられる。その不信感を排除するまで粘り強くやらないといけないのに、『今日の朝決めたので』とやってしまったことで、この先また10年、20年と続いていくことになる。今回のことは問題を複雑にする、非常によろしくない対応だった」
その上で、「長い時間をかけて関係性を作っている支援団体にいかに理解してもらえるかだ。残っている1人の方が動いてくれる可能性があるとすれば、支援団体の方から『◯◯さん、こういう条件も出ているし、信頼できるところまで私たちも役所と話を詰めたから』と言ってもらうことだ。支援団体の人がめちゃくちゃ怒っている時点で絶対にうまくいかないだろうという話だ」と述べた。
駅や公園などの公共の場所でホームレスが寝転がれないようにしたり、用途以外の使い方ができないようデザインされたものに対して、「排除アート」という言葉が使われる。兼近は「居心地悪く生きている人がめちゃくちゃいる中で、さらに居心地を悪くしてどこに追いやるのか?という話だ。その人たちはより暗い影のほうにどんどん行って、見ないようにできる。それで“きれいになった”と言っているが、絶対に存在していて、より光と影の差が広まっている。そもそも、“邪魔だから居心地を悪くしよう”という発想がもう怖い。排除アートが“すばらしい、アートにもなって”となっているのは、神々の遊びみたいだ」と疑問を呈した。(『ABEMA Prime』より)
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