神奈川県小田原市に隣接する足柄上郡大井町。人口約1万7000人の町が、ある事態に陥っている。
町議会で欠員が出たことによる補欠選挙が行われる予定が、6日の締め切り日になっても立候補者が現れず、選挙自体がお流れに。大井町選挙管理委員会は「少なくとも平成以降では前例がない」。町議会の任期は2024年の9月までで、あと2年間欠員の状態が続く可能性がある。
地方議員のなり手不足――。国会でも喫緊の課題になっており、衆議院総務委員会は6日、超党派で地方議員の兼業に対する規制緩和を含めた地方自治法改正案を本会議に提出することを決めた。
今、地方議会で何が起こっているのか。7日の『ABEMA Prime』で議論した。
前東京都議で選挙ドットコム編集長の鈴木邦和氏は「日本の地方選挙は毎年900くらいあるが、毎年1件ほど“立候補者なし”というケースはある。珍しいけれども、ないわけではない。逆に立候補者がいても無投票になってしまう選挙はもっと多く、そういう意味でなり手不足は深刻だと思っている」と指摘。
サラリーマンをしながら佐渡市議(2期目)を務める広瀬大海氏は「今回は補欠選挙ということだが、2年前の本選挙では若い方が何名か当選されている。議会が若くなると、年配の方は出づらいという感じもする」との見方を示す。
広瀬氏によると、人口5~10万人の地方議会の中で、佐渡市は報酬が一番低いという。「議員は社会保険がないので、それ一本だと会社で働いていた時よりも可処分所得が少なくなる。話を聞くとやはり生活は厳しそうで、ほとんどの方が兼業されていると思う」。
これに対しパックンは、「議員の数を半分に減らして、報酬を倍にすればいいのではないか。議会制度ができた時と今は全く違って、交通手段に情報収集手段、連絡の取り方も効率的にいろんなことができるようになっている。昔は街を歩いてピンポンしてみんなの声を聞いていたところを、今はオンラインでアンケートがとれる。時代に合わせた効率のいい制度に変えるという提案はあってもいいのではないか」と投げかける。
広瀬氏は「議員定数の話はちょうど議会でしているところ。佐渡市は3つの委員会があるが、議員21人を3つで割ると7人、議長が委員会から外れるので6人の委員会もある。いろいろ予算や法律、条例といったものが出てくるので、しっかり勉強しないと良し悪しが判断できない。議員が少なくなればなるほど知識の数が少なくなり、良いものがなかなかできないということをすごく感じている。大学の専門家の方からは、1委員会に7、8人いるときちんとした議論ができるのではないか、というデータも出ている」と答えた。
通信制高校ルークス代表の斎木陽平氏は、「僕も選挙に出た経験がある。大学時代は地方自治をテーマに勉強していたが、なり手不足はやはり言われていた。日本の被選挙権は25歳以上、知事は30歳以上だが、これを一律18歳くらいにまで引き下げるのが重要ではないか。ドイツは18歳まで引き下げていて、21歳の大学生が市議会議員になった例がある。もう少し政治に門戸を開いていって、多様な人たちが立候補できるように変えていく議論を前に進めていかなくてはいけないと思う」との考えを述べる。
鈴木氏は「非常に良いと思う。あと大きいのは、地方議員の仕事が多すぎること。政策提案や委員会の出席だけではなくて、地域を回らないといけない。政治家が駅に立ってマイクを握っているのは、実は議会での政策提案の仕事にはつながっていない。しかし、有権者の方は“頑張っているな”と思うので、そういうところに投票してしまうし、政治家も時間を割かなければならない。結局、それで土日も地元活動をしている。このような働き方では、多様な人材が入ってこない」とした。
また、「広瀬さんのスタイルはすごくいいなと思う」と兼業を肯定した上で、「地方議員に求めている役割をもう少し減らしてあげないと、とても兼業はできないと思う。地元にずっと張り付いて顔を見せる、プラス議会もやるというようなスーパーマンだととても兼業はできない。そこをもう少し“議員の仕事はここまででいいんじゃないか”と有権者側が認識してあげると、地方議員も働きやすくなる」と訴えた。
斎木氏はさらに、「広瀬さんのように志高くいろいろな活動をされている議員も多い一方、居眠りをしていたり、年齢を重ねてあまり活動をしていない人たちもかなりいるわけだ。そういう中で、『議員報酬を増やしてくれ』と言われると、有権者としても理解しにくいところがある。地方議会の中で起きていることに私たちは関心を持たないといけないが、忙しくてなかなか時間を割けていないのが現状だ」と指摘する。
鈴木氏は「すごく本質的な話だ。私が知る限り、多くの地方議員は真面目に働いているし、頑張っている。ただ、ニュースになるのは不祥事を起こしたり、居眠りをしたり、いろいろな発言をされた方。そういう方々と真面目に頑張っている人たちの区別が、外から見ているとつかないのが問題だ。選挙の時も同じことが言えて、有権者側の選挙の判断基準や、そもそも地方議会の活動についてもメスを入れていくということをしていかないと変えられないと思う」と述べた。(『ABEMA Prime』より)
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