「2032年ごろまでに理系を専攻する学生の割合を5割に」。岸田総理が掲げた「理系5割」という目標達成に向け、大きな動きがあった。
文部科学省はデジタルや脱炭素など、成長分野の人材を育成する理工農系の学部を増やすため、私立大学と公立大学を対象に支援する方針を固めた。今後10年間で、約250学部の新設や文系学部の理系への転換を想定している。
財源については、2022年12月の法改正によって設置が可能となった基金、約3000億円を活用。学部の新設や転換に向けた設備費用など、7年程度の支援を想定し、1大学あたり数億円から20億円程度を支援する方向で、早ければ今年度中にも大学の募集を開始するという。
ネット上では「強い日本を取り戻すには理系への投資は必須」「教えられる人材は確保できるのか」「1番焦っているのは学生じゃなくて文系教員たちだろうね」とさまざまな声があがった。
この決定を、文系の研究者はどう捉えているのか。東京工業大学准教授で、社会学者の西田亮介氏は「世の中や産業界の関心が、理工系中心に向いているのは事実だ。そこから逆算して考えられるのは『今よりも多くの理系人材を出すために理系学部を増やしたい』。この意図は理解できる」と述べている。
支援に対し、期待が高まる一方「教員が不足するのではないか」「文系教員はどうなるのか」といった懸念の声も少なからず存在する。
こうした声について、西田准教授は「学際系学部や融合系学部が許容されるのであれば、それほど懸念はないのではないか。例えば“街づくり”や“観光”に関する学部など、理系でも文系でもないような新しい学部がこれまで同様に許容されるのであれば、文系教員も関与できる余地がある」と指摘した。
文部科学省は高い専門性をもった教員が不足していることから、教員が複数の大学に在籍出来るよう大学設置基準を改正している。こうした動きもあることから、懸念されている“教員不足”には至らないのではないかと西田准教授は話した。
その上で、西田准教授は3つの懸念点を挙げる。7年程度という「支援期間の短さ」、1つの大学につき、数億円から20億円程度という「支援規模の小ささ」、そして高度な人材を育成するための「教育・研究の底上げ」だ。
「理工系人材の不足が言われているが、日本の生産性の向上やイノベーションを考えるのであれば、高度な開発力を持った人材を育てていくことが重要。これは世界的に見れば、学部卒だけではなく、博士の学位を持っている人などが主役だ。ここにきちんと手当てをしない限りは、世界的に新製品や新サービスを作って、イノベーションを起こして雇用を生み出す流れには繋がらない。今回のような支援も重要だと思うが、より幅広い教育・研究の底上げが必要だ」
(『ABEMAヒルズ』より)
■Pick Up
・「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
・ネットニュース界で話題「ABEMA NEWSチャンネル」番組制作の裏側