2021年10月に就任した岸田総理。あれから1年が過ぎ、ニュース番組『ABEMAヒルズ』では2022年の“岸田政権”について振り返った。
政権発足後、急拡大したオミクロン株への対応。そして経済・外交保障などの課題を新年のあいさつで挙げた岸田総理。2月には、ウクライナへの軍事侵攻に踏み切ったロシアに対し、日本政府は経済制裁を強化。一方、ウクライナに対しては避難民の支援や、自衛隊の防弾チョッキなどの物資を輸送した。
そして7月には、物価高対策や外交安全保障対策などが焦点となった参院選を前に、街頭演説中に起きた安倍元総理の銃撃事件。選挙では自民党が大勝し、単独で改選議席の過半数となる63議席を確保するも、岸田政権への厳しい逆風が続くことに……。
憲政史上最長の在任期間や、内政や外交での大きな実績を理由に安倍元総理の国葬を開催することを表明。経緯や根拠が不透明であるとの批判が相次ぎ世論を二分した。
9月には、日米の金利差拡大を背景に円安が進み、1ドル=145円台に。急速な円安に歯止めをかけるため、政府は24年ぶりとなるドル売り円買いの為替介入に踏み切った。
そして、安倍元総理を銃撃した山上徹也容疑者の供述によって注目されることとなった、旧統一教会と政治家とのつながり。旧統一教会の関連団体が開催するイベントへの参加や、選挙応援など、自民党議員の関係が次々と明らかになった。
山際大臣の辞任後、岸田内閣では、葉梨法務大臣が「死刑のハンコを押すときだけニュースになる地味な役職」などと発言し辞任。寺田総務大臣が政治とカネを巡る問題が相次いで報道され辞任するなど、1カ月で3人の閣僚が辞任する異例の事態となった。岸田政権に対する野党の追及が強まる中、国会では旧統一教会からの被害者救済を目的とした新たな法案が成立した。
これを受けて、公共政策に詳しい東京工業大学准教授の社会学者・西田亮介氏が『岸田総理の通信簿2022』と題し、この1年の取り組みを評価した。
■ロシアによるウクライナ侵攻への対応
「2月に起きたロシアによる軍事侵攻が起きてから、国際社会はロシアに対して、制裁を課した。その流れのなかで、日本も国際社会に足並みを揃えている。地理的には離れているとか、ロシアとのエネルギー取引の関係があるとか、なかなか難しい判断を迫られることを考えると比較的評価できるのではないか」
■安倍元総理襲撃~国葬
「事件対応でいうと可もなく不可もなくだが、問題は国葬儀。岸田政権は全体的に判断が遅いと言われている。ところが、これまで国葬儀を行ったのは吉田茂元総理に対して一度行っただけというなかで、当時から賛否含めいろいろな議論があったにも関わらず、たった1週間で決めてしまった。1週間で決めたのはよかったが、その後の対応においても国内世論が分断してしまった。静かな環境で故人を弔うという役割を果たすこともできず、国葬儀が外交上の意義があるのではと言われていたが、今のところその成果も明らかになっていない」
■為替介入と物価高対策
「為替介入自体が良かったのかというと、短い効果のなかで、その間に何か措置ができたわけではないのであまり評価はできない。それに対して、世間一般で物価高対策の評判は良くないと考えているが、これは生活者目線ではかなり評価できる。なぜかというと、物価高は世界的な出来事で、欧州やアメリカに目を向けてみると、消費者物価指数は10%ほど前年同月比で上がっているが、日本は3%ほどと欧米の3分の1程度。生活に影響は出ているが、これでも生活者目線に立つなら物価高政策は意外と成果を上げているのが実情」
■被害者救済法成立
「これは旧統一教会の被害に遭われた方を救済することと、反社会的活動を行なっている団体に対していっそうの抑止を講じていくことが求められているなかでの新しい法律。また信仰の自由の尊重などとのバランスが必要でなかなか難しい法律だが、5日程度の審議の期間で形にしてしまったというところがある。これは30年ぶりの異例な対応ではある」
最後に、西田氏が今年の岸田総理の総合評価として「当初の主張はどこへ?このままでは卒業間近」と述べ、次のように説明した。
「岸田政権はウクライナ問題や安倍元総理銃撃事件を始め、とても予想してなかった事項に見舞われ、難しい判断と舵取りを迫られた。しかし、元々、自民党の総裁選に出てきた時には中間層の復権というようなことを主張していたが、最近の増税論を含めてどこかに飛んでいってしまっている。このままだとあまり良い成果をあげられないまま総理を“卒業”してしまうことになるのではないか」
(『ABEMAヒルズ』より)
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