“厳しい規格”がストレスになり離脱、一方で「必要だ」という農家も JAのそもそも、メリット・デメリットとは?
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 東京・大田市場にある「みためとあじはちがう店」が取り組んでいる、規格外野菜の販売。味は変わらないのに、小さな傷や大きさ・形が一定水準に達していないことで流通から外されてしまう規格外野菜は、そのまま廃棄されることもあり、近年問題視されている。

【映像】「規格が厳しい」の声も 規格外野菜とは

 原因の1つと言われているのが、JA(農業協同組合)が定める規格。JAは全国に約580の組合があり、運搬の効率化や野菜の品質を保つため、地域ごとにそれぞれ規格を厳しく定めている。その結果、規格外野菜は直売所で売られたり加工食品になるほか、出荷されずに農家で廃棄せざるを得ないケースが生まれるのだ。

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 JAの規格に対して、埼玉県で長ねぎやブロッコリーなどを栽培する農家の市川秋男さんは「農協出荷でネギを作ろうと思うと、白い部分が何センチ、葉っぱは3枚、色が変わるところが何センチじゃないとダメなど、消費者がわからないくらい細かいことがある。そこまで決める必要があるのかな? という疑問は感じる。これから80歳くらいまでやることを考えた時に、規格に合ったものを作り続ける自信がない」と話す。市川さんは今年の春、厳しい規格にストレスを感じ、約30年所属したJAを離れた。

 また、就農歴13年のナス農家、宮崎武士さんは「私たちも作業量が(増えて)、費用がかかってくるが、その分の価格転嫁は現状なかなかできていない。そこが少しデメリットになっていると感じている」と話す。

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 JAに出荷した野菜の値段は市場が決めており、自分たちで決めることができない。その結果、農業用資材などの費用が値上がりすると、儲けが出にくいという。

 Twitterでは「ちゃんと農家のこと考えてる?」「農家が苦しんでいるのに何もしてないじゃん」「JAって必要?」など、厳しい声も。知っているようで知らないJAの役割、そもそもどんな組織なのか、14日の『ABEMA Prime』で取り上げた。

 野菜の規格について、宮崎県のJAに15年間勤めていた高津佐和宏氏は「3つのポイントがある」と話す。

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 「まず出荷規格が厳しいということだが、JAが一方的に決めているわけではない。キュウリならキュウリの生産者、ナスならナスの生産者が集まる『部会』というものがあって、JAとその生産者部会、卸売市場、場合によってはスーパーにも聞いて出荷規格を決めている。2点目は、出荷規格があることで買い手の信頼につながる。スーパーのバイヤーとしても規格がそろった産地のものが欲しいし、そちらに高い値段をつけたいと思う。3つ目、『出荷規格が厳しい』と言う農家さんの心理だが、そう思う農家さんもいれば、『出荷規格はみんなで決めてるんだから、作れないほうが悪いんじゃないか』と思っている農家さんもいるのではないか。本当に厳しいのであれば部会のみんなで話して、市場にも意見を聞いてもらって変えていくことは可能だと思う」

 前述のナス農家・宮崎さんは、収穫全量の約30%をJAに出荷し、規格に通らないものは1割以下だという。「自己研鑽という意味で栽培技術を向上させているし、私の中ではすごく厳しいというわけではない。例えば、人為的ミスで取り忘れてしまった、大きくなりすぎたものが残っている」。

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 JAと付き合う上でのメリットとしては、「良かったことは実はたくさんある。私たちが収穫をして、食するようなことができないレベルの野菜はダメだが、そうではないものは基本的に全量出荷できる。あと、代金決済の不安がないというのは大きい」と説明。

 一方で、改善してほしい点については、「市場出荷だとある程度値段がバラつく、需要と供給バランスで単価が多く変動するリスクがある。そこを『一定額この価格は維持する』『一定額で買い取りする』と、一部ではやっていることだが、それを始められないかなというのは協議しているところ」だという。

 JAの数・組合員数は年々減少している。1989年に3898あった組合の数は、2022年には585に。組合員数は、2005年の499万7797人から、2020年には409万9000人となっている。

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 要因について高津佐氏は、農家自体が減少していることをあげた上で、「農業協同組合法というもので、JAは原則的に委託販売しかできない。つまり、手数料でしか商売をしてはいけない。農家さんから100円で買ってきたものを時には150円で売るし、時には80円で売るというのが普通の商売だが、その販売のリスクを負えない仕組みだ。戦後の需要と供給のバランスで、食料が不足していた時代では機能して、全国にいろいろな野菜が届けられたが、今農畜産物は余っているので、時代の流れに沿っていないのだろう」と分析。

 続けて、「インターネットとスマートフォンが普及したことによって、農家も様々な情報を取れるようになり、自分で販売や営業ができるようになった。固定電話しかなかった時は、農作業をしながら営業するのは不可能だが、それができるようになったことで農家の価値観や売り方が多様化した。それに対して、『自分たちの意義はどこにあるんだろう』というのは、JA自身が一番模索しているのではないか」とも述べた。

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 そんな中、宮崎さんは「農家にとってJAは必要だ」と断言した。

 「JAで肥料や農薬を買うこともあるし、自分たちの1円の利益にもならない営農指導をJAはしてくれる。栽培の相談をしたり、わざわざハウスに来て話をしてくれる指導員さんが一定数いる。そういう方と話すことで、地域のコミュニティもできる。単純な生産物の販売以外のところが大きいということで、私は必要だと思っている」

(『ABEMA Prime』より)

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