「俺の中に“良い”武藤敬司と“悪い”武藤敬司がいてさ…」武藤敬司、ラストランに向けた意気込みと葛藤
【映像】武藤敬司、ラストラン。心境告白 »

来年2月21日に東京ドームで開催される武藤敬司引退試合まで、残り100日を切った。かつて自身が「ゴールのないマラソン」と表現したプロレス人生のゴールが見えてきた中、いま武藤敬司はどんな思いでいるのか。ラストランに向けた意気込みを聞いた。(聞き手・文/堀江ガンツ)

【映像】武藤敬司、ラストラン。心境告白

ーー武藤さん、来年2月21日東京ドームでの引退試合まで、明日で100日なんだそうです(このインタビューは11月12日に収録)。

武藤 へえー、100日か。でも、早くその日が来てほしいっていう気持ちもあったりするんだよ。俺の中に「良い武藤敬司」と「悪い武藤敬司」がいてさ。「もう引退も決めたんだから練習もそんなにやらなくていいじゃん」ってそそのかす悪い武藤敬司もいるんだよ。その一方で「引退試合までベストを尽くして頑張れよ!」って言う武藤敬司もいてさ。いつも闘ってるんだよ。

――あと100日しかないと思うと、名残惜しくはないですか?

武藤 そういう気持ちもあるけど、万全じゃないから引退を決めてるわけであって。(引退の要因となった)股関節の状況もちょっとずつ悪くなっているような気がするからね。だから、なんとか2月21日の引退試合までは、体がもってほしいというのが正直なところだよ。あと100日間、自分との闘いだよな。

 引退試合当日、自分が思い描いた動きができるかどうかっていうのが俺の不安材料であるし。もしかしたら、試合中にホントに動けなくなる可能性もあるかもしれないからな。あと、大きな敵はコロナだよ。また陽性者数が増えてきているし、引退時代のときの俺がコロナで出られなくなったら洒落にならねえだろ。

――本人不在の引退試合というわけにはいきませんもんね(笑)。

武藤 こればっかりは代わりがいねえもんな(笑)。それとプロレスって絶対にひとりじゃできないんだよ。俺がコロナにならなくても対戦相手がコロナになったり、ケガをしたらそのカードはできないからね。そういう意味で興行は水ものなんだけど、俺としてはとにかくあと100日、ベストを尽くすだけだよ。

 ただ難しいのは、ヒザや股関節のケガを抱えている分、追い込んだ練習が意外とやりきれないんだよ。過度なトレーニングは故障につながる可能性もあるから、バランスを考えなきゃいけない。

――2・21東京ドームまで、引退ロードでビッグマッチが続きますから、試合での故障というリスクもありますしね。

武藤 そうだね。グレート・ムタとSHINSUKEの試合なんかはシングルだから、ある意味で“逃げ場”がないからね。

――その1・1日本武道館で行われるグレート・ムタvs SHINSUKE NAKAMURA(中邑真輔)は、ファンの間で大きな反響がありましたけど、武藤さんはどう感じていますか?

武藤 まあ、シチュエーション的には反響が来るようなカードだなとは思うけど、いろいろ交渉するにあたって二転三転した部分もあったんで、まずは正式に決まって良かったなと。当初はSHINSUKEと最後の試合っていうのも考えてたこともあったんだよ。

――2・21東京ドームの引退試合で対戦するプランもあったんですね。

武藤 うん。そう考えて交渉したんだけどその時はダメで、再度粘り強く交渉した結果、元日になったわけでね。ファンはある意味で、アメリカで活躍したレスラーの新旧の闘いという見方をするかもしれないけど、ムタは時も場所も関係ないからな。

 もし引退試合で対戦が決まっていたら武藤vs SHINSUKEになっていたと思うけど、1月1日のムタとSHINSUKEっていうのは、武藤とはまた違った面白い見方もできるわけであってね。ある意味、武藤敬司はSHINSUKEとやったことがあるけど、ムタはSHINSUKEとやっていない中で、さらにワールドワイドという意味合いも強くなるからね。今、ノアは海外にも打って出て行くときだから、そういう部分でも面白いマッチメイクだなと思ったりしますよ。

――武藤さんは、やはり自分が引退ロードをやることによってノアに貢献したいっていう思いも強いですか?

武藤 そうですね。ただ貢献するもなにも、先ほどのムタとSHINSUKEが反響があるっていう中でおそらく武道館もいい形になるとは思うんだよ。だけど、俺が辞めたあともノアを支えていかなきゃいけないのは、いまバリバリに頑張ってる選手たちだからな。もしかしたら、武道館はムタとSHINSUKEの試合を観に来るファンのほうが多いかもしれないけど、その人たちのハートを掴めるかどうかは、彼らの実力、努力次第ですよ。

――10・30有明アリーナでは、拳王選手から清宮海斗選手に向けて「グレート・ムタとSHINSUKE NAKAMURAに話題を取られてどうするんだよ」という発言がありましたけど、それぐらいの気概がなきゃダメですかね。

武藤 まあ、俺たちのほうに噛み付くのもいいけど、コイツらはコイツらで、どれだけリピーターを増やせるかだからな。1月1日の武道館だけじゃなく、1月22日の横浜アリーナも格好がつくと思うし。最後の2月21日の東京ドームも、おそらく普段のノアよりも多くの集客が望めるわけであって。もしかしたらノアを初めて観る人もいるわけだから、その人たちのハートを掴まなきゃいけないのは、今頑張ってる奴らの力だから。そこは期待していますよ。

――1・1日本武道館にはSHINSUKE NAKAMURA、1・22横浜アリーナにはスティングと、立て続けに超大物の参戦が決定したことで、2・21東京ドームでの引退試合のカードもさらに期待が高まっています。

武藤 そんな期待しないほうがいいよ。限られた畑のなかでのマッチメイクだからね(笑)。

――でも、最大限のものを用意したいという考えは当然あるんじゃないですか?

武藤 何をもって最大限かはわかんないじゃん。武道館でSHINSUKE、横浜アリーナでスティングが決まったことに対しても、ノアのファンから見たら「えっ、じゃあノアの選手はどうなってるの?」と思うかもしれないし。プロレスっていうのは十人十色の見方があるわけで、万人が望むカードというのはなかなか難しいからね。

――武藤さん自身は、どんな引退試合にしたいと思っていますか?

武藤 わかんねえな。先輩たちが引退されていくのを俺も見送ったことはあるけど、他人の引退試合ってあまり記憶に残ってねえんだよ。だから引退試合っていうのは、それだけ難しさもあるのかなとも思ったり。長州さんが(98年1月4日に)東京ドームで引退試合やったのも俺の中の記憶はなくなってるし、猪木さんの引退試合ですらそんなに記憶に残ってないからね。その前に(96年1・4東京ドームで)ベイダーとやって殺されそうになったイメージはあるけど(笑)。

――それだけに自分の引退試合はファンの記憶に残るものにしたいという思いはありますか?

武藤 残ってほしいけど、そこは狙いすぎないほうがいいと思うんだよ。狙うときっといやらしく見えたりすると思うんだよね。最後のドームなんかは、ただでさえ最初から寂しさを感じながら試合を観るわけだからさ。もしかしたら笑いながら手を振って、「バイバーイ!」っていうぐらいのほうがいいのかもしれないし。俺は猪木さんみたいに『道』の詩とか読めねえからさ。あんなに長い文章は暗記できねえよ(笑)。

ーー武藤さんは引退試合の記者会見で「PPVをやりたい」とおっしゃってましたけど、「プロレスの試合をPPVで観る」という新しい文化を後進のために残していきたいという思いもありますか?

武藤 というか、今年猪木さんが亡くなられて、来年2月で猪木さんの弟子である俺も引退することで、猪木さんたちが築き上げてきたプロレスというものがたぶん終わるんじゃないかと思うんだよ。猪木さんやジャイアント馬場さんが築き上げてきたプロレスっていうのは、民放(地上波テレビ放送)と一緒に発展したプロレスだけど、いまは民放も徐々に力が弱まってきてネットの時代だからさ。逆にどんな戦略だってできそうな気がするんだよ。PPVなんて俺が最初にアメリカに行ったときから、向こうのビッグマッチではすでにそれが主流だったから。下手すりゃ日本のプロレスはアメリカに30年遅れてるってことだからな。

 でも、今のノアはABEMAやWRESTLE UNIVERSEっていうツールがあり、さらにネット配信は国の壁もなくなっていくわけだから、いろんな可能性が広がっていくよ。武尊那須川天心なんてPPVで50万件以上の人たちが視聴してるんだよ? それはプロレスだって狙おうと思ったら狙える数字だとは思いますよ。そういう意味でも、ABEMAで無料放送される1・1日本武道館を盛り上げて、それを2・21東京ドームにつなげていきたいよな。

——では最後に、引退試合まで残り100日の意気込みを聞かせてください。

武藤 身体はしんどいし、トレーニングに行くのも後ろ髪を引かれるような思いがあるけど、あと100日っていう期限があれば頑張れるからさ。だから残り100日、追い込みすぎてケガをしないように気をつけながら突っ走っていきますよ! 

【映像】武藤敬司、ラストラン。心境告白
【映像】武藤敬司、ラストラン。心境告白
グレート・ムタ、WWE・SHINSUKE NAKAMURAと“元日”決戦へ! 「言葉は要らねえな。これは、キセキだ」1・1ノア日本武道館大会は“熱狂”必至
グレート・ムタ、WWE・SHINSUKE NAKAMURAと“元日”決戦へ! 「言葉は要らねえな。これは、キセキだ」1・1ノア日本武道館大会は“熱狂”必至
【映像】武藤敬司、ラストラン。心境告白