将棋の第35期竜王戦七番勝負第5局が11月25・26日の両日、福岡県福津市の「宮地嶽神社」で行われ、挑戦者の広瀬章人八段（35）が初防衛を目指す藤井聡太竜王（王位、叡王、王将、棋聖、20）に133手で勝利。開幕局以来のシリーズ2勝目を挙げた。広瀬八段の笑顔の理由はもう一つ。「実は、明日は子どもの誕生日なんです」。愛息へ、最高の“プレゼント”を持ち帰った。
シリーズは絶対王者・藤井竜王との七番勝負。前回の竜王獲得時にはまだ生まれていなかった愛息のために、4期ぶりの復位を掲げての戦いとなった。開幕局で快勝を飾るも、第2局から3連敗。カド番に追い込まれた上、期間中に行われた順位戦A級でも黒星を喫し、苦境に立たされた状況で第5局を迎えた。
先手番で迎えた本局は、鷹揚な広瀬八段が「悔しい敗戦」と明らかに肩を落とした第3局・富士宮対局と同型の「相掛かり」を選択。「予定の作戦。途中までは比較的思った通りの展開だった」と話し、自身の手番で封じ手を迎えた。
しかし、2日目再開後に激戦に突入すると、藤井竜王が飛車取りに角を打ち込む強手からABEMAの「SHOGI AI」は後手側へ。「1日目の段階からちょっとミスをしたかもしれない。（後手に）桂馬を飛ばせてしまったので、思ったよりもこちらの駒が前に行かなくて。角を手放して戦果を挙げないといけなかった。苦しくてもおかしくないかなと思っていました」。
一貫して攻勢に出た広瀬八段だったが、藤井竜王の冷静な対応に苦慮。終局後には、「途中、苦しい時間を意識していた時間も長かった」と素直に心情を吐露した。それでも「辛抱強く指して、良いタイミングで反撃することができた」とじわじわと押し返し、待望の2勝目を獲得。「感想戦をやった結果、こちらの王様に迫る変化があった。対局中も怖かったですが、やっぱりぎりぎりだった。藤井竜王が踏み込めなかったというところが幸いしたんだと思います」と振り返り、安堵の表情を浮かべた。
シリーズ成績は2勝3敗と、依然としてカド番に変わりはない。「なんとか第5局を制して、次のステージに進むことができた。当初の目標ではフルセットを目標にしていたので、次の第6局目が後手番ということもあり、勝負だなと思います」。1週間後の12月2、3日に鹿児島県指宿市で行われる第6局を見据え、「本局は何とか先手番を死守した形。第6局目まで時間はないですが、出来る限りのことをして頑張りたいなと思っています」と意気込みを語った。
広瀬八段の笑顔の理由はもう一つ。「実は、明日子どもの誕生日なんです」。これにはABEMAの視聴者もビックリ。27日に2歳の誕生日を迎える広瀬八段の愛息へ、「お誕生日めでとう！」のコメントが押し寄せた。「それまで（誕生日まで）に、シリーズが終わってなくてよかったなと思います」との広瀬調も、その喜びは隠しきれない。ファンからは、「パパかっこよすぎるよ」「最高のプレゼント」「えええ何それ最高やん」「良かったねーー」「泣いちゃうよー」「きっと観てますよ〜パパの勇姿」「感動しちゃった」「いいお父さん」「いい話だ、子供のために勝ったパパ」「順位戦で心折れなかったのは流石よな」「いい誕生日プレゼントだね」「早く帰らないと」「パパすげー」「良かったなあ」と多くの声が寄せられていた。
最後に記者からは画面越しのメッセージを求められたが、「（息子が）見ているかわからないので、メッセージはやめておきます（笑）」。“パパ、勝ったよ”――。何よりものプレゼントを手に、優しくて強いパパは家路を急ぐ。
（ABEMA／将棋チャンネルより）
