人気プロ格闘家・那須川天心選手や、武尊(たける)選手の「サイン入りポスター」を偽造し、オークションで販売したとして、キックボクサーの「ぱんちゃん璃奈」こと岡本璃奈容疑者(28)が詐欺容疑で逮捕された。
岡本容疑者は2019年のデビュー以来、13連勝で「無敗の女王」と呼ばれている。今年4月、練習中に靱帯(じんたい)断裂となり、復帰に向けてリハビリやトレーニングに励んでいた。そんな中で6月、9万9900円をモバイル決済サービスで落札者に送金させ、だまし取った疑いが持たれている。調べに対し、岡本容疑者は「サインは自分で書いた。他にもやった」などと話している。
格闘ストリーミングマガジン『BUDO-RA』編集長で、武術家の山田英司氏は、キックボクシングだけで生活できる人は、日本に10人もいないだろうと指摘する。観客を動員できないと収益が得られず、3カ月ごとにリングに上がるチャンピオンクラスの人気選手でも、30万円稼げたらいい方だという。
「(岡本容疑者は)実力がある。伸び代もあり、今後も強くなる素材だったが、もったいない」(山田氏)
現役ムエタイ選手の野沢靖尚氏は、1万円のチケットを売っても、選手に入るのは「いいところで3割くらい」。団体によっては1割程度しか還元されず、そうなると身入りは1000円となってしまうと語る。
「激しい試合をしなければいけないし、食事やトレーニングにもお金がかかるため、非常に割りの悪い仕事だ」(野沢氏)
一方、このところサイン市場は活況だ。直筆サイン入りグッズ専門商社「フェーマス サイン&ポスターズ」の藤塚信二社長によると、コロナ禍の影響でファンとの接触を避ける傾向があり、希少性が高まった結果、価格は倍以上に跳ね上がっているという。とはいえ、ファンサービスでサインをすることが多いスポーツ選手は、全体的に見て高い方ではなく、野球の大谷翔平選手、フィギュアスケートの羽生結弦選手らの例外を除いて、価格の跳ね上がりは一瞬で、落ち着くのも早いそうだ。
直筆サイン入りグッズの相場を見ると、バスケットボール・八村塁選手のユニフォームが9万2400円(以下、税込)、ゴルフ・タイガーウッズ選手の雑誌が17万6000円、大谷選手の右手用グローブが66万円、アンダーシャツが77万円といった具合になっている。
市場には偽物のサインも紛れているが、筆跡だけで見抜くのはプロでも難しい。直筆サインの真正証明書などを発行する筆跡鑑定会社・シードスターズの松本昭憲代表は、8割が偽物で、本物は2割程度だと指摘する。
「毎日被害者が出ているくらい、市場に偽サインがまん延している。証明書が付いていない『掘り出し物』があるのも事実だが、それに伴うリスクも大きい。例えば大谷翔平選手のサインボールを検索すると、3000円〜1万円の廉価で購入できるものがごまんと出てくるが、メジャーリーグの公式ホログラム付きのものは12万円ほどで取引されているため、もちろん手を出すべきでない」(松本氏)
フリマサイトで「球場で直接いただきました」といった説明文を見ると、つい手を出したくなってしまうが、信頼できる証明書が付かないサインは安易に購入しないことが重要だと、松本氏は注意を促している。
(『ABEMA的ニュースショー』より)
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