ロシアによるウクライナの侵攻開始から9カ月が経とうとしている。多くの犠牲者を出しながら戦いを続ける現状をロシア人はどう見ているのだろうか。
ウクライナ南部へルソン州の州都・ヘルソン市をロシア軍から奪還して以降、初めて訪問したゼレンスキー大統領。出迎えた市民からは、熱烈な歓迎を受けた。
今年9月、一方的に「併合」を宣言していたロシア。ペスコフ報道官は、ゼレンスキー大統領がヘルソン市に入ったことを受けて「コメントはしない」としたうえで、ヘルソン市について「ロシアの領土だ」と主張している。
侵攻と奪還を繰り返し、長引く戦い――。アメリカ軍のミリー統合参謀本部議長は、ロシア軍兵士の死傷者は10万人を超えるとの見方を示し、「ウクライナ軍も同程度の死傷者が出ているだろう」と述べたとロイター通信などは伝えている。
多数の犠牲者を出している現状をロシア国民はどうみているのか。日本在住のロシア人・あしやさんに聞いた。
「プロパガンダが色々な説を作って情報があふれかえっているから、普通の人は何が正しいのか判断できない。だから、『それは自分は知らない』と放っておく。真実は誰にもわからないから、一般人は政治に興味を持たない」(日本在住のロシア人・あしやさん、以下同)
あしやさんは「プーチン政権に批判的な西側諸国やロシアの独立系メディア、ロシアの目線で伝える国営メディアの両方を信用できない状況が続いてきた」と話す。ただ、状況は少しずつ変わってきているという。
「大きな変わり目になったのは、動員が始まったこと。今までは軍事侵攻や軍事作戦がテレビで放送されても、どこか遠いところにあって自分には全く無関係の話だと思っていた人が多かった。しかし、いまは多くの男性に召集令状が来て戦争に連れていかれる事態になったので、女性たちは最近声を上げている。他人ごとではなくなったので『戦争は早く終わるべき』だと思う人は増えたし、実際に何が起きているか(を知って)目が覚めた人もたくさんいる。動員があってから海外に出国する人もいるので、9月21日以降は意識が変わった」
戦地からの情報が直接届くことで、何が起きているのかを知るロシア国民。ただ、デモなどの行動を起こしても、拘束されてしまうという現実がある。
「『ロシアを変えるのはロシア人』だといわれるが、それは一般のロシア人ではなく、プーチン大統領に近いエリート。権力や影響力を持っている人たちになる。そういう人たちにはロシアを変える力があるが、武器もお金も何もない一般的なロシア人の場合、それが何百人、何千人になったとしてもできることは少ない」
あしやさんは、争いを止められるかもしれない人々も“結局はプーチン大統領の脇を固める存在”だと指摘する。80%近い支持率※が、揺らぐことのないプーチン大統領の権力を示している。
「戦争に連れて行かれないくらいの60歳ぐらいの男性が(プーチン大統領を支持する人が)多い。判断力がない人や考える努力をしたくない人も、とりあえず今の政府に、これが正しい考え方だと定められているから、“プーチンを支持していれば大丈夫”みたいな感じもある」
経済制裁で自動車産業や観光業が打撃を受け、徴兵で働き手を失ったことで「経済活動や医療・教育などに影響が出始めている」と語るあしやさん。混迷する母国ロシアの将来について、こう話す。
「情報発信は相変わらず大事。多くのロシア人も考え方が変わり、それが国が変わることにもつながると思っている。ただ、いま多くのロシア人は出国しているので、ロシアの未来はどうなるのか……考える限り、あまりいいことはないような気がする」
(『ABEMAヒルズ』より)
※出典:ロシア民間世論調査機関「レバダセンター」
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