将棋の藤井聡太竜王(王位、叡王、王将、棋聖、20)が12月2・3日の両日、鹿児島県指宿市の「指宿白水館」で行われた第35期竜王戦七番勝負第6局で挑戦者の広瀬章人八段(35)に113手で勝利し、タイトル初防衛に成功した。4勝2敗でシリーズを終えたが、対局後に行われた記者会見では「未知の局面への対応力足りていない」と課題を口にする場面も。また、来年1月に開幕する王将戦七番勝負では、羽生善治九段(52)とタイトル戦で初対戦することが決まっており、「非常に楽しみ」と語った。会見の内容は以下の通り。
――初防衛の感想は
昨年竜王獲得して初めての防衛戦。今期を振り返ると、途中苦しかった将棋が多かったですし、大変な戦いでしたがその中で防衛という結果を出せて嬉しく思います。
――シリーズで上手くいった点と課題について
今シリーズは広瀬八段に序盤から工夫をされる将棋が多く、それに対してなかなか良い指し方が出来ないことが多かった。未知の局面に対する対応力はまだまだ足りていないのかなと感じました。ただ、8時間という長い持ち時間の中で、中終盤を含めてしっかり持ち時間を使って考えることはできたのは良かったと思っています。
――年明けからは羽生九段を挑戦者に迎えた王将戦七番勝負など、大きな対局が続く
1月からは王将戦七番勝負が始まりますし、その他にも重要な対局が続く。今回のシリーズを振り返りながら、コンディションをしっかり整えて今後の対局に臨めたらと思います。
――ワールドカップ期間中。サッカーと将棋の共通点はあると思いますか?
いままで共通点を考えたことはないですが、サッカーは選手が11人、将棋の駒は20枚という条件は同じなのかなと思う。決められた中でいかに効率を上げていくか、将棋で言えば駒の使い方になりますが、そういうところは似ているところがあるかもしれません。
――サッカー日本代表の躍進について
結果はニュースを見て知りました。グループリーグでスペインという強い相手に競り勝って決勝トーナメントに進出したということで、本当に素晴らしいことだと思います。試合に向けて練習を重ねて、緻密に作戦を練ってきたからこその結果なのかなと思います。
――番勝負の前後で広瀬八段に変化は感じましたか?
今回のシリーズでは、広瀬八段に序盤であまり最近では指されていない形を指されました。第2局はかなり珍しい形だったと思うんですけど、掘り下げられてさらに一歩踏み込んだ工夫をされていたという印象を強く受けました。それに対して、第2、3局でははっきり対応を失敗して苦しくしてしまったところがあるので、広瀬八段の踏み込んだ工夫に対して、同じくらいしっかり踏み込んで考えないといけないのかなという意識は持っていました。
――羽生九段の最近の印象について
1月からの王将戦は羽生九段との対戦ということで、自分としてはタイトル戦の番勝負という舞台で対戦できることを非常に楽しみにしています。最近の羽生九段の将棋を見ていても、1局ごとにテーマを持って臨まれていて、その中で工夫をされている印象で、非常充実されているのかなと感じてます。
――第6局封じ手開封後の一手で、飛車を取らせて角を打つという変化について構想はどのように準備したのでしょうか。
封じ手は一番有力な手なのかなと思っていて、それに対してどうするかと考えていました。本譜は飛車を逃げると銀か香車の変化でしたが、香車を選んだ場合、角を攻めるとこちらに千日手になってしまうような変化もあり、あまり上手くいっていないのかなと持っていました。封じ手の一手に対して横に逃げるのも有力だったみたいですが、そのあたりの比較をもっと掘り下げて考えなければいけなかったのかなと思います。
――師匠の杉本昌隆八段(54)へプレゼントの要望は?
師匠からは自分が七段の頃に和服の冬物と夏物を頂いて、今でもタイトル戦の時には着ています。師匠にはお世話になってばかりなので、何かプレゼントを頂くというより、こちらの方から何か返していかないといけないのかなと思っています。
――ファンへメッセージ
今日の将棋も中盤から終盤にかけて激しい変化が多く、判断の難しい局面が続いたんですけど、途中から踏み込んで行ってなんとか攻めをつなげることが出来たのかなと思います。苦しい将棋も多く大変なシリーズでしたが、結果が出せて嬉しく思っていますし、課題も多く感じたので今後に生かしていきたいなと思っています。
(ABEMA/将棋チャンネルより)