10円↑で客足激減…“値上げアレルギー”の日本 実質賃金下落も今が転換点? 「少しずつ上がっていく局面に差し掛かっている」
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 「ラーメン屋。あの美味さで730円は安すぎる。もうちょっと値上げするべき。ってか色んな業界がもう少し値上げするべき」

【映像】10円値上げで惣菜店の客足が激減

 話題になった本田圭佑氏のこのツイート。ネット上では「めちゃくちゃわかります、その気持ち」「悲鳴をあげてる今の日本で言うべき発言じゃない」など賛否の声が寄せられているが、なかなか値上げに踏み切れない事情もあるようだ。

 東京・大田区の惣菜店「鳥の匠」も、ウクライナ侵攻や円安の影響で鶏肉や油の仕入れ価格が高騰し、打撃を受けた。店長の内藤さんは「材料費が1.5~1.8倍くらいに上がっているので、単純にそれだけで利益が相当減っている。今まで100万円で済んでいた材料費が180万円という世界」と話す。

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 それでも価格を据え置いていたが、ついに限界を感じ、看板メニュー「武蔵唐揚げ」の120円→130円への変更を決断。「どこのお店も『値上げする』というのをニュースでもやっている。それに便乗したわけではないが…」。

 しかし、結果的に客足が減り、むしろ全体の売上が下がってしまうことに。「(値上げ分と)相殺か、むしろ減ったような感覚があったので、意味ないよな」と内藤さんは嘆く。そして、3カ月後に再び値下げした。

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 日本における値上げへの抵抗感について、物価研究の第一人者で東京大学大学院経済学研究科の渡辺努教授は「値上げされていると、日本人は『その商品は高いので別のところで買おうか』『元の値段で売っているところを探そう』と考える人が多い。欧米だと、値段が上がって決してうれしくはないが、しょうがないからそこで買う。物価についても、欧米の人は『上がっていくのが当然だ』と考えているが、日本の消費者は『昨日と同じ価格が付く。物価は上がらないのが当たり前だ』と考えている。ここが大きな違いだ」と指摘する。

 コストを下げるため、内藤さんは様々な工夫もしている。「うちは唐揚げ以外にも、焼き鳥や惣菜をやっている。これまで工場で串を刺した状態で入荷されていたものを、自分たちで串打ちすることで材料費の単価が10~20円下がってくる」。さらに、自身の給与を20%減らした。

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 値上げが受け入れられるためには、周囲や全体が同じように動くことが必要なのか。内藤さんは「値上げは商品の価値が上がってからするものだと思っている。僕らの商品の価値を喜んでくれる人が増えれば、タイミングを気にせずに上げてもいいと思う」「いろいろなお店・業種があって、日々買い物をする僕らのような街のお惣菜屋から値上げをするのは正直難しい。高級店などできるところから徐々に上げて経済を盛り上げていき、最終的に僕らという順番でいくと、お客さんも困ることなく物価は上がってくるのかなと思う」と答えた。

■「中長期で見れば賃金は少しずつ上がっていく局面に差し掛かっている」

 第一生命経済研究所主任エコノミストの藤代宏一氏は、販売価格判断DI(非製造業)のグラフをもとに、ここ数年の変化を指摘する。

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 「日本銀行は3カ月に1度、企業に対して『値上げをしたか?値下げをしたか?』と聞いて、値上げが優勢であれば線が上の方向に行く。しかし、中小企業は1990年代の前半から約25年間、ゼロより下で推移している。つまりずっと値上げができず、自分たちの賃金を削ってとにかく我慢する、ということをしてきた。それがここ数年、明らかに変わってきていて、食料品がとんでもないペースで値上がりし、輸入物価が上がった。もう1つ、人手不足が深刻になり、安く働いてくれる人がいよいよ見つからなくなってきた。これは企業側から見ると問題だが、日本全体で見るとむしろ良いことで、その結果を待っていろいろなところで値上げの波が起きていると私は捉えている」

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 名目賃金に物価の上昇を反映した実質賃金は、2022年11月は前年同月比で3.8%減と、8年半ぶりの下落幅となった。藤代氏は賃金も商品も今は上げやすい状況にあるとの見方を示した上で、「過度な心配は不要だ」と述べた。

 「賃金と物価は基本的に表裏一体。値下げをしている限りは賃上げの原資を削って価格を据え置くわけだから、賃金は上がるわけがない。ただ、最近は値上げをし、少しずつ賃上げの原資を確保できているので、中長期で見れば賃金は少しずつ上がっていく局面に差し掛かっていると思う。

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 もう一つ、値上げをすることで、高齢者の所得が少しずつ現役世代にシフトしてくる。今までは値上げを我慢することで、高齢者が低価格で良いものを買えたり、年金受給者が生活しやすい状況が続いてきた。その結果として賃金、物価が上がらない“安い日本”になってしまったが、値上げに向かうことで、相対的に高齢者だけが楽という状況が是正されつつあると思う」

(『ABEMA Prime』より)

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