8組の師弟により“最強の師弟”を決める超早指し戦「ABEMA師弟トーナメント2022」の予選Bリーグ2位決定1回戦が1月14日に放送された。チーム中田とチーム杉本の一戦は、チーム杉本・藤井聡太竜王(王位、叡王、王将、棋聖、20)が個人3連勝。圧巻の強さでチームを勝利に導いた。超早指しでも強さを見せてきた最強棋士だが、局を重ねるごとにいよいよエンジン全開。予選2位での突破に望みをつないだ。
これが最強棋士の真骨頂とも言える3局だった。第1局、中田功八段(55)との一局は先手番から居飛車穴熊を採用し、中田八段の三間飛車を迎え撃った。持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算という超早指しのフィッシャールールにおいて、対振り飛車の作戦として居飛車穴熊は多用されているが、藤井竜王が使いこなすとなれば、その穴熊は強固のひとこと。序盤こそ中田八段がうまく指し回している場面もあったが、中盤、終盤と穴熊の遠さを活かして挽回すると、形勢を損ねた中田八段は早々に75手で投了した。
連投した第2局は、名人経験者・佐藤天彦九段(34)との熱戦になった。棋王のタイトル挑戦権もかけて戦った2人だが、この一局は先手の佐藤九段が矢倉、後手の藤井竜王も急戦矢倉の出だしに。薄い藤井玉には怖さもあった中、バランスを保つと、佐藤九段も果敢に斬り込む好勝負に。形勢互角で終盤に飛び込んだが、最後は藤井竜王の粘り強さがわずかに勝り120手の熱戦を制した。
最後の出番はフルセットにもつれ込んだ第5局。負ければ予選敗退という状況の中、佐藤九段との再戦になったが、集中力が研ぎ澄まされた藤井竜王は中盤に入ったところで放った△6八歩から一気呵成に攻め立て、佐藤陣を崩壊。そのまま押し切り70手で圧勝し、チームの勝利も呼び込んだ。
中田八段から1勝、佐藤九段から2勝と、まさに1人で勝ち切ってしまった藤井竜王は「なんとか次の勝負に進むことができて、うれしく持っています」とにっこり。今大会、まだ勝利がない師匠・杉本昌隆八段(54)についても「師匠の活躍にも期待しています」と微笑んだ。
ABEMAトーナメントでは、個人戦だった第1回、第2回、団体戦となった第3回、第4回と、計4回も優勝している藤井竜王。師弟コンビでも初出場で初優勝を目指すべく、これ以上なく濃い色の反撃の狼煙があがった。
◆ABEMA師弟トーナメント 日本将棋連盟会長・佐藤康光九段の着想から生まれた大会。8組の師弟が予選でA、Bの2リーグに分かれてトーナメントを実施。2勝すれば勝ち抜け、2敗すれば敗退の変則で、2連勝なら1位通過、2勝1敗が2位通過となり、本戦トーナメントに進出する。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで、チームの対戦は予選、本戦通じて全て3本先取の5本勝負で行われる。第4局までは、どちらか一方の棋士が3局目を指すことはできない。
(ABEMA/将棋チャンネルより)