時に「AI超え」とも呼ばれるその頭脳に、何かが生じたのか。藤井聡太竜王(王位、叡王、王将、棋聖、20)が完全に“フリーズ”する瞬間が起きた。8組の師弟により“最強の師弟”を決める超早指し戦「ABEMA師弟トーナメント2022」の予選Bリーグ1回戦第2試合が12月31日に放送された。第2局、チーム杉本の藤井竜王は、チーム木村・高野智史六段(29)との弟子対決に挑んだ。現役最強の五冠王の戦いぶりに関係者、ファンも注目していたが、高野六段の積極的な指し回しの前に、よもやの敗戦。対局後には「途中でフリーズしてしまって、そこからはダメでした」と波乱の一局を振り返った。
時間をかけて考えても、瞬時の判断でも棋界最高レベル。完全無欠の藤井竜王といえども、やはり人間ではあった。持ち時間5分・1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールでも圧巻の強さを誇ってきたが、この一局では何かうまくいかなかった。先手番から大の得意とする角換わりを選び、序盤に新研究を見せるなど、惜しみなく日頃の研究の一端を見せていたが、高野六段も堂々と迎え撃ち形勢は互角。さらに積極的な選択を続けた高野六段の方に形勢が傾き始めていた。
すると中終盤の勝負どころで、藤井竜王は残り時間がわずかになっても手が動かず、あわや切れ負けの事態に。なんとか手は乱れたものの着手し切れ負けこそ逃れたが、その後も形勢を戻せず、そのまま押し切られた。
対局後、藤井竜王は切れ負けになりそうだった局面を振り返り「途中でフリーズしてしまって、そこからはダメでした。決断よくというのを、もっと意識しないとダメ」と反省。対する高野六段は「すごくうれしいです。うれしいとしか言い表せないです」と喜びを隠さなかった。
何が起こるかわからないフィッシャールールとはいえ、藤井竜王の敗戦、さらには慌てる様子まであったことに、ファンからは「聡太どうした」「先手角換わり、新手出して負けた」と驚きの声が止まらなかった。
◆ABEMA師弟トーナメント 日本将棋連盟会長・佐藤康光九段の着想から生まれた大会。8組の師弟が予選でA、Bの2リーグに分かれてトーナメントを実施。2勝すれば勝ち抜け、2敗すれば敗退の変則で、2連勝なら1位通過、2勝1敗が2位通過となり、本戦トーナメントに進出する。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで、チームの対戦は予選、本戦通じて全て3本先取の5本勝負で行われる。第4局までは、どちらか一方の棋士が3局目を指すことはできない。
(ABEMA/将棋チャンネルより)