将棋の藤井聡太竜王(王位、叡王、王将、棋聖、20)は11月14日、順位戦A級5回戦で広瀬章人八段(35)に93手で勝利した。この結果、リーグ成績は4勝1敗に。A級参戦1期目での名人挑戦、さらには最年少名人獲得の頂にまた一歩前進した。次戦、6回戦では、名人3期の佐藤天彦九段(34)との対局が予定されている。
竜王戦七番勝負で対戦中の両者の顔合わせとなった5回戦。藤井竜王の先手番で始まった本局は、広瀬八段の雁木模様から激しい攻め合いへと進行した。これまでの両者の対戦は10局あるが、雁木の戦型選択は初。竜王戦七番勝負でも角換わりと相掛かりが志向されており、広瀬八段が用意した作戦に注目が集まっていた。
互いに長考を重ねる中で、ペースを握ったのは藤井竜王だった。後手の広瀬八段も角を深く成り込み先手玉をにらみつけると、一手争いの激戦に。簡単にはリード拡大を許さず、必死に反撃の糸口を模索した。しかし、若き王者は着実に後手玉に迫っていく。最後は飛車成から強い踏み込みを見せ、寄せ切ってA級での4勝目を手にした。
中終盤戦の難易度の高いねじり合いを制した藤井竜王は「玉をどう安定させればいいか、難しい将棋だった」と振り返っていた。
この結果で、藤井竜王の通算成績は4勝1敗に。現在5回戦が進行中のA級は全勝者が消滅しているため、先日対局を終えて4勝目を手にしている豊島将之九段(32)に並び、首位で後半戦に向かうことになった。「少しずつ時間を使ってしっかり考えられるようになってきたのかなというところがある。ここまでの5局を振り返って、今後内容を良くしていけるように頑張りたい」と意気込みを語った。次戦、6回戦では名人3連覇を達成した佐藤天彦九段(34)と対戦。直近の対局では黒星を喫しており、藤井竜王にとっては息つく暇もなく厳しい戦いが続く。
一方、敗れた広瀬八段は「基本ずっと苦しいと思っていた」と振り返り、肩を落とした。通算成績は3勝2敗に。前半戦を振り返り、「今期は妥当な成績。前半戦は自分の良いところも悪いところも出ている将棋が多かった。後半戦は少しでも星が伸ばせるようにやっていきたい」と次戦以降に視線を向けた。
藤井竜王がA級参戦1期目で名人挑戦、さらに来春に行われる名人戦七番勝負で渡辺明名人(棋王、38)から奪取した場合、谷川浩司十七世名人(60)が保持する21歳2カ月の最年少名人の大記録を更新することになる。しかし、「まだ折り返しなので挑戦は意識していない。一局一局を大事にして頑張りたいと思います」と冷静に話した。
(ABEMA/将棋チャンネルより)