アメリカでトランプ政権時代に打ち出された、動画アプリ「TikTok」への規制の動き。政権が変わった今も懸念の声が上がっているという。アメリカにとっての“脅威“とは何なのか、専門家に話を聞いた。
【映像】TikTokなぜ規制? アメリカが恐れる中国政府の動き
ルイジアナ州とウエストバージニア州は19日、政府が管理する機器でTikTokの利用を禁止。今では全米50州のうち、19の州でアクセスを部分的にブロックする動きが進んでいる。CIA(=中央情報局)のバーンズ長官も、出演したテレビ番組で「中国への情報流出の懸念や動画内容を中国指導部の利益になるように誘導できる」と指摘した。
一体アメリカは何を恐れているのか。長年、サイバー世界を注視してきたジャーナリストの山田敏弘氏はこう分析する。
「アメリカ国民もかなりの若い人たちがTikTokを無防備に使っていて、データが中国に流れていくと、それをアメリカ人の監視に使うのではないかと。これは、ファーウェイや他のIT系の中国企業を禁止している理由と同じで、TikTokから、例えば電話帳や別のアプリの情報などを吸い上げるのではないかという研究結果が出てきている」
山田氏は、アプリを通して得たユーザー情報の提供を中国政府が提供を命じた場合、情報が吸い上げられてしまう可能性があると指摘。SNSやショッピングサイトを利用する場合、個人情報の提供はつきものだが、TikTokとの違いはどこにあるのだろうか。
「点になっている情報を紐づけていけば、壮大な電話帳が作れてしまう。例えば、あるユーザーが中国を訪れた際、中国側からすると『この人はもう丸裸同然だ』という状況が生まれてしまう。さらに、中国に対して都合が悪いことを話す人の情報や、その人と繋がっている人の情報も全てわかってくる。アメリカも似たようなことはできるだろうが、価値観の違う中国がこうしたデータを持ったとき、『何をするんだ?』を警戒すべきだとアメリカの情報機関は言い続けている」
アメリカはTikTokとの協議を重ね、国内利用者のデータを老舗のソフトウェア会社「オラクル」に移管するなどの対応をとっている。それでも規制を強めようとするアメリカに対し、TikTokは「根拠のない虚偽に基づく政策を制定するために、これほど多くの州が政治的な流れに乗っていることに失望した」と声明を発表。一貫して中国政府とのつながりを否定している。
情報の管理を巡る米中のいざこざはあるものの、ユーザーとして楽しいサービスは使っていきたい…。しかし、山田氏は「“データの分断”によってそれができない世界になっていく可能性がある」と話す。
「中国製品なのか、欧米諸国の製品なのか、どちらかを選ばなければならない時代が来るかもしれない。容赦なく情報を集めてデータベース化している中国のほうが、AIという意味でも10年後違いが出てくる。欧米が『GDPR(EU一般データ保護規則)』『データセキュリティ』『データプライバシー』などと情報収集を制限している間に、中国の技術が先に行ってしまうのではないかという話もある」
日本では8月、総務省が「特定のアプリに対してではない」としつつ、情報の無断送信などの“不正機能の検証”に乗り出すと発表している。
(『ABEMAヒルズ』より)
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