
10月30日、プロレスリング・ノア『ABEMA presents 有明凱旋 ーTHE RETURNー PRO-WRESTLING LOVE FOREVER.3~TRIUMPH~』東京・有明アリーナ大会が行われた。
今大会の目玉はタイトルが示す通り、来年2月21日に東京ドームで引退試合を行うことが決定している武藤敬司の引退ロードマッチ。武藤が丸藤正道、稲村愛輝とトリオを結成し、新日本プロレスの棚橋弘至、真壁刀義、本間朋晃と対戦した。

棚橋は新日本の若手時代に武藤の付き人を務め、もともと学生時代は武藤ファン。本間も「武藤全日本」での付き人だ。そんな、かつての愛弟子が待つリングに、武藤は90年代半ばから後半に使用していた『TRIUMPH』から『HOLD OUT』つなぐテーマ曲で入場。『TRIUMPH』といえば、95年10・9東京ドームでの伝説の一戦である髙田延彦戦で使用した曲としてあまりにも有名。そして、その時に観客席にいたのが、学生時代の棚橋弘至だ。
ファンの脳裏にさまざまな思い出が交錯する中、先発は武藤と棚橋でスタート。今大会はマスク着用での声を出しての声援が解禁されたため、のっけから大・武藤コールが巻きおこる。この声援をバックに武藤と棚橋は、まずじっくりとグラウンドの攻防を展開し、棚橋がドラゴンスクリューを先に仕掛ければ、武藤もすぐさま本家ドラゴンスクリューで応戦。その後、武藤はもう一人の愛弟子である本間にもフラッシングエルボー、レッグブリーカー、STFなど、得意のムーブを惜しげもなく披露していく。

勝負の後半、再び武藤と棚橋が相対すると、武藤は低空ドロップキックからドラゴンスクリュー、足4の字固めの必殺フルコース。棚橋がこれをしのいで、ドラゴンスクリューからスリングブレイドを決めるが、武藤はこれ以上の反撃を許さず、丸藤の虎王とシャイニング・ウィザードのサンドイッチ弾を爆発させると、シュミット式バックブリーカーからコーナーに登り、封印した切り札ムーンサルトプレスを狙う。しかし、これは真壁がリング下からチェーンを投げつけて撃墜し、未遂に終わらせた。
最後は、丸藤が本間のこけしロケットをキックで撃ち落とすと、武藤のシャイニングから、丸藤が不知火を完璧に決めて3カウントを奪取し、ノアが新日本に勝利した。

試合終了直後、1・8横浜アリーナでのノアvs新日本のメインと同様に入場花道に座り込んで、棚橋と何やら言葉を交わした武藤。リング上で勝ち名乗りを受けると、名残り惜しむようにベタベタと抱きつこうとする本間を邪険に追い払い、花道を下がると最後はステージ上でプロレスLOVEポーズを決めて締めくくった。
この試合で「武藤敬司」としては年内最終戦を迎えた武藤だが、引退に向かって話題は豊富だ。今大会では、ノアの来年1月1日の日本武道館大会で、グレート・ムタvs SHINSUKE NAKAMURA(中邑真輔)の超ドリームマッチ決定がサプライズ発表された。
さらに試合後のバックステージでは棚橋弘至が、戦前、武藤が「俺を査定して欲しい」と言っていた言葉を受け「(査定の)結果を発表します。合格です! なので、新日本プロレスのビッグマッチにぜひとも武藤さんを招聘したい」と発言。武藤の新日本1・4東京ドーム大会出場の可能性も見えてきた。

また、武藤と棚橋の絡みが軸となったこの日の6人タッグマッチだったが、いちばんインパクトを残したのはノアの稲村愛輝。持ち前のパワー全開で大暴れして、新日本3人を豪快なボディスラムで次々とマットに叩きつけると、3人まとめてフライング・ソーセージで圧殺。さらに棚橋には真後ろに投げるフロントスープレックス、本間にはフィニッシュへとつなぐGEKITOTSUを決め、試合終了後も真壁と乱闘を展開した。
これを受けて試合後、真壁は「稲村ジェーンだか稲村ヶ崎だか知らねえが、あいつ面白ぇじゃねえか。稲村とやらせろ。あいつを新日本に出稽古させるか、俺がこっちに来て叩きのめすか。ノアの責任者、小さい脳で考えろ」と、稲村へ対戦要求。稲村の新日本参戦か、真壁のノア再出撃への流れも生まれた。
武藤引退ロードは、プロレス界全体が爆発する起爆剤になりつつあると言っていいだろう。
写真/プロレスリング・ノア
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