田端信太郎氏「この会社は『生き返る』『手遅れだ』と判断する人がいない」 “ゾンビ企業”は淘汰されるべきか
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 創業1908年、赤い缶に入った「サクマ式ドロップス」で知られる佐久間製菓が、来年1月に廃業することがわかった。映画『火垂るの墓』にも登場した伝統の味が114年の幕を閉じる。廃業の理由は、新型コロナによる販売減少や原材料価格の高騰に加え、商品への価格転嫁が難しかったことなど。ちなみに、緑の缶の「サクマドロップス」を販売するサクマ製菓は別会社で、今後も発売される。

【映像】近年倒産した歴史ある企業

 惜しまれて廃業する老舗がある一方で、経営を続けていくこと自体に疑問の声が上がる企業がある。「ゾンビ企業」だ。事実上倒産状態にあるにもかかわらず、金融機関や国の支援などで事業を続けている企業のことで、帝国データバンクによるとコロナ禍で増加し、2020年度で16万5000社。実に国内企業の10分の1がゾンビ企業であるとの調査結果がある。また、その多くが新型コロナの支援金で延命されているとの指摘も見られる。

 今年9月までの中間決算で、資源価格の上昇や円安の恩恵を受けた大手商社が相次いで過去最高益を発表する中、ゾンビ企業は日本の経済にどのような影響を与えているのか。そして、生かすべきか、淘汰されるべきか。10日の『ABEMA Prime』で議論した。

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 2020年にアパレルのレナウン、2022年に和菓子店の紀の国屋、2022年に音響機器のオンキヨーなど、歴史ある企業が近年倒産している。帝国データバンク情報統括部長の上西伴浩氏は「倒産に至るまでに借り入れや販売不振などさまざまな問題があったと思う。厳しい言い方をすると、時代の変化になかなかついていけなかった、変革が遅れたのもあるかもしれない」「固定観念というか、勘と経験に依存した運営になってしまうと新しいことに取り組まない。よろしくない守りに入るということは言えるかもしれない」との見方を示す。

 全企業の11.3%がゾンビ企業に該当しているという。「弊社の評価で区切った場合だが、それでも高いと思う。リーマンショック後にドッと増えて、その後減ってきたが、ここでまた増えてきているのはあまりよろしくない状況だ」。

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 「田端大学」塾長の田端信太郎氏は「日本は資本主義の国で、金融は基本的に市場経済で行われるべきだと思っているが、ゾンビ企業に対して公的なお金が何らか手当てされているように見える。純粋な借り手と貸し手による、“焦げついても貸したほうが悪い”“それに見合う金利を取っていたから仕方ない”で済む話ではない。医療に例えれば、生き返る見込みがない人間に対して輸血をしているようなもの。その輸血だって誰かの生き血、つまり税金だ。政治的な問題として民主主義的に考えないといけない」と指摘する。

 上西氏は「バブルがはじけてから特別保証や緊急保証制度があって、何とか繰り回してきて、ゼロゼロ融資が出てきた。どこで線引きするかだが、このゼロゼロ融資だけで40、50兆円とも言われている金額が出て行っている。全てが返せないわけではないが」とした一方で、「そこで止血をしなかったらもっと大変なことになっていた」と述べた。

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 ソンビ企業に対し、Twitter上では「淘汰されるべきものに金使うな」「全部なくせば生産性は上がる」「なくなると日本の貴重な技術ノウハウが失われるのでは」「失業者が増えて生活に困窮する人が増えるよりマシでは」と賛否両論がある。

 では、支援が入ったことで息を吹き返す企業は実際どのくらいあるのか。上西氏は「比率までは出せないが、国の方もいろんな政策を打っている。倒産は破産や民事再生法で、そうではなく私的整理でと、いろんなルールを今変えているところだ。ただ、中小企業は結構粘り強くて、自分たちで知恵と工夫をこらして何とか生き延びる企業はある。先ほどイノベーションという言葉を使ったが、お金をもらってただ留めるだけの人と、投資する人の違いだ。そのあたりの知識がなかったら、金融機関の本業支援などに相談すれば、出口対策の余地はあると思う。経営者は孤独で、“取引先にバレたらまずい”“金融機関に行ったらまずい”と。金融機関とちゃんとコンタクトしている方は、実際に相談している人もいる。経営者の考え方の違いで損得が分かれている」と説明。

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 田端氏は「一番肝なのは、この会社は“生き返る”“手遅れだから放っておこう”という判断を誰がどうやるかだ。それをする人がいなくて、ほとんどの人がどうせ関わるだけ無駄だと思っている」と指摘する。

 上西氏は「おっしゃるとおりで、“助ける・助けない”の線引きを誰がするのかは何も明文化されていない。サービスや商品に違うやり方でやったら収益が上がるような価値があれば、投資もされるだろう。トリアージではないが、何らかのロールモデルをいくつか作って示していけば、頑張る人は頑張るところに来ていると思う」との見方を示した。(『ABEMA Prime』より)

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