今月1日、タレントの手島優が交際中の一般男性との結婚を発表した。幸せたっぷりの手書きの文書で報告したものの、まさかの大事な「夫婦」の漢字が間違っていたことで、Twitterでは「そこ間違う!?」「手島さんらしい」など反響が集まった。
【映像】「夫婦」の字が…反響が集まった手島優の直筆“漢字”(コメント画像あり)
しかし、このようなミスは他人事ではない。先日、文化庁の調査でもパソコンやスマートフォンの普及によって約9割の人が「漢字を書く力が衰えている」と回答。今まさに日本人の“漢字離れ”が加速しているのだ。
昨年、京大の研究グループも「漢字の手書きの習得が、高度な言語能力の発達に関係している」と発表。デジタルデバイスの利用に偏りすぎると「言語能力の低下につながる恐れがある」と指摘した。
そんな風潮に、ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏も自身のYouTube動画で「漢字を書く能力とか手書きで文字を書く能力を今後の人生で全く使わないで生きていくことは可能だ」と発言。「僕は今、漢字がほぼ書けない。漢字を書く時に必ずググる。ググってみて『たしかにこうだったわ』みたいな感じで何の問題もなく生活できている」と述べている。
今後ますます発展するデジタル社会において、漢字を書く力はどこまで必要なのか。
日本語研究第一人者で言語学者の金田一秀穂氏(杏林大学教授)は「漢字は日本語の中からなくすことはできない。漢字はなるべく書けた方がいい」とコメント。
「手書きの文字はその人の気配のようなものが伝わる。恋人が書いた手紙は、手書きであることによって恋人の気配が伝わる。手書きは大切だ」
本当に漢字は書けた方がいいのか。ニュース番組「ABEMA Prime」では、漢字が超苦手なひろゆき氏と共に考えた。
書くことの重要性について、金田一氏は「書けなくても読めればいい」と話す。
「書くと覚えやすい。見ているだけだと、なかなか覚えられない。日本は漢字がないと分析的に思考できないので、なくすわけにいかない。漢字がないと細かに考えることができない。どうしても必要だ。ただ、最終的に『書けなくても読めればいい』はある。文科省は『読めて書けないといけない』というが、それはやりすぎだ。漢字を習うと必ず書き取りをやらされる。それはやめておいた方がいい。憂鬱(ゆううつ)の『鬱』の字なんて、書けないだろう。『薔薇(ばら)』だって書けない。でも読める。葡萄(ぶどう)もだ。読めればいい。あとは変換時に、その字が間違っているかどうか、気づくことができればいい」
ひろゆき氏は「小学生が書くのは、覚えやすいからだ」と指摘。「学習している小学生が勉強の中で書いて、テストがあるのは全然いいと思う」とした上で「ただ、大人でも『書かないといけない』という変な風潮はいらない。こういう文化の話で、必ず擁護派の人が、漢字の高度な能力だとか“こういうときに役に立つ”と言う。明らかに間違っている。なぜか『文化を守ることだ』と、おかしなことを言っている」と話す。
教育事業を行う「カルペ・ディエム」代表の西岡壱誠氏は「その人の言いたいことが分かるから、漢字は大切だ」と主張。
「やっぱり漢字は読解力に繋がると思う。例えば『恣意的』という言葉がある。恣意的の『恣』は“ほしいまま”という意味。つまり、わがままなわけだ。恣意的という言葉が使われていたら『書いている人はきっとマイナスなことを表現したいんだな』と分かる」
書き順についてはどう考えたらいいのだろうか。文部省の手引きでは「厳密に正しい書き順は決まっていない」としている。
金田一氏は「僕は文科省のえらい先生に聞いたことがある。『凸凹(おうとつ)はどう書くのか?』と聞いたら『分からない』と言っていた。とめ・はね・はらいも、手書きじゃないなら、もうあまり必要ない」と話す。
また、入学試験では厳密に書き順を見られるが、金田一氏は「とめ・はね・はらいでバツがつくような学校はやめた方がいい」とバッサリ。「そういうことで子供の能力を測るのは記憶の変なところを測っている気がする。入試試験ではもっと違うことを測ってほしい」と訴えた。
ひろゆき氏が「漢字を書く授業をやるよりは書道をみんなやった方がいい。漢字はデザイン性だ」と話すと、金田一氏は「書道はユニバーサルで『かっこいい』と思える。初めて見る人でも、きれいに書かれている漢字は『かっこいい』と思ってしまう」とコメント。
平石アナウンサーが「漢字は結局どこまで書ければいいのだろうか」と聞くと、金田一氏は「細かく分析的に言うなら、漢字は必要だ」と回答。
「もし漢字がなくなってしまったら、かなりの日本人は頭が悪くなる。表現力が減る。それは確かだ。ただ、それは手書きで必要なのかと言われると、今、本当にすばらしい機械がいっぱいあるから、手書きはなくてもいいのではないか。一応、小中学校で学習する漢字は書けた方がいい。相手が手書きを要求するかどうかだ。今は減っていると思うが『履歴書は手書きで書かなくちゃいけない』と思っているおじさんのためには、手書きで書かなくちゃいけない」
(「ABEMA Prime」より)
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