日本を含め、世界に衝撃を与えた大手暗号資産取引所「FTXトレーディング」の経営破綻。今も多くの利用者が資産を引き出せずにいる。
「資産凍結から2週間弱だが、針のむしろ状態」と話すのは、破綻の被害者となったダニエルさん(仮名)。損害はなんと4億円以上。300万円を元手に株式や不動産で資産を増やし、2015年に仮想通貨の世界へ。当初の投資額は2000円~3000円程度だったという。
しかし、「当然落ちたりもするが、ちゃんと上がっていくので、『やっぱりこれは将来があるんだな』という見方をしていた。要は壮大な社会実験なので。(最終的に資産を)オールインした」。その運用の場として選んだのがFTXだった。
今月11日、「仮想通貨引退します。もう何も手元にありません」とTwitterに投稿したダニエルさん。なぜリスクが高いと言われる仮想通貨、しかも1つの取引所に全てを注ぎ込んでしまったのか。22日の『ABEMA Prime』で本人に話を聞いた。
現在の心境について、ダニエルさんは次のように語る。
「ひとことで言って無念、絶望。サラリーマンとの兼業なので、どちらも余裕を持ってやるというスタイルで来たのが、片翼が落ちてしまった。直近のLUNAやUSTのショック、数ある暴落といったものを、仮想通貨に入ってから6年間避けてきた。扱っているのもビットコインやイーサリアム、その他いろんなもので遊んでいたので、仮想通貨自体は保守的にやっていたが、最後にやってしまった。『何が悪かったのか』と自問自答するような感じだ」
ダニエルさんは個人的なプロジェクトを立ち上げるため、バラバラに散っていた資金を夏前から徐々にFTXに移動。10月に集め終え、来年から再度分散させていく予定だったという。
「今となっては痛恨のミス。日本で言えばbitFlyerやCoincheck、海外で言うとBINANCE、Coinbase、Crypto.comなどいろいろあるが、FTXに集めようと思った1つの理由はプロダクトの良さだ。取引所として非常に優れていた。それから、経営者が非常にいいと思った」
11月2日にFTXの関連会社の資産管理を問題視する報道が出ると、7日に仮想通貨を預ける際の利率が事前予告なしに下落。ダニエルさんは違和感を覚えたものの、情報を待とうと静観した。翌8日、ライバル会社がFTX発行の仮想通貨売却を発表したが、サム・バンクマンフリード元CEOの「資金は潤沢。出金に無制限に応じる」という発言を信用。しかし、11日にFTXが破産を申請した。
「嫌な予感はしたが、サムの言葉を信用して手を打たなかった。8日にFTXから9割以上の資金が流出して、『せっかく集めてきたのに、どうしようかな』とためらっていたら、夜に出金停止になった。そこが最後のタイミング。アジア時間でやっていれば引き出せたというのが、すごく悔いの残るところだ」
では、仮想通貨の未来をどのように考えているのか。再び投資は行っていくのか。
「最初に言ったようにこれは壮大な社会実験で、いろいろなサービスがものすごいスピードで行われている。今回の詐欺に近いようなことも、過去の金融の歴史で言えば起こってきたことだ。見抜けなかったのはあるが、今の金融規制では違法なものが仮想通貨の中では実験が行われるのは非常に面白い。仮想通貨自体も2018年に9割方のサービスがなくなっている。今回もそのパターンだと思うが、生き残るものが生き残って、規制が強くなるというのは悪いことではない。適当な規制があってこそベースが広がると思うので、残った1割が一定の役割を果たしていくと思う。
正直、これ(仮想通貨)だけやっていたら死んでいる。破産後の数日間は吐き気と脂汗が止まらなかった。常にベトベトで、胸が痛い状態。ただ、僕のポリシーとしてサラリーマンと兼業でやってきて、前者はちゃんと遮断していたので助かった。今後はまずそこをベースに、もう一度300万円まで元手を作りあげて、また入口を探そうかなという方針。入口がよければ投資はうまくいくと思っていて、その入口を探すには健全な投資マインドが必要。心が整ったと思ったら入口を探す、整わなかったらやらない。その基本に立ち返ってやりたい」
(『ABEMA Prime』より)
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