三毛猫がなぜ3色の毛を持っているのか。興味深い研究プロジェクトが、猫好きな佐々木裕之・九州大学名誉教授によって立ち上げられた。
「三毛猫の白い部分はお腹・手・脚・尻尾の先、顔の下半分に出てくる。白い部分を決める遺伝子は、オスでもメスでも同様に働くとわかっている。もう一方の茶色と黒を決める遺伝子、これが『X染色体』という性染色体上にある」
哺乳類での性染色体の組み合わせは、オスが「XY」、メスが「XX」。佐々木氏によると、猫の毛色を決める遺伝子は、X染色体にあり、このX染色体が2本あるメスだけが、黒と茶色が同時に現れる可能性があるという。
「それが判明したのは60年ぐらい前だ。1個の受精卵から細胞が分裂して我々の体ができるが、途中のある時点で2本の染色体のうちの1本が不活性化されて働かなくなる。それが細胞ごとにランダムに起こると考えれば三毛猫のパターンを説明できるのではないかという説を、イギリスの遺伝学者のメアリー・ライオン氏が出した」
それ以降、X染色体のどの遺伝子が毛色を決めるのかという謎を解明した研究者はいないという。
ずっと気にはなっていたものの「大学の経費や研究費は若手研究者に使ってもらいたい」。そんな思いがあった佐々木氏は、大学を退職後にクラウドファンディングを立ち上げた。研究者や獣医など、大の猫好きによる熱量の高いプロジェクトは、すでに700万円を超える寄付が集まっている。
現在、十数匹の猫の遺伝子情報の解析がほぼ完了しているという。今後、毛色を決める遺伝子が判明すれば、猫の病気の解明などに役立つのだろうか。
「そういう情報は獣医や世界中の研究者が使えるよう、公共のデータベースに登録する。そうすると、ヒトについての研究が進んでいるように、どういう遺伝子の変化があるとどういう病気にかかりやすいなどがわかってくる。最近では『分子標的薬』という、遺伝子情報をもとにしたがん治療薬や様々な病気の治療薬を作っている。将来的に猫でもそれが可能になるのではないか。ただ、猫のことが深く理解できるのは、それだけでも楽しい」
(『ABEMAヒルズ』より)
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