Twitter上で健康の秘訣を問われたアメリカ・テスラ社CEOのイーロン・マスク氏。彼が挙げたのは「Wegovy」という名前。これは、2021年にアメリカで認可された「肥満症」に対する治療薬で、SNSなどで大きく取り上げられた。
しかし、ブームのあおりを受けているのが、この治療薬と同じ成分を使った「糖尿病治療薬」。アメリカのメディアなどでは、医学的な意味での肥満ではない人が、減量のために糖尿病治療薬の不適切な処方を受けるケースが報じられている。
今月初旬、FDA(=アメリカ食品医薬品局)は、この糖尿病治療薬の在庫がひっ迫していると発表。ヨーロッパやオーストラリアでも供給が不安定になるなど、世界中で需要が増加し、本当に必要な患者に薬が届かなくなることが懸念されている。日本では「肥満症治療薬」が少ないこともあり、海外と同様に糖尿病治療薬の“目的外使用”をするケースが相次いでいるという。
「糖尿病治療薬として承認された薬を用いて、インターネット上で“ダイエット”と広告して自由診療を行っている医療機関が、ネットを見ると数百もある」(日本医師会・今村聡副会長)
今年3月、日本医師会はダイエット目的の患者に糖尿病治療薬を処方している医療機関を問題視する姿勢を示した。
「医薬品は治療が必要で、効果が期待される方に対して投与されるべき。国民の健康を守るべき医師が、治療の目的を外れた使い方をすることは“医の倫理”に反する。必要な医療を提供する支援の手段として有効活用されるべき『オンライン診療』が、エビデンスが不十分な医学的処置の横行に拍車をかけている。厚生労働省だけではなく、ICTに関わる省庁で真剣に受け止めて頂きたい」(同)
“糖尿病治療薬を使用したダイエット”について、レリック医師は「まず、『GLP-1ダイエット』という呼び方はおかしい。これは医薬品だ。インターネットで“頑張らなくても痩せる“と表示しているところもあるが、海外では肥満治療としてGLP-1受容体作動薬が使われた臨床試験では、食事療法や運動療法など頑張りながら使用していた。これさえうてば楽して痩せられるというものではない」
また、インフルエンサーなどがSNSで発信することで流行につながっていることを受け、「サプリのように気軽に使うものではない」と指摘。
「日本では、Wegovyのような肥満の薬は承認されていない早めに承認してほしいと思うが、一方で肥満ではない人が『もうちょっと痩せたい』とか『楽に痩せたい』というために使用するものではない。これは、あくまでも“医薬品”なので、副作用のリスクがあっても、肥満を治療するべき人のためにあるもの。医学的に問題ない人が使うとリスクとメリットのバランスが崩れてしまう。体に大きな影響がある薬なので、遊びやサプリ感覚で使ってほしくない」
(『ABEMAヒルズ』より)
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