「両親がフルで働いていて、学童とか保育園があるとありがたいというか、ないと仕事ができないという切実な思いがある」
「小1の壁に対しては不安を感じるところがある」
目前に迫った小学校入学に子どもは胸を膨らませる一方で、親から聞こえてくる不安の声。“小1の壁”とは、子どもの小学校入学に際して、親が育児と仕事の両立が難しくなるなどの社会的問題だ。
平日に親が呼ばれることがほぼない保育所に対し、小学校では平日昼間の授業参観や保護者会が当たり前。また、保育所は欠席連絡もスマホでOKだが、小学校は親のサインを同級生から担任に渡してもらうなど不便に感じることが多いという。家庭によって問題は様々だが、4人に1人がパート勤務に転職するなど働き方を変えざるを得ない実情がある。
晴子さん(35)は現在、4人の子どもを育てながら、研究職の正社員としてフルタイムで働いている。小学3年生の長男と1年生の次男は民間の学童保育に、5歳の長女と2歳の三男は保育園に預けている。
上の2人については、「長期休暇になるとお弁当を毎日作らなきゃいけない。それでなくても忙しいのに、弁当作りが追加されるのはしんどい」という、“弁当の壁”が。学童保育でもお金を払えば給食が出るそうだが、節約のため夏休みなどは毎日お弁当を作るという。働く親にとっては小1から始まる大きな壁だ。
来年小学校に入学する長女も学童保育に入れようと考えているが、ここで出てくるのが「上の子たちと同じ所に入れるかどうか」という“待機児童の壁”。今年度の学童保育の登録児童数は過去最高の139万人超、待機児童数も約1万5000人で、同じ場所に通える保証はない。
「保育園を考える親の会」代表で3児の母の渡邊寛子氏は、「保育園は主に就労している家庭の支援を前提として組み立てられている。一方、小学校は教育機関なので、働く保護者の仕事の事情までは配慮してくれないというのが1つの大きな理由ではないか。保護者会やPTAの活動などもほぼ日中に開催されるので、仕事を休んで行かなければいけない」と、小1の壁の構造について説明。
また、「待機児童は学童が約1万5000人、保育園が2944人で、ここに大きな差がある。学童保育の数が足りず、さまざまな事業者が参入してきて保育の質が担保されていない中で、どんどん増やすのもどうなのかという議論が繰り広げられているのは事実だ」という。
リディラバ代表の安部敏樹氏は「国の予算が学童は700~800億円ぐらいしかないが、保育園は1~2兆円ぐらいある。質を上げるのも、時間を伸ばすのも、数を増やすのも、待機児童を引き受けるのも、予算を10倍にしても足りないぐらいだ」と指摘した。
子どもが小学校へ上がると「親の手がかからない」と捉えられ、職場で理解が得られない風潮もある。この手の話を渡邊氏はよく聞くといい、「小学校に入ると子どもの心はどんどん成長していき、友達とのトラブル関係だったり、精神面でのサポートに大人がエネルギーを割く必要が出てくる場面は増えてくる。しかし、自分で学校に行き、1人で帰ってきて、放課後も1人で元気に遊ぶ姿を想像される方が多い。そういう小学校生活を送ってきた背景がある方やあまり子育てに向き合っていなかった方だと、そういうイメージで捉えてしまうのではないか」との見方を示した。
小1の壁に対して、「親は子を甘やかしすぎでは?」「過保護に育ててどうするの?」という声もある。晴子さんは「やはり親の立場からすると心配なことは多い。子育てで“少年は手を離せ、目を離すな”という教訓がある。遠くから見守るのが重要な時期だというのはわかるが、今は昔に比べて近所の目が少なくなってきていると思う。不審者情報も頻繫にきて子どもも不安がっているので、そういうところは防いであげたい」と主張。
その上で、「小1の壁が社会問題になっているということは、制度や仕組みに問題が多いのではないか。今は個人の努力に全てが委ねられている印象を受けるが、政治や仕組みが令和のやり方にアップデートしていってほしい」と訴える。
渡邊氏は「いろいろ聞きすぎて不安になって、今から対策を練られている保護者の方の話をよく聞く。それももちろん大事だが、あまり考えすぎてしまうと一歩が踏み出せなくなってしまう。都度その時で、“何とかなるかな”と気楽に捉えていただき、“子どもと家族がみんな元気で笑っていれば100点”という感じでゆったりと構えて、子育てをぜひ楽しんでいただきたい」と呼びかけた。(『ABEMA Prime』より)
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