これが師弟戦のだいご味か。8組の師弟により“最強の師弟”を決める超早指し戦「ABEMA師弟トーナメント2022」の予選Aリーグ2位決定1回戦、チーム鈴木とチーム豊川が12月17日に放送された。負けたら敗退のプレッシャーからか、指し手に勢いがなく敗戦を喫した渡辺和史五段（28）。すると師匠の豊川孝弘七段（55）から「魂込めて勢いのある手を指せ！」とゲキが飛んだ。いつも朗らかな豊川七段が見せた鬼師匠の顔に、視聴者はビックリ。愛ある“喝”に、ファンからは「お父さんみたい」「いい師匠」とコメントが殺到した。
第1局目は師匠の豊川七段が、チーム鈴木の梶浦宏孝七段（27）に最終盤で逆転勝利。予選突破に向けて好スタートを切った。続く第2局は渡辺五段が登場。師匠の先勝を活かすべく必勝を誓ったが、経験豊富な鈴木大介九段（48）の四間飛車に完敗を喫した。終局後、渡辺五段は「途中から勝ち目の薄い将棋になってしまった。（鈴木九段に）勢いよく指されて、やはり強敵だなと痛感した」とコメント。これまでの予選リーグでいまだ初日が出ず、足取り重く師匠の待つ作戦会議室へと戻った。
豊川七段は「相手が上手かったよ」と労いの言葉をかけたが、続けて出たのは「でも和史、手に勢いがないよ」という指摘。少年時代から渡辺五段を見守ってきただけに、弟子の心境は手に取るように伝わるようだ。日頃“将棋界のダジャレ王”と呼ばれ、朗らかな豊川七段だが、「米長（邦雄永世棋聖）先生の残された言葉の中で、僕が好きなのは『勢いのある手を指せ』という言葉。チームの勝利のこととか、俺の事とか関係ないから」と話すと、真剣な表情で「魂を込めて、一番必殺で行ってくれ！」とゲキを飛ばした。
さらに、続く第3局も「和史、行け！棋士人生かかってるから！」と熱い言葉で連投を指示。すると渡辺五段の瞳の奥に闘志が宿り、「はい！頑張ります！」と元気よくガッツポーズを見せ、気合充分に対局場へと向かった。
第3局は渡辺五段VS梶浦七段による“弟子対決”に。修行時代からしのぎを削ってきた間柄とあり、互いの手の内は知り尽くしている。渡辺五段の先手番で、相掛かりの出だしとなった。互いに1-1と負けられない戦い。じりじりとした序盤戦から、難解な中盤で抜け出したのは渡辺五段だった。▲3五歩からの攻めから戦線を拡大し、▲5四桂、▲5五銀で梶浦玉を包囲。時間が無い中でも「前へ、前へ」と師匠の教えを守り、101手で勝利を飾った。終局後、渡辺五段は「失敗したところもあったと思うが、中終盤は前向きに指すことが出来たのでホッとしている。（師匠に）褒められちゃうと調子に乗っちゃうので、謙虚にいきたいと思います」と、この日一番の明るい笑顔を見せた。
豊川七段の愛ある“ダメ出し”から生まれた渡辺五段の初勝利。ファンからは「豊川先生めっちゃいいなあ」「お父さんみたい」「いい師匠」「初日まで長かった」「師匠褒めてくれるよー」「ちょっと感動しちゃった」「いい雰囲気だなあ」と多くの声が寄せられていた。
◆ABEMA師弟トーナメント 日本将棋連盟会長・佐藤康光九段の着想から生まれた大会。8組の師弟が予選でA、Bの2リーグに分かれてトーナメントを実施。2勝すれば勝ち抜け、2敗すれば敗退の変則で、2連勝なら1位通過、2勝1敗が2位通過となり、本戦トーナメントに進出する。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで、チームの対戦は予選、本戦通じて全て3本先取の5本勝負で行われる。第4局までは、どちらか一方の棋士が3局目を指すことはできない。
（ABEMA／将棋チャンネルより）
