この記事の写真をみる(3枚)

【映像】「滉、泣くなよ、早いぞ!」試合後のロッカールームに響いたキャプテン吉田麻也の叱咤激励

■前半を耐えて、後半に勝負をかける

【FIFA ワールドカップ カタール 2022・グループE】日本2-1スペイン(日本時間12月2日/ハリファ インターナショナル スタジアム)

「よく我慢した」

 2-1で逆転勝利したスペイン戦。森保一監督はハーフタイムで選手たちにねぎらいの言葉をかけた。とはいえ、前半はずっと耐え続けていたわけではない。何度かハイプレスを発動して、カウンターを仕掛けようともしていた。

 その意味では前半を”死んだふり”と表現するのは少々、大袈裟かもしれない。

 キャプテンの吉田麻也も「もともと負けていたらハメに行くというプランはあった」と語るように、同点で前半を終えていたら、もう少し勝負をかけるタイミングを後ろにしていた可能性もある。

 スペイン戦は前半からの5バックで構える形から入った。前半を耐えて、後半に勝負をかけるーー。ドイツ戦の勝利をつかんだゲームプランが共通認識だった。1トップで先発した前田大然は前半を振り返る。

「前半は前から行くというより、ブロックを引いて、(スペインのパス回しの中心となる)ブスケツ選手を背後でしっかり隠して、起点をつくられないようにというのをチームとして意識していました」

 右ウイングバックの伊東純也は「本当は失点しない方が良かったんですけど、1失点に抑えて後半に臨めたから後半逆転できたかなと思います」と振り返る。

拡大する

■同点ゴールにつながった連動プレス

 森保監督は後半からドイツ戦で逆転勝利の立役者となった堂安律三笘薫を送り込んだ。守備面でも前半よりアグレッシブに行くことを強調した。

「後半からは自分と(左ウイングバックの)薫がサイドバックまでプレッシャーをかけていこうという話だった」(伊東)

 同点ゴールにつながったボール奪取はファーストプレスからだ。前田のGKウナイ・シモンに対するチェイシングから、堂安律、さらに伊東と連動してボールを奪い切り、堂安のスーパーミドルにつながった。

 攻撃の第一歩となったのはスペインの左サイドバックのバデルが浮き球をトラップしたところへ、伊東が一気に寄せてマイボールにしたことだ。

「律がプレッシャーをかけた時に自分も連動して行こうと。相手のサイドバックが僕の方を見てなかったですし、トラップした瞬間にとれると感じました。後ろは(板倉)滉に任せて、連動してもらうという形でやってました」

 前からプレッシャーをかけることは、それだけ後ろにリスクが生じることでもある。長い時間続けるのが難しいことは、森保監督も百も承知の上で、後半立ち上がりに”日本の時間”を作りにいったのだろう。

 素晴らしかったのは、そこで訪れた2つのチャンスを決めきったことだ。2点目は三笘が折り返しがラインを割ったか破らないか、新しく導入されたセンサーによるVARチェックが行われたが、日本の怒涛のラッシュはスペインに少なからず動揺を与えたようだ。

 もし、この時点で逆転できなければ、ハイプレスの時間がもう少し長くなったかもしれない。しかし、早い時間でリードしたことで、その後はしっかりと構えて、左の三笘も5バックの左アウトサイドで同じく途中出場のフェラン・トーレスやワイドに流れてくるマルコ・アセンシオに粘り強く対応した。

 その後、相手の交代策や攻勢に応じて、冨安健洋を右サイド、遠藤航を中盤の底に加えて、スペインの攻撃を跳ね返すプランも効果的だった。

拡大する

■クロアチア攻略の鍵となる新オプション

 ラウンド16で当たるクロアチアはより柔軟で、抜け目ない相手であるため、同じプランで行くとは限らない。そして負けたら終わりのトーナメントで、前半の失点がより重くのしかかってくる可能性がある。

「クロアチアも僕らのことを分析してくるはず。よりいい準備をして、分析をして、オプション1、オプション2、もしくはオプション3まで持っとかないといけないんじゃないか」

 キャプテンの吉田が語るように、戦い方のベースは持ちながらも、選手起用も含めて、グループステージでは見せていないものを加えていけるかが、ベスト8への鍵になるかもしれない。

文・河治良幸

この記事の画像一覧
田中碧、VARからの決勝弾 女性サポーターの懸命な祈りに「震えが止まらない」共感の声続々
この記事の写真をみる(3枚)