大阪に「清風(せいふう)カット」と呼ばれる、襟足が刈り上げられた髪形がある。
「清風」とは、大阪市天王寺区にある中高一貫の私立男子校、清風学園のこと。元体操選手の池谷幸雄・直樹兄弟や、サッカーの本並健治氏ら、著名アスリートを輩出している名門校だが、髪形は学校指定のものに定められ、「これを守れない時は退学になる」としている。
そんな清風カットを人々はどう感じるのか。学校に近い鶴橋駅周辺で聞き込み調査を行ったところ、大阪市民の声は賛否それぞれだ。
「勉強のために中学・高校へ来ている。私立の学校の使命」
「古いのではないか。子どもの自主性が育たない」
「高校生ならしたくない。おじさんっぽい」
現役の清風生にも話を聞いてみた。
「好きか嫌いかでいったら、正直どっちでもない。嫌ではないが、気に入ってもない。選択して(学校へ)入ってきているから、校則が厳しいと言うのはちょっと別なのでは」(現役清風生)
清風学園近くの「ヘアーサロンオイタ」で20年以上、清風カットを切っている笈田(おいた)さんは、「校則を守らなあかんという責任がある」「伝統を守るのが宿命」だと語る。
このところ「ブラック校則」が社会問題化しているが、元中学教師の坂田聖一郎氏は、日本の学校教育を「ブラック校則があるからダメではなくて、超絶ブラックがあってもいい」制度だと指摘する。
「私立は特色が必要になる。ビジネスだから、クレームが仮にあろうが、ニーズが保護者にあるのにわざわざそこをつぶす必要はない。校則を緩くしようとなってきたら、せっかくの高校のストロングポイントを失うことになる。なかなか腰が重いのが現状ではないか」(坂田聖一郎氏)
一方で、髪形の強制により私生活も強制することになる、と指摘する専門家も。名古屋大学大学院(教育学)の内田良教授は、1990年代までは、荒れた中学校や高校にルールを定めて違反した生徒を注意する仕組みが機能していたが、「おとなしい」子どもたちの多い昨今ではそうとも限らないという。
「時代変化を考えたときに、もう少し子どもを信じて、大人の側、学校側が考え直すタイミングにきている」(内田良教授)
元キックボクシング世界王者・那須川天心選手の祖母・那須川梅子さん。東京・足立区にある「理容室 メンズヘアサロン銀座」でパンチパーマやアイパーの施術を得意とするが、校則による髪形縛りには疑問を持つ。
「それで退学させるのは、ちょっとおかしい。厳しすぎるのではないか。髪の毛の生え方や量はみんな違うので、一律というわけにはいかない。うちにもよく高校生や中学生が来るが、耳や眉にかからないようなスタイルだったらいいと思う」(那須川梅子さん)
中学時代から30年にわたりリーゼントを愛する、板金塗装業のたかぼーさんにも話を聞いた。たかぼーさんは、仕事中は髪を下ろしてキャップをかぶっているが、いまなお日常はリーゼントを保っている。
「髪形をどうこうというルールが古い。女の子なんかは『化粧してきちゃダメだ』と学校の中では言われてきたのに、いきなり社会に出たら『化粧しろ』。練習していないのだから、できるわけがない。それと一緒」(たかぼーさん)
大阪府寝屋川市出身の藤本敏史(FUJIWARA)は、中学の陸上部時代、清風カットでそろった対戦相手を見て、オーラを感じたと振り返る。「清風カットは有名だった。憧れではないが、いいなあと逆に思っていた」(藤本)。
(『ABEMA的ニュースショー』より)
■Pick Up
・「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
・ネットニュース界で話題「ABEMA NEWSチャンネル」番組制作の裏側