目標は「世界大会優勝」「Jリーガーの輩出」知的障がい者サッカー、“新しい景色”への挑戦
【映像】“もうひとつのW杯” 知的障がい者の挑戦
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 知的障がいを持つ人たちが主役となって戦う“もう一つのワールドカップ”がある。世界の頂きと、その先にある新しい景色を目指し活動する選手たちを取材した。

【映像】「全国障がい者スポーツ大会」優勝チームのプレー

 11月20日、都内のとあるグラウンドで行われていたのは社会人サッカーの試合。白いユニホームを着た選手は全員が“知的障がい者”で構成されたチームの選手たちだ。

 今年、栃木県で行われた「全国障がい者スポーツ大会」で、東京選抜として全国優勝を果たした「王子ジャッキーズ」。普段は北区の社会人リーグで健常者のチームと対戦している。この日は惜しくも敗れたものの、互角に渡りあう姿を見せていた。

「全員知的障がいを持つチームだが、攻守においてサボる人は1人もいない。全員攻撃全員守備』をコンセプトにやっている。試合中も仲間と声をかけ合ったり、ダメなところはダメ、良いところは良いと言い合えるのがサッカーの良いところだなと思う」(王子ジャッキーズ・渡邉賢剛選手)

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 FIFAワールドカップが大きな盛り上がりを見せる中、彼らのような知的障がい者のサッカー世界大会も存在する。それが「Virtusサッカー世界選手権」。1994年に初開催された知的障がい者のサッカー世界大会で、“もう一つのワールドカップ”とも呼ばれている。ルールは普通のサッカーと全く同じ。日本は2002年から大会に参加し、これまで5大会に出場。最高でベスト4という成績をおさめている。

 過去3大会に渡って代表監督を務め、現在は日本知的障がい者サッカー連盟の技術委員長を務める小澤通晴氏。目標は「もちろん世界大会での優勝だ」と話す。

「レベルは確実に上がっている。選手らは本当に一生懸命ひたむきにやるので、そういう姿を見てもらえると『サッカーの原点はここなんだな』と」

 小澤氏が教員になった35年ほど前には、日本に知的障がい者のサッカーチームはほとんどなかったという。その後、全国各地にチームが次々と誕生し、現在は約6000人がプレーしている。

「自分で考えて行動する、プレーでパフォーマンスを発揮するというのは、普通の社会でもなかなか無い。そういったところは鍛えられると思う」

 現在は未来を担う選手や指導者の育成など、日本のレベル底上げを目指し精力的に活動を行っている。

「知的障がい者のサッカーに関わるような指導者も作っていかなければいけないので、指導者養成もやっている。あとは高校生年代とかトレセン活動。代表を目指すような次の世代を育てていく」

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 横浜市を拠点に活動を行う「横浜F・マリノスフトゥーロ」。日韓ワールドカップをきっかけに、2004年に発足したJリーグ初の知的障がい者サッカーチームだ。現在は13歳から53歳まで、約100人の選手が在籍している。

 横浜F・マリノスフトゥーロに所属する渡邉陽選手(19)は「どうしてもサッカーがしたい」と、中学生のときにこのチームの門を叩いた。

「中学校のとき、あまり学校に行っていなかったけど、『サッカーは、どうしてもやりたい』とこのチームに入ることにした。楽しいのは褒められたり、皆が自分に話しかけてくれたとき」

 練習中、積極的に選手に声を送っているのは小山良隆さん。発足以来、約18年に渡ってこのチームに携わってきた。

「長く続ける時には、自分がいやすい場所、自分ができる場所が非常に重要になってくると思う。なかなか環境に恵まれない人たちが、そういう場所がある所で活動していく。選択肢が広がっていくことが大切だなと思う」

 サッカーは同じ場面が2度とないとも言われるスポーツ。記憶力や咄嗟の判断において苦労することも少なくはない。コーチとしてチームを支える長田菜美子さんは、指導の際に工夫していることがあるという。

「言語だけではなく、視覚的に見て分かりやすく伝えるようにしている。彼らはイメージすることが少し苦手だったりするので、“具体的に短く”を心がけている」

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 人によって性格も障がいの度合いも様々、時には難しさを痛感することもあるそうだ。しかし、団体競技であるサッカーを通じて彼らの成長を見届けるのが「なによりの楽しみだ」と長田コーチは語る。

「1人ではできなくても、“誰かとうまくできた”という経験をもとに成功体験を積めると、自信になったり楽しく思える。これから生きていく上でもプラスになるのではないか」

 認知度の向上や周囲の理解、さらには財政面など課題も多くあるという「知的障がい者サッカー」。しかし、これらを乗り越えた先には目標とする“新しい景色”があるという。

「将来的には、このチームから『Jリーガー』が生まれる、そんなレベルに持っていけるような活動をこれからも続けていきたい」

(『ABEMAヒルズ』より)

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