「外せば負け」の成功率は「決めれば勝ち」の半分以下に “PKは運”論争、統計学・哲学・武術・元日本代表GKが分析
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 FIFA ワールドカップ カタール 2022、日本代表はPK戦でクロアチアに敗れ、初のベスト8進出を逃した。また、他の試合でもPKでの決着が続き、「PK論争」が盛り上がっている。

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 キッカーとキーパーの1対1となるPKだが、どちらの選手が有利なのか。そもそも「運」なのか「実力」なのか——。こうした疑問を解決すべく、統計学や哲学、武術など、さまざまな分野の専門家に見解を聞いた。

 統計学者で江戸川大学客員教授の鳥越規央氏は、「キーパーよりもキッカーが有利」だと指摘する。キッカーの平均速度が時速120キロだと、キックしてからゴールに届くまで、わずか0.25秒。ボールを見てからの判断では、遅くなってしまう。

「どちらに飛ぶかは57%(でキーパーの予想が的中)なのに、実際に止められたのが22%とのデータもある。ワールドカップでのPKは32回行われて、成功率は約7割と言われている」(鳥越氏)

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 最も成功率が高いのは、先攻では3人目、後攻では1人目。なお32回中、先攻が16勝、後攻が16勝のため、どちらが有利とは言えない現状だという。また「決めれば勝ち」での成功率は95.24%、「外せば負け」だと42.86%。キッカーが左に蹴る確率を4割、右を6割にすると、最適解になるというデータもあり、「エリア別で見ると、一番蹴って成功率が高いのが右上」だと説明する。

 哲学者で津田塾大学教授の萱野稔人氏は、PKは「運」の要素が本試合より強いとしながらも、哲学の観点では「運」と言っている限りは勝てないとの見方を示す。

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「中世の哲学は、科学技術も発達していなかったため、いろいろな事を『神の意思表明』と解釈した。近代になると、運よりも人間の力で世界を動かしていこう、という機運が生まれてくる。(近代哲学の祖とされる)デカルトが『森の中で迷ったら、偶然にまかせてうろちょろ歩いては駄目だ。とにかく、この方向だと決めたら、その方向を迷わず歩け』と言っている。PKに関しても『運』ではなく経験や、そこから作られる度胸を生かすチームの戦略があってこそだ」(萱野氏)

 格闘ストリーミングマガジン『BUDO-RA』編集長で、中国武術・合気道の道場を経営する山田英司氏は、武術目線から「日本人は緊張しい」で、リラックスが苦手だと分析する。武術ではよく、頭で考えず、予測をしない「無心」が極意とされるが、それはPK戦にも通じるという。

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「(相手と対面して)怖い、100%避けたいと思う人は、だいたい動きが大きくなって、裏をとられてしまう。恐怖心をなくそうとか、リラックスしようと思うと、人間はもっとリラックスできない。だからこそ予測しない方が、確率は高まる」(山田氏)

 では、実際のサッカー選手は、どう考えているのか。元日本代表ゴールキーパーの山岸範宏氏は、「運」というよりも、心理面とキックのテクニックが重要だと指摘する。山岸氏自身は、センターラインからゴールに向けて走ってくる、もしくは歩いてくる選手の足取りから、動きを考えていたという。

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「走ってくる選手は『早くこの場をやり過ごしたい』『キツいことは早く済ませたい』と言う思いが、どこかしらにある。キッカーの助走の角度や距離、スピードも分析しながら、最終決断するのは蹴られたとき。わからないときは、野生の勘が働くときもある」(山岸氏)

(『ABEMA的ニュースショー』より)

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