“メタバース就労訓練”で苦手な対面コミュニケーションも克服?ADHDの訓練生「すごくストレスが軽減された」
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 インターネット上の仮想空間「メタバース」を活用して、就労訓練を行う取り組みが進められている。人と接することが苦手な人でも仕事に参加しやすくなるという大きなメリットがあるようだ。

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「まずはメタバースで人との関わりを感じてもらう。その後、徐々に実際の生身の人間とも話ができるようになるっていうように、つながっていけるんじゃないかと考えている」

 そう話すのは、メタバースを活用した就労支援を行う「ふくろうグループ」の沢田知也代表。滋賀県を拠点に広告制作などパソコンを使った作業に携わっている。

「(当社就労支援の)メタバースを利用されている方の大半が精神障害の方であったり、発達障害の方だったりする。もともと引きこもりの状態で、行政の支援が必要な方たちが対象になっている。その方たちにとっての訓練の一つとして、まずは人がいる場所に行ってもらう。人と接することに抵抗をなくしてもらうことが必要になってくる。実際に人と話すっていうことはかなり抵抗が強く、さらに言うと会議に参加することもだいぶ難しくなってくる」

 人と接することに慣れるため、オンラインによるやり取りを導入する中、課題が見えてきたと話す沢田代表。文字だけのツールでは相手の感情をうまく受け取れない、顔が見えるビデオ通話では刺激が強すぎるといった難しさがあったという。その中間となったのが、アバターを通してコミュニケーションが取れるメタバースだった。

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 ふくろうグループの訓練生である河合勇輝さんは、ADHDで1度仕事を辞めた経験があり、既存のツールでは情報が突然やってくるという感覚に混乱することが多かったという。

「メタバースの空間は人間のコミュニケーションの空間とかなり近いというか、コミュニケーションをしていなくても、同じ空間に人間が存在することの方が多いと思う。別に話さないけど隣や前に座ってるとか。目では見えているけど、会話しないのが割と人間の世界では当たり前なんだけど、コミュニケーションがデジタルになった途端に突然、ばっときて『うわ』っとなる。メタバースだと話はしないけど、同じ空間にいるっていうのが最初にできるから、向こうから人が迫ってきても、『この人は自分に用があるんだ』と心の準備ができる点では、すごくストレスが軽減されたというか、楽になった」(ふくろうグループの訓練生・河合勇輝さん)

 人とのやり取りに慣れるための一歩として企画会議などでメタバースを活用しているふくろうグループ。実際の作業自体は、各自好きな場所で行うことができる。

「家から出られなくなってしまった方たちの一つの難題としては、決まった時間に起きられない、それによって出社・出勤することができないという負の循環にはまってしまう方が多い。メタバースの場合は、なんとか起きさえ出来たら出社するっていう工程を全部省けるので、決まった時間にメタバースの中に入ることができるだけで自信につながる」(以下、沢田代表)

 ふくろうグループが利用しているメタバース空間は、実際の事業所と同じ間取りで現場に出てきたときに抵抗なく移行できるというこだわりもある。メタバースで完結する仕事、実際の職場での仕事、希望する選択肢に将来的に進められるような環境づくりが整えられている。

「そもそもメタバースの空間を作るっていうこと自体が一つの訓練になっている。今後の理想的な部分の仮説での話になるが、実際にメタバースのシステムがさらに普及していって、ほとんどの人が使っている状態になったときには、メタバースの中で新しい仕事というのも作っていけるのかなと」

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 ふくろうグループの取り組みを受けて、ニュース番組『ABEMAヒルズ』に出演したコメンテーターのBuzzFeed Japan編集長・神庭亮介氏は、就労訓練へのメタバースの活用は「対面だとハードルが高い、という人にはすごくいい」と述べ、こう指摘した。

「ZOOMなどの手段もあるが、なかなか起きられない人が、寝起きの髪の毛ボサボサの状態でZOOMを繋いで仕事するのもなかなかしんどい。中間的な選択肢があるのはすごくいいと思う。ずっと繋ぎっぱなしとなると、なんとなく監視されてる感、見られてる感も出てしまうが、そこに一つアバター、メタバースを挟むことによって緩和される部分もある。

 アバターの見た目は自由に選べるので、仮の姿に変装することで心が解放されて、普段だと言いづらいことがキャラとしてなら言える、といったこともあるのでは。障害のある方に限らず、一般の会社などでも、リモートと対面の間になるこうした選択肢があるといい」

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 一方で、利用者からは「初めてで利用の仕方がわからず戸惑ってしまう」「生産性を上げて円滑な作業をするために、現実世界のようにすぐにレスポンスできる状態にしておくことが重要」といった課題も上がっている。これを受けて、神庭氏は次のように話す。

「 “常にレスポンスできるように”となると、誰かが一人べったり張り付かないといけないし、メタバースとは別に人的なリソースの問題が出てくる。過渡期の技術ということもあって、最新鋭のメタバース空間であってもキャラクターがカクカクしてたり、まだまだ『現実そのままを再現する』という状態までには至っていない。ヘッドマウントディスプレイなどのデバイスも高価で重く、長時間の装用はなかなか厳しい。ゆくゆくは、メタバースが今のスマホのように『当たり前』の存在になっていくはずで、今後の技術開発に期待したいところだ」

(『ABEMAヒルズ』より)

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