銀行口座への振り込みが主流となっている「給料の受け取り」。それが銀行口座を介さず、決済アプリで直接受け取れるようになる。キャッシュレス社会の鍵となるデジタル給与とは、どのようなものなのか。
10月26日、厚労省の審議会で、労働者側の合意があれば企業が給料を決済アプリへ支払うことを可能にする労働基準法の省令改正案を了承した。来年4月から施行される。
しかし、なぜ今“給与のデジタル支払い”に踏み切ったのだろうか。第一生命経済研究所の柏村祐研究員に聞いた。
「現金を管理・発行するためのコスト。例えば、紙幣を保管したり、ATMに現金を運ぶ時の現金輸送車や警備会社の警備員を必要としたりするが、キャッシュレスならデジタルでできるのでそういう手間がなくなる。こうしたことが社会の生産性を上げると考えられる」
現金管理に必要なコストを削減させ、キャッシュレス決済の利用を拡大させることが狙いだ。さらに、デジタル給与には、企業と労働者の双方にさまざまなメリットがあると言う。
「企業のメリットとしては、それらの決済アプリが認められれば送金手数料が減る。労働者側としては、必要な時に必要な給料をもらえる。今日働いた分は今日(給料を)もらう、1週間ごとにもらう、1年に1回もらうなど」
また、銀行口座の開設が難しい外国人労働者や非正規労働者への給与の支払いがスムーズになるとされている。
しかし、大事なお金がデジタルマネーでやり取りされることに、いささか不安はあるかもしれない。
「キャッシュレスの資金移動事業者の歴史はまだまだ浅いので、銀行のように、万が一破綻した時の保証はどうしてくれるのかという法整備がきちんとしていない。今後、実現させていくうえでは、何かあった時にお客様が預けているものがちゃんと保護される環境をつくっていく必要がある」
解決すべき課題はあるが、日本がさらなるキャッシュレス化を進めるうえで重要な鍵になるとも言われているデジタル給与。金銭のやり取りが決済アプリになることで、「私たちの消費行動が変わっていく」と柏村さんは話す。
「自分の消費(行動)がどのようになっているのか、どうやって改善したらいいのか。決済アプリが、我々の行動履歴や購買履歴から未来を予測してくれるツールにもなる」(『ABEMAヒルズ』より)
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