27日、中国・上海で発生した、数千人規模の大規模な抗議デモ。警察と激しくもみあうデモの参加者。中には拘束される人の姿も……。
こうした抗議運動のきっかけとなったのは、24日に新疆ウイグル自治区で起きた集合住宅の火災。10人が死亡した原因に「過度なコロナ対策があったのではないか?」とゼロコロナ政策に対する批判が上がったのだ。
そして、その炎は全国各地に飛び火し、抗議に賛同する人々が街に溢れた。27日、北京市内では1000人近くが集まるデモが発生。参加者は「言論の自由がない」ことへの抗議を示す白い紙を掲げた。
他にも、習近平国家主席の出身大学でも抗議デモが行われた。そして、世界にも広がりを見せている。
27日、イギリス・ロンドンの中国大使館前には、現地に住む中国人らが集まり、中国政府に抗議。花束を供え、ロウソクを灯し火事で亡くなった人を追悼するような光景もみられた。そして日本でも。
「習近平、退陣しろ!!」(中国人の声)
一連の動きについて、アメリカ・ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は「我々は皆さんが期待するように、事態を注意深く見守っています。我々は平和的な抗議の権利を支持し続けています」と述べた。
一方、中国当局の規制は厳しさを増している。道路脇に止められた警察車両、歩道に集まる警察官。この日北京で、抗議デモは行われなかったようだ。また規制の強化は、SNS上にも及んだ。
「中国のSNSで検索してみても、北京上海、全国で起こったデモの様子というのは全くヒットしません」
1日の感染者が3万人を超えるなど、いまだ、新型コロナ収束の兆しが見えない中国。“ゼロコロナ”に国内からの反発が強まる中、中国外務省は「我々は、中国共産党の指導があり、中国人民全体の協力と支持があれば、中国の新型コロナとの闘いは必ず成功すると信じている」と話している。
このニュースを受け、ニュース番組『ABEMAヒルズ』は中国事情に詳しい評論家の石平氏に中国の現状について話を聞いた。
――現在のデモの状況について
「全国各地のデモの規模はバラバラで、何十人集まった場合もあれば、数百人も集まった場合もある。しかし、この広がりがすごく大きい。約80カ所の大学の中でも、抗議活動があったという情報もある」
――現在、ゼロコロナ政策の批判だけではなく、習近平氏への批判も相次いでいるが、これは異例のことなのか?
「1949年に共産党政権できてから、国民が公の場で、共産党の最高指導者の退陣を求めたのは、実は初めてのこと。天安門事件の時も、そういうことなかった」
――このことについて中国政府としては、危機感をどれだけ感じているのか?
「習近平国家主席にとって一大事であって、国民は公然と彼の退陣(を要求している)。しかも、習近平氏だけの退陣ではなくて、共産党そのものの。しかし、昨日までの数日間、政権の反応がすごく鈍かった。警察が本格的な鎮圧にはまだ乗り出してない。習近平氏が、『これでやれ』と指示しなければ何も動かない。政府の幹部たちが様子見して、指示を待っている。でも、おそらく今日か明日か、最高指導部は決断を出すだろうと思う」
――天安門事件でも起こらなかったことが起きている中国。習近平氏も次の手を打つのが難しい状況なのか。
「いわゆるゼロコロナ政策は、実は中国人が誰でも知っているように習近平氏の政策だ。ゼロコロナ政策は、彼の看板政策になっている。しかし、問題はこのゼロコロナ政策。ほぼ3年ぐらい行われてきて、やっぱり異常だ。例えば、私のふるさとの成都は、1度ロックダウンされた。ロックダウン前の状況が新規感染者数が150人ぐらい出たところで、2000万人の街をロックダウンするのは、誰から見ても異常で極端。しかも、ロックダウンされてしまうと、病人が病院にすら行くことできなくなって、そのままの家で亡くなってしまうケースもある」
「ゼロコロナ政策に対する国民の不満という意味では、もう限界は超えているところで、そこで、新疆ウイグル自治区の高層マンションの火事が発生して、マンションが封鎖されたから、誰も逃げられない。そのまま多くの人々が焼死してしまったという。人々の憤りが当然爆発して、ゼロコロナ政策に向かうと同時に、習近平氏にも向いてしまう。さらに、習近平氏は10月の党大会で、10年務めたら引退するという今までの共産党のルールを破って無理やり続投している」
――習近平氏としては、ゼロコロナ政策を変える可能性はあるか。
「本来、習近平政権も党大会が終わってから、政策を変えていくという流れになっている。しかし、問題は今回国民から反対されていて、反対されて引っ込めると、独裁者のメンツが成り立たないから、一旦この事態を収拾して落ち着いてから、徐々に変えていくことをする」
――もし、政策の転換が来るとしたら、いつ頃になるのか。
「今から冬に入って、また感染拡大がおそらく避けられない。だから、来年の春ぐらいまで待って、中国で全人代が開かれるまではこの政策を継続して、全人代が終わってから、春を待って、解除していくというような考えもおそらくあるかな」
――来年の春までとなると残り5カ月近くあるが、国民感情としてはどうだろうか。
「国民感情に従えば、今すぐ解除しなければならない。だから、もうここまで来たら国民感情を力で抑えつけて、いずれいい時期を見計らって、(政策を)転換するという話になる」
(『ABEMAヒルズ』より)
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