将棋の藤井聡太王将(竜王、王位、叡王、棋聖、20)への挑戦者を決めるALSOK杯王将戦挑戦者決定リーグ最終一斉対局が11月22日に行われ、羽生善治九段(52)が豊島将之九段(32)に勝利し、挑戦権を獲得した。羽生九段は今期リーグ戦を無敗の6連勝で駆け抜けた。タイトル獲得通算100期に向けて若き“絶対王者”に挑戦と、夢カードが実現することになった。
【動画】羽生善治九段、通算1500勝を手繰り寄せた決断の一手
将棋ファン待望、夢のタイトル戦が実現する。羽生九段の今期の王将リーグで、初戦の服部慎一郎五段(23)から、糸谷哲郎八段(34)、近藤誠也七段(26)、渡辺明名人(棋王、38)、永瀬拓矢王座(30)と現役タイトルホルダーを含む実力者を次々に撃破。挑戦者争いは4勝1敗から追いかける豊島九段との2人に絞られていたが、最終直接対決を制し6戦全勝。全勝達成は第63期の自身を含む歴代9人目と、圧巻の勝ちっぷりで過酷なリーグ戦を駆け抜けた。この結果、初防衛を狙う藤井王将への挑戦者は、羽生九段に決定した。
羽生九段のタイトル戦登場は、2020年度に100期獲得をかけて挑んだ第33期竜王戦七番勝負以来2期ぶり。王将戦七番勝負は7期ぶりの出場で、14期ぶりの王将位奪還を目指す。向かうは20歳の若き絶対王者・藤井王将だ。ともに中学生でプロデビューを果たし、羽生九段が打ち立てた数々の最年少記録を、藤井王将が塗り替えてきた。そんな両者がついにタイトル戦で激突とあり、ファンにとっては夢の瞬間が迫っている。
7期ぶりの王将挑戦を決めた羽生九段は「大変なリーグ戦の中で結果が出せて非常に嬉しい。(全勝は)全然想定していなかったが、結果的には良い形でリーグを終えることができて良かった」と話した。さらに、藤井王将との七番勝負については「対戦してみないとわからないところも多々あると思う。シリーズが始まっていく中で体感していくのでは。自分自身の棋力を充実させて臨むということに尽きると思う」とコメントした。
王将戦は、1996年2月13・14日に行われた第45期七番勝負第4局で谷川浩司王将(当時)を破り、史上初の全七冠独占の快挙を達成した節目の棋戦。さらに、第56期では規定の通算10期到達で、大山康晴永世王将に次ぐ史上2人目の永世称号も獲得している。
2022年度は20勝9敗、勝率0.6896と好調をキープしている羽生九段は、現在進行中の棋王戦挑戦者決定トーナメントも決勝戦まで進出。佐藤天彦九段(34)に敗れ、敗者復活戦に回ったが、こちらも勝ち上がり挑戦権を獲得、さらに渡辺棋王からタイトル奪還を果たした場合は、タイトル100期、さらには101期と期待は膨らむばかりだ。
藤井王将と羽生九段による世紀の一戦、第72期王将戦七番勝負は、来年1月の開幕を予定している。
◆羽生善治(はぶ・よしはる) 1970年9月27日、埼玉県所沢市出身。1982年に奨励会入りし、1985年12月に四段に昇段。加藤一二三、谷川浩司に次ぐ史上3人目の中学生プロ棋士に。1989年に初タイトルを獲得し、1996年の王将戦七番勝負で史上初の「七冠独占」を達成。2017年には7つのタイトルで永世称号の資格を得る「永世七冠」に。タイトル獲得は竜王7期、名人9期、王位18期、王座24期、棋王13期、王将12期、棋聖16期の合計99期。師匠は故・二上達也九段。
(写真提供:日本将棋連盟)